ストレッチャーに酔ってしまう話

受け皿

皆さん、救急車乗ったことありますか?
私はあります、二回ほど。
おととしの夏、熱中症で。さらに、昨年暮れに職場でケガをして。

熱中症のときのことですが、周囲の方々の対応がよかったのでしょう、救急隊が到着したときには、意識が戻っていました。救急車に載せられ、いざ出発直前に、隊員のかたが
「気持ち悪くなったら、コレつかってください」と言って、受け皿(ガーグルベースという名前だそうです)を渡されました。
『あなたは熱中症なので』
という意味で準備してくれたのでしょう、でも私はなぜか、
『車に酔ったら、使ってください』
という意味だと、解釈してしまいました。


実際に車酔いしました。10分も乗っていませんでしたが、けっこう気持ち悪くなったのでした、受け皿のお世話になることはありませんでしたけど。

救急車って酔いやすい乗り物ですよ、と言いたいわけではありません。実際に二回目のときはまったく酔いませんでした。(もっとも、このときは、大怪我をしてそっちの痛みのほうが勝っていたから、比較にはならないかもしれない)


子どものころはしょっちゅう車酔いしていましたから、酔いやすい体質なのかもしれません。ですが、おとなになってからは、ほぼおさまり、極端な寝不足でもないかぎりは酔うことはなかったのです。
だから、どうしても腑に落ちなかった。揺れるといっても、舗装された道路でしたし、緊急とはいえ、ありえないスピードとか、常軌を逸したハンドルさばきだったわけでもありません。
やっぱり熱中症だったからかな、などと思いましたが、その時は、どうも納得いきませんでした。

ストレッチャー

「汗かいてますね、緊張してますか?」
私はストレッチャーに寝かされていて、病室から手術室まで運ばれてきました。手術を担当してくださる医師が私の顔を覗き込んでいうのです。
「いえ、私ストレッチャーがちょっと苦手で…」
医師はガーゼのような、布のようなもので、汗を、拭いてくれました。

手術室に入ると、透明の酸素吸入用のマスクをつけてもらいました。シュー、シューという空気の音がします。たぶん酸素を送ってくれているのだと思います。
「はい、では深呼吸をしてください……。はい、続けて」
指示通りに深呼吸していると、カチッと意識がなくなりました。
麻酔が効いたみたいです…。

麻酔が効いているあいだに話の続きをしましょう。
救急車に酔ってしまったのは、なぜだろう、腑に落ちない、という話でしたね。
一回目の救急車のときは、けっきょく、その理由はわかりませんでした。

それからかなりの日にちが経ったある日、勤務先で大ケガをしてしまい、救急車で病院に搬送されました。これで救急車は二回目です。
このときは酔いませんでした。痛みがひどくて、それどころではなかったのです。
首の骨を骨折しており、即入院。約一週間後に手術をすることになりました。
処置室から病室に移動する際、ストレッチャーを使いました。
ストレッチャー、みなさんご存知ですか?
自由に動かせるベッドのようなものです。
ヒトを寝かせて移動させることができる、ワゴンと表現したほうが近いです。

私、ストレッチャー、ダメだったのです。

体質?

続けます。
処置をしてもらって、用意された病室に向かうことになり、そこでストレッチャーに乗せられました。そのまま、エレベーターに乗って、目的の階まで行き、廊下を通って、病室に着きました。その間、五分弱。なんとそれだけで車酔いと同じ状態になってしまったのです。

その後、必要があって病室から移動するときは、必ずストレッチャーを使いました。そのたびに気持ち悪くなってしまい、看護師さんが気を遣って、必ずガーグルベースを用意してくれるようになったのです。
寝ている姿勢で、前後左右に移動するのが、わたしの場合、NGなようでして、かなり苦労しました。
そして気がつきました。
私は救急車に酔ったのではなく、ストレッチャーに酔ったのです。ストレッチャーに寝かされて、その状態で車が動くわけですから、ストレッチャーで移動しているのと、同じだったというわけです。

これがわかった時は、意外に思いましたが、それ以上に悩みが解決したことが嬉しかったです。
それにしてもストレッチャーが苦手って、体質なんでしょうか? 友人たちにこの話をしても、「今まで聞いたことがない」という反応しか返ってきません。
私は他にも、
「おにぎりがだべられない」
「大きなものが怖くて、近づけない」
という特長を持っています。
機会があったらこれらに着いても、書いてみたいと思います。

それでは、今回はこれにて。







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