再生
今日の授業は似顔絵を書くことだ。課題は「お父さん」
先生は大声で言う。お父さんのいない人はいませんね?お父さんがいない人は、先生の顔を書いてみましょう。クラスでお父さんがいないのは ぼくだけだ。ぼくは、こういうデリカシーのない大人の発言や態度を嫌というほど見てきた。消えつつある記憶だから曖昧だが、多分似顔絵は白紙で提出した。先生は何も言わなかった。
大人というのは、どんな子供でも守る味方ではないし必ず助けてくれる存在でもない。心許ないであろう子供を目の前にしながら平気で悪態をつき、見てみぬふりをする。可愛がられる子と、そうでない子の扱い方も明らかに違った。
先生は、ぼくの目を見ないので ぼくは先生の顔を見る。大丈夫だよな?手間のかかる子の面倒をみれるほど暇じゃないんだよ。なんとかがんばれよ。と、顔に書いてある。ようにぼくは感じた。
大人がずるいと言われる理由も、自分が歳をとればわかる。自分の都合が優先だし、身内びいきがあからさまだからだ。
人との出会いが自分の世界を、すべてを変えるという切ない事実にも、今更ながら気付いた。
小さな子供の世界に数は関係ない。安らぎと溢れる愛。自信を与えてくれる存在が、たった一人いれば十分だとぼくは思う。
ぼくはもう小さな子供ではないけれど、出会いだけは諦めたくない。
世界を逆転させたい。変えてみたい。
やっとそんな風に思えるようになれたんだ。
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