手紙は苦手
ものぐさであるこのつむは、こうやってデジタルであれば意気揚々と文字を並べるものの、アナログな手紙が大嫌いです。
大嫌いとかすごい言葉ですよね。
つむは普段は使いません。どうかと思う。
それはもう、結構な時のみしか使いません。
アナログで手紙を書くということは相当の手間ですよね。
間違ったらこれ、どうするんでしょうか。
消します。消しゴムで。
ボールペンで書いたら、どうするんでしょうか。
消します。二重線で。
二重線くらいで書いたことが消えるとでも?
チラ見せどころかモロ見えです。
これが嫌なのでつむは手紙を書きません。
そもそも筆無精のこのつむは、
筆と脳が一体化しているかのような鮮やかな筆マメさんたちとは違い、
文字もめちゃくちゃに間違います。
書いている途中で『区』がどっち向きでパカッと開いているのか、
覚えていたはずなのに突然見失ってしまい、
あらぬゲートが開いてしまって『メ』が歩みを進めそうになることもしばしば。
メ!戻ってきなさいメ!そっちじゃないよ!
『メ』は進んでもいいよ、という合図だと思っただろうからポカンとした表情でいることでしょう。
さて、手紙が大分苦手になったのは幼き頃の同級生らとのやり取りでした。
もう相当昔の話ですがちょっと記憶に染み渡っていますね。
遠くへ引っ越したよく遊んでいた子からの手紙。
まぁちょっと性格に難のある子で常に私との間には暴動が起こっていましたし、
ここには書けないほどなんかなってことが多かったのでそれは伏せるのですが、
そんな子から手紙が来ました。
幼いつむは素直に「えぇ…なんで」と思いました。
開いてみると、ずっと自慢とマウントみたいなものが書かれています。
一生懸命どんな気持ちで綴ったのでしょうか。
そこに親愛の情は示されてはいませんでした。
めっちゃ喧嘩してたしな。
関係性とはギブアンドテイク。
ギブアンドギブという関係もありますが、テイクアンドテイクはありません。
やたらとギブしてないのにテイクしたがる奴だったんだよなぁ。
しかし流石にこれは意味があるのか。
遠く離れた人間にマウントって、どこの山を登ってるんだろう。
熱意が怖い。その、よくわからない感情の熱意が怖い。
つむは返事を返した方がいいのかなぁと思いつつ、
ペンケースが開きたくないようと言うのでペンケースに従いほっぽり投げました。
また別の時です。
それまで関わりが薄かったけれども少し話すようになった子がいました。
当初つむへの対応は好ましいものだったので交友を試みていました。
すると、ある日手紙を手渡されました。
「◯◯の嫌な所を書いたから読んでほしい」
その◯◯は、それこそ関わりが薄く、私に害もありません。
多分私たちは互いに顔もそんなに思い出せない紙のように薄い関係…
しかも君ら結構仲良いじゃん?
これ本当に見ていいものなのか?
込み入ってるんじゃないのか?
そして好きな所ならまだしも、そんな一覧はできれば見たくはない…
私関係ない…
断れず受け取り開けてみると、
本当に小さいことを取り上げたどうでもいい悪口が沢山書かれていました。衝撃です。
そしてポエムも添えられていたのですが、
そちらがとてもメルヘンで、先ほどの衝撃もあり情報量過多で頭に入ってこない。
イカのワタとイチゴミルクを一緒に食べるとこんな味がするのだろうか。
混ぜるな危険!
そして支配欲を感じる。
これだけ書けばつむもそう思うだろうという操作性を感じる。
つむは恐れ慄き、イカワタとイチゴミルクを混ぜた責任を不当に取らされるのではないかと怯えました。
大体、こういうのってなぜか気がつくと「つむがやった」って言われるんですよ。
つむはファイナルファンタジーの攻略に忙しいってのにわざわざそんなことしません。
親友に直様「イカワタイチゴミルクをどうしたらよいだろう」と相談した次第です。
こういった経緯で手紙って大分苦手なんですね。
平たく言うといい思いしなかったんですよ。
どちらかと言うと、苦生臭い思いをしました。
しかしきっと素敵なプレゼントのような手紙もあるのでしょう。
祖母らから貰った手紙は素敵なものでした。
祖母らは相当な達筆です。
龍のように流れる墨は筆の隙間の鱗を纏って優雅に紙面を泳ぎ、
ナチュラルに暗号化されていたために子供のつむには残念ながら読めませんでした。
読めていたらきっと手紙が好きになっていたかもしれません。
かくして、つむは手紙が苦手となりました。
この記憶は、苦生臭い…
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