「オルフェウスの窓」2巻 池田理代子

しばらくは2021年〜2022年にかけて少女まんが館を訪問した際に読んだ漫画の感想を書いていきます。
2022年4月に少女まんが館へ行ったときに読んだ漫画の感想!


🌷「オルフェウスの窓」2巻 池田理代子

書誌情報:控えてないのですが文庫版ではなくコミックスで読んだと思います(集英社、マーガレットコミックス)


なんと、母をかばうためとはいえ、ユリウスが人を殺めてしまいます…!
どうなっちゃうのーー(´;ω;`)

殺したと思ったら死んでなかった!というオチだったら嬉しいのですが、自宅の敷地内に埋めてしまっていました。あかーん

翌朝使用人たちのざわめきでマリアたちもヤーン先生の失踪に気づき…
アネロッテがいちいち勘のいいやつで、なにか疑ってきそうで心配です。。

ヤーン先生を刺してしまったあと、ユリウスのお母さんは動揺しつつも覚悟を決めたように粛々と遺体の処理を始めます。

もういちど
もういちどだけ…
運命にむかって
抵抗してみましょう

そして
それでもやはり
だめだったら
そのときは
なにもかもすべて
かあさんがこの身に
かぶってあげます
「オルフェウスの窓」電子版(フェアベルコミックス)2巻 26ページ

目をしっかりひらいたまま涙を流すこの絵を見ると これぞ池田理代子だ…! という感じがします。

以前ヤマザキマリ氏が別冊NHK100分de名著「時をつむぐ旅人 萩尾望都」(2021、NHK出版)で「萩尾先生は、苦悩して泣いている人の顔を描くのがとても上手い。表情は大げさではないのに、頬をツーッと一筋の涙が伝う感じとか、それは心の中でいっぱい泣いてきた人だけが描ける顔だと思います」(p61)と書いていましたが、作家が丹念に美しく描ききった泣き顔にはその作家のメンタリティが映し出されるのかもしれません。

Eテレ「漫勉」をみてて思うのは完成した絵の全容を我々は一瞬で目にすることができるけども、作家は下書きからペン入れまで長い時間をかけてその表情と向き合って描くのですよね(途中で変化したりもするし…)。写真のように一コマ一コマが一瞬を切り取っているのではなく、一コマ一コマにその作家の内面から絵が滲み出てきたときの時間がこめられているのだと思います。

この場面をみたとき、これだよこれ…!と反射的に思いましたが、一方で1巻の顔をゆがめて泣くユリウスが印象深かったのは意外性を感じたためかもしれません。

ちなみに萩尾望都作品で自分がいちばん好きな涙は「ゴールデンライラック」のヴィーがいとしのマンデリンを歌ったあとに流す涙です。「ええ ほんとに踊るなんてバカなまねしたわね」のコマ(p74、小学館文庫「ゴールデンライラック」)です。
よくみたらこちらも目を見開いて涙をこぼしている……上で挙げたユリウスのお母さんの涙も、このヴィーの涙も、顔つきそのものは涙がなくても成立する、キッと見据えた凛々しい表情なのですが、そこに涙が描かれることによって人物たちの心の中がふたつに引き裂かれているようすが伝わってきてぐっとくるのですよね。。
自分はこういう女性が好きなのかもしれないです。


女ま館で読んでたときは2巻になってようやくユリウスはそんなにクラウスが好きなのか…と気づきました。
しかし実はクラウスはひそかにロシア革命に関係しており、、悲劇の予感……

あとこの巻からイザークの妹がよく出てきて、すごくかわいい。

読み返して気づいたんですけど、もしかしてアネロッテの伏線ある?
マリアとユリウスはじっくりみるとたしかに似てるな〜
最近のアニメ文化によってみんな似たような顔をしていることにいつの間にか慣れてしまっていたけど、やっぱりレジェンドの描き分けの技術を目の当たりにするとさすがと感じます…さまざまな『顔つき』を描く…『なんとなく似てる』を描く…多様なタイプの中高年キャラの表情を描く…などなど。
(鬼滅の刃の登場人物の目の描き方が全員違う!という解説ツイートが以前ありましたが、そういうことじゃない…と思ってしまう)

わたしもアネロッテを叱るマリアが好きになりました。。( ´∀`)ネー


この巻のアルラウネは馬上からクラウスを鞭で打つという、漫画表現のなかでもごく限られたキャラクターにしかやってのけることのできない王族的な行為をなさっていました。。
まず恒常的に馬に乗るキャラじゃないとね…この光景は「りぼん」では読んだことないです…!
おれの推しアルラウネは3巻のダウンスタイルアルラウネ(乗馬)です〜( ´∀`)

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