「妖子」池田理代子

🌷「妖子」池田理代子

書誌情報:池田理代子「愛蔵版 池田理代子中篇集Ⅰ」(1989、中央公論社)
収録作品:「おにいさまへ…」「妖子」


「おにいさまへ…」読む時間なかった😭
「妖子」を自分史上最速で読んだ。
ピンポイント過ぎる感想を書きますが、ネタバレもします。


🌷ネタバレあります🌷


「妖子」

ちょっと長めの話が6つで全六章。1979年~1983年の漫画。

「妖子」は「あやこ」と読みます。
ちなみに、帰り際に女ま館のオーナーさんにその日読んだ漫画をお伝えした時「池田理代子の『あやこ』…(´・ω・`)」と言ったらオーナーさんがメモ帳にさらさらと「妖子」と書かれたので、やっぱりこの漫画は有名なんだ!と思いました。

「妖子」超おもしろかった~。

妖子は赤ちゃんの時にお金持ちの家の赤ちゃんとすり替えられたんですけど、第一章でいきなり本物のほうの娘が殺される。。(妖子の両親は妖子を殺そうとするが、それに気づいた妖子が本物の娘と入れ替わり生き延びる)

私は、本物のほうの娘はきっと妖子と対になる存在でこの後も度々登場するであろう…と勝手に予想していたので、本物の娘があっさり死んでしまい、この後の展開 is…?という感じでした。


第二章だったと思うんですけど、ある資産家に過去の怨恨をもっていて、同級生であるその家のお嬢様を教室に詰めて、「こいつ、ここで殺さなきゃ、なにもかも済まない……!!」と鬼気迫る感じで身の上話をした女子生徒のシーンが良かったです。(伝わるでしょうか)


ちなみにwikiだと妖子が女死刑囚と悪魔のあいの子であるのが最初からさくっと書かれてるが、読んでると悪魔の子であることが本人にも読者にも判るのはけっこう後だった気がする。
冒頭、妖子の出生前夜みたいな、母である女死刑囚のシーンも描かれてるんですが最初は事情がよく分からないまま進んだような気がします。(悪魔の子だと判ったところで、それもよくわからないんですが)


金持ち(妖子の育ての親たち)と医者(妖子の育ての親に妖子は偽物の娘だとタレコミをした人物)が結託してるんだし、しかも娘殺されてるんだし(殺したの両親だけど)、妖子も世間に知られずに葬られてもおかしくないのではと思うのですが、第二章以降も妖子と両親はなぜか同居を続けている。


途中まで、楳図かずおの「おろち」みたいな話だなーとも思ったんですが、「おろち」はおろちが自分から赤の他人の抱える問題に首を突っ込んでるけど、「妖子」の方はその生い立ちを理由に何度も危機的状況に立たされて、妖子の機転とトリックによっていつも窮地を脱する…という感じ。話は暗いですが、それがけっこう爽快です。

第三章か四章の立てこもり事件は、なぜ立てこもり事件が発生したかあまり理解しないまま読んだけど、中身はわりと人間不信についての話でした。

第五章「万華鏡」のトリック、あっコロンボだ!👀って思いました。
この時の妖子はかなりピンチに陥るのですが、タレコミをした悪い医者の思惑がうまい具合に噛み合って助かります。血液検査のところで「動物のお医者さん」(犬の血だ!ってやつ)を思い出しました。
タレコミ医者は一応妖子の敵なんですが、立てこもり事件の時といいこの「万華鏡」の時といい、医者は妖子に下手に危害を加えないキャラクターなので利害が一致していれば妖子の利になる行動もします。そこが悪役としておもしろかったです。

第六章「紅蜘蛛」は横溝正史みたいな集落もの?に突然なるんですが、わざわざ死体の御者を座らせて馬車を燃やす悪趣味な妖子……。読んでる間気づかなかったけど、もしかしたら馬が可哀そうな目に遭ってたかもしれません。

wikiみて思い出したけど、泥眼夫人の話もおもしろかった。これが四章かな。


中央公論新社の池田理代子本は今はベルばらだけなんですね。
wikiで気づいたけど「妖子」は原作:池田悦子でした。表記あったかもしれないけど見落としてしまっていました。
「妖子」面白かったけど、話考えるの大変そう…。ページ数も要るし。
妖子のガッツと覚悟と回復の早い精神力と切り抜ける度胸と最後までやり通す根性と残酷な作業も可能な非情さが私は好きなので、悪魔の子でいいから長生きしていろんなものと闘ってほしいです。

私は池田理代子といえばロザリーみたいな健気キャラが好きだし、池田理代子の漫画自体もかなり心が燃えて🔥いつも好きなのですが、「妖子」は池田理代子に無い暗さがいろいろ込められててこういうのもいいなーと思ったのと、資産家とか怨恨とか集落ものとかこの時代の和製サスペンス要素がけっこう入ってて懐かしい感じ(リアルでは知らないが)もしたし、少女漫画なのでこれらの和製サスペンス要素をすべて少女でやってのけましょうという作りもパワフルでよかったです。

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