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シュリーマン著「古代への情熱」日高新報掲載:2024年9月13日付けブックレビュー

 ドイツの寒村の牧師の家に生まれたシュリーマンは、伝説や言い伝えに興味を抱く子どもであった。教会の庭には悪い牧師が埋められているという噂があった。夜中にその牧師の手が地中より伸びてくるという伝説にもそれを真剣に信じる子どもであった。父の牧師が不祥事を起こして村を追い出されると学業ままならず、ヨーロッパ各地で商人の小僧として働き出した。しかし、シュリーマンには独特の才があった。それは語学の才である。各国の言語を独学で習得したのである。またその習得方法も独特で、文法書を一冊読み切ると、その言語で書かれた本を音読し、そしてその本を丸暗記するという方法であった。これを約六週間続けると、その言語をマスターしたというのである。そしてその言語の中に、古代ギリシャ語も含まれていたのである。そして丸暗記した本の一つがホメーロスの「オデュッセイア」であった。いわゆるトロイア戦争とトロイアの遺跡の伝説が書かれた本である。
 商人として成功したシューリーマンは得意の言語を駆使してヨーロッパ各地で活躍した。丁度その頃クリミヤ戦争やアメリカ南北戦争が始まった。彼はこの戦争で莫大な富を築くことになる。そしてその財のすべてを賭けて、伝説の古代都市トロイアの発掘に向かったのであた。

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