罪 【夏の架空読書感想文コンクール】


こちらの企画に応募、採用していただいた読書感想文の全文です。


2年W組 生蛾 脇子

この本は過去に強盗殺人という大罪を犯した主人公の葛藤の物語。
かすかな痕跡も残さない完全犯罪に成功、犯人である主人公は捕まらないままに警察の捜査は打ち切られ、主人公は普通の会社で普通に働いていた。

罪を犯した日から数十年が経過した4月。
主人公の働く会社に一人の男が入社したのは家族の生き残りだったのだ。

主人公の葛藤が日記形式で綴られるこの本に私はひどく共感した。

主人公は社会人としてのいろはを生き残りである男に教え、次第に慕われていく。
自分が家族の仇であることを知らない、曇りのないその眼差しを受ける日々に主人公は耐えられなくなっていく。

私も同じだ。

授業では積極的に手を挙げ、掃除も真面目に隅々までキレイにする

「さすが優等生だ!」

先生はいつもそう言う。

私が罪を犯していることも知らずに。

そして私もこの本の主人公と同じように罪の意識に苛まれており、ついにそれに耐えられなくなった。
この場で主人公と同じように罪を告白しようと思う。


学校のプールで大量にフルーチェを作って町中の子供たちを食中毒で苦しめたのは私です。

屋上の貯水槽にブルーレットおくだけを大量に投げ込んだのも、運動会で話の長い校長先生を細かすぎて伝わらないモノマネ方式で退場させたのも、学校で飼っているウサギの名前を『テラ・ダイナマイト・エンジェル』にするために不正投票を行ったのも、全て私の仕業です。


主人公がなぜ罪を告白したのか、この本には語られていない。

でも私はこう思う。

主人公は気持ちよくなりたかっただけなのだ、と。

相手の気持ちなんて考えていない。
ただ自分が罪を告白することで少しでも救われたような気分になりたいだけなのだ。

それを証明するようにこの本の主人公はお縄にかかって罪を償おうとはしていない。

そう、罪を償わないままに転校した私のように。

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