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無意識からの言葉~ショートショート~【音声と文章】

山田ゆり
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普段、そんなことを言わないルミが愚痴を言い出した。
よほどその件は頭に来ていることらしい。
彼女は珍しく雄弁だった。

いつもはにこやかに相手の話を聞くルミなのに、今日の彼女の話はなかなか止まらなかった。

ルミは職場で理不尽な扱い方をされたことを話す。
うんうん、そういう事ってあるある、とめぐみは同調する。

一通り話し終えたルミはメロンソーダのストローをズズズッーっとすする。
今、自分はどんな気持ちでいるのかを語ったルミの胸の熱さに、冷えたメロンソーダが心地よかった。

めぐみもつい、ルミの話に同調して、愚痴を言い出した。
こんなこと、言っても時間の無駄だともう一人のめぐみが右後ろで肩を叩いていたが、めぐみはそれを無視して後ろ向きな話を続けた。

やがて、ルミは3か月後に今の会社を辞めることに決めた。
「お互い、頑張ろうね」
そう言って夕暮れの中にルミは消えていった。


「あぁ、もうこんな時間。」
めぐみは小走りで帰宅の途についた。

お母さんが作ってくれた筑前煮を時間をかけて味わっていたら、ミサキから「今、電話していい?」ってラインが入った。
「うん、もち!」

すぐにミサキから電話が来た。
3か月前にすらりとした男性と結婚したばかりの新婚さんだ。

それからはミサキからのろけ話を聞かされるようになり、「あぁ、私もそろそろ結婚したいなぁ」とめぐみは思うようになっていた。

さっき、ルミから後ろ向きな話を聞いてつい、自分も同調してしまい、めぐみの周りには負の雰囲気が漂っていたから、ここで幸せいっぱいのミサキからプラスのイメージをいただこうとめぐみは思った。

しかし、ミサキの話はいつもと違い、ご主人様と些細なことで喧嘩をし、その話がずっと続いた。一つの彼への疑念が別の行動の理由付けに発展する。

疑いが疑いを呼び、どんどん、彼への不信感が湧いてくるとミサキは話した。

「そんなこと無いよ、彼に限っては。彼はミサキを世界中で一番愛しているんだから。」
めぐみは心を込めてそう言った。


それから1時間くらい話をして、やっと電話は終わった。


ふぅ~。


今日は、一つの負の状態が次の負を引き寄せてしまった。
ルミの話につい同調してしまったから、そのマイナスなイメージが自分を包んでしまい、そして、そのネガティブな感情に引き寄せられるようにミサキからの話が来たのだと思う。


言葉には気を付けよう。
無意識な言葉は本当の自分の気持ちだから。


新婚のミサキがご主人様とちょっとした喧嘩をしている。
それはよくあることだ。
その話に深入りしないようにしよう。



ミサキの彼とは、数年前、めぐみが付き合っていたことをミサキは知らない。


だから、二人の結婚披露宴はとても複雑な心境だった。



でも、忘れよう。
それを引きづっていたら、同じような境遇が自分に引き寄せられるから。
無意識が引き寄せるから、無意識を意識していこう。


めぐみは目を閉じ、真っ白な世界に入って行った。








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無意識からの言葉~ショートショート~

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