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人を騙して得たお金の価値はいかほどか?【音声と文章】

山田ゆり
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専業農家の夫から相続した田畑の内、「大きい畑」はAさんに貸すことになり、先日、
手続きの関係でAさんが我が家へお見えになった。
風除室に立つAさんの頭上にはふわりと雪が乗っていた。


「寒いので中へ、どうぞどうぞ。」
私はそう勧めたがAさんは玄関で大丈夫ですと言われた。

私は事前に用意した印鑑証明書をAさんにお渡しした。

これで書類が進むとの事。ニッと笑うAさんの八重歯が印象的だ。まだ30代後半のAさんは私にはない若さとバイタリティを感じる。

Aさんは、次に、我が家の親戚のBさんの話をされた。



山田家の親族の中で、大本家様(だいほんけ様)の次に偉いBさんは、我が家がビニールハウスを解体処分したのを知り、その業者を教えてほしいと、以前、言われた。

ビニールハウスの解体と処分はAさんの知り合いにお願いしたので、私はAさんに事情を話し、AさんとBさんとでやりとりができるようにした。


その後、どうなったかは知らなかったし、知りたいとも思っていなかったのだが、Aさんはその件を話し始めた。


結局のところ、Aさんの知り合いにやっていただくことになったそうだが、話はそれだけではなかった。



なんと、事業拡大を計画しているAさんは、Bさんの畑を購入することになったそうだ。

Bさん夫婦は昔から手広く耕作をされていたが、もう80代になられ、足腰も弱くなり畑を手放そうと思っていたのだそうだ。

ビニールハウスを処分する件を話している時に、その話を聞いたAさんは、Bさんの畑を購入したいと願い出て、「売りたい」「買いたい」が合致して、話はトントンと進み、私の畑の賃貸借契約と、Bさんの畑の売買契約を同時進行することになったそうだ。


手続きは全て農業委員会の指示の下で行われるから確かなことだ。


つまり、なんと、私がビニールハウスを処分し、その業者を教えたら、Bさんは自身のビニールハウスを処分できたばかりではなく、使わない土地を売ることができたのだ。


何も知らない方だったら、これは美談と感じるだろう。
しかし、私はBさんの運の良さに嫉妬した。

どうしてこの人はそんなに運がいいのか。


ブラックな自分が左の背中の当たりでニヤリとしている。



以前のnoteに書いたが、少しだけご説明したい。


私の父が長年耕作していた畑と、Bさんが所有する田んぼをある意味、だまされたような形で「等価交換」した経緯がある。


昔々、ご先祖様からの遺産分けの関係で
もともと大きな畑だったものを、手前をBさんに、奥の一角だけを父に遺産相続された。
父が相続した畑に行くには農道がなく、手前のBさんの畑を通らなければいけなかった。
長年、そのようにして使っていた。
そこでは、じゃがいも、人参、枝豆、トマトなどを栽培していて、私は小さいころ母について行き、もぎたてのトマトにかぶりついた思い出がある。


ある年から大本家様は父の畑をBさんの田んぼと交換しなさいと言うようになった。
「いつまで人の土地を勝手に通るんだい?」と何度も父は大本家様に言われるようになった。
しかし、父はそれに従わず、畑を続けていた。

しかし、時が過ぎるごとに大本家様からの言い方がきつくなっていった。

それはあとあと振り返ってみると、切羽詰まったものがあったのかもしれない。
大本家様の大きな圧力に父は屈し、仕方なく自分の畑とBさんの田んぼを交換した。

等価交換だからそこにはお金は発生しなかった。


その時父はただ単に、土地を交換すればいいとしか言われていなかった。


しかし、これには裏があったのだ。
父が手放した畑は、数年後に全て県道に変わった。


大本家様のお婿さんは県庁にお勤めの方で、どこにいつ、道路が作られるかを知ることができる立場にいた。

今私は仕事上、建設新聞を読む機会があるから、数年後にどこがどうなるのかは、業界外の人よりは情報を早く得ることができる。
入札の書類にも関わっているから建設をするずっと前から知ることもできる。


これが県庁職員のその部署だともっと早くに分かっているだろうと予測はつく。



尋常小学校しか出ていない両親は全くの無学である。

数年後に、自分の畑が県道になるとは勿論、知るすべもなかった。
それを知っていた大本家様がBさんに利益になるようにうまく取り計らったのだ。


その後、大きな県道ができ、Bさんはすぐに大きな新居を建てられた。

新築祝いに我が家も呼ばれたが、父は絶対に行かなかった。


当時、私は小学生だったから、あんなにお酒が好きな父が、Bさん宅に呼ばれたのに行かないのを不思議に思っていた。

その話を大人になり跡取りになった私は母から聞いた。だから、私も大本家様とBさんに対しては恨みがある。



知らないとは損なのである。
知っているものだけが得をするのだ。




今回、私がBさんにAさんを紹介したから結局、Bさんの土地が売れた。


どこまで行ってもBさんは運がいいのだ。そういう人は世の中にいる。


心が狭い女だと言われても、父の等価交換の件を私は絶対許さない。


Bさん夫婦は、私が何も知らないと思っているらしく、にこにこと私に近づいてくるが、にこやかに笑う私の本心は氷の様に冷えている。




ある日、娘たちにその話をした。



「そうなんだ。そんなことがあったんだ。
Bさんは土地で大金を得たけれど、幸せではないと思うよ。


だって、Bさんの跡取りであるお嬢様はもう50代後半だけど未婚でしょ。お金がたくさんあって大きく立派な家があっても、あとを継ぐ人がいないんだよ。
Bさんはバチが当たったんだよ。」



「お母さん。私たち、まだ全然予定はないけれど、でも、その内、お母さんに孫の世話をしてもらうから。それまで待っててね。」



私の周りをふんわり優しく包むような娘の言葉に
私は「うんうん」と頷いた。






※私が夫から相続した田畑に関する無料マガジンはこちらです。
https://note.com/tukuda/m/ma35047324572


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