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ゆりかごから墓場 まで?(妄想の世界)【音声と文章】

山田ゆり
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「行ってきまーす」
小学一年生のマミは家の自動ドアを抜け外に出た。入り口に立ちマミのうしろ姿に向かって母親は手を振る。


時々マミが振り返る。
その度に肩から斜めに掛けている小さなポシェットがダンスをするように左右に揺れる。
母親はうんうんと大きく頷きながら手を振る。
マミは右手を空高く上げて軽く振る。

それを2~3度繰り返し、マミは右の角を曲がり見えなくなった。



母親はしばらくそこに立っている。
すると、角から黄色い帽子のマミが顔を出す。

母親は両手をあげて大きく振る。
その姿を見たマミは満足して角に消えた。


母親のヨウコは微笑みながら昨夜の雨に濡れた紫陽花を眺めながら家に入った。


ヨウコが子どもの頃は、小学生と言えばランドセルが定番だった。

小さな体に似合わない大きなランドセルの中にはたくさんの教科書やノートが入れられ、初めての登校の朝は嬉しさでそれほど重さは感じなかった。

しかし、下校時にその絶望的な重さに気が付き、泣きたい思いで家に帰り、夕飯の時間まで、泥のように寝ていたことを思い出す。



その後、世の中はどんどんIT化が進み、4つ折りにたたみ手のひらサイズになるタブレットの中に教科書や辞書が入るようになり、今ではランドセルは廃止になった。

今はタブレットと小物を入れた小さなポシェットを斜め掛けするだけ。

黄色い帽子は周りの車や通行人に小学一年生であることを知らせるための目印としてまだこの習慣は継承されている。



学校の体操着は着脱後に掌認証の個人ロッカーに入れておくと
その中で洗濯・乾燥され、綺麗にたたまれて中に入っているから
家に持ち帰る必要はない。




工作セットや絵の具・習字道具などは全て学校で共有するから絵の具の買い足しを親がする必要はない。



給食は完全給食で、夜、帰宅が遅いご家庭の子は、学校で夕食を食べてから帰宅する。

給食費はもちろんタダ。全て国が負担している。
だから、ヨウコが子どもの頃は給食費が払えない子がいたり、おうちで満足に食事をとることができない子がいたが、今の時代、それは無くなった。
「食べる」ことに関して子どもたちの不安は無くなった。



ひと頃、少子高齢化が進み、学校が統廃合されていったが、国政が大きく変わり、
幼稚園・保育園・小学校・中学校・高校・大学までと、老人保健施設が同じ敷地内に建てられるように変わった。



総合大運動会は大きな校庭で行われ、保育園児は自分のお兄ちゃん、お姉ちゃんの活躍を嬉々とした目で見ている。

ご老人たちは
「よちよち歩きだったあの子がかけっこできるようになったのかぁ」と
小さい子どもたちの活躍を目を細めて見守っている。



学校が終わってご家庭の都合で家に誰も居ない学生は、学校の図書ルームにいても、老人施設でお年寄と触れ合っても良いことになっているから、子どもたちの安全は守られ、更にはお年寄たちの楽しみの一つにもなっている。



最近は、学校の施設内に
葬儀場を併設する議論が国会でされている。





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ゆりかごから墓場 まで?(妄想の世界)

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