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オーウェル月間

本は芋づる式に読んでいくのが楽しい。一冊の本から、作者の他の作品へ、作品の歴史的背景へ、作者の思想へと興味関心が次々広がるのが読書の魅力なんだろうな。

ジョージ・オーウェル 「人間らしさ」への讃歌 (岩波新書)』川端 康雄

ということで、このところは『1984』『動物農場』などで知られるオーウェル関連の読書が続いた。

最初に読んだのは、2020年7月刊行の『ジョージ・オーウェル 「人間らしさ」への讃歌 (岩波新書)』川端 康雄

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内容紹介(「BOOK」データベースより)
「反ソ・反共」の作家として、また監視・管理社会化に警鐘を鳴らした人物として、時代とともにその評価も変化してきたオーウェル。「ポスト真実」の時代に再評価が進む『一九八四年』などの代表作をはじめ、少年期から晩年までの生涯と作品群を丹念にたどり、その思想の根源をさぐる。危機の時代に作品にこめた希望とは何か。

著者は、これまでたくさんのオーウェルの翻訳を手がけてきた人。全体主義や監視社会に警鐘を鳴らしてきたオーウェルがどんな生い立ちで、どんな人生を歩んできたかを辿りながら、その思想が生まれた背景に触れることができて面白かった。また引用されているエッセイや評論も読んでみたくなった。まさに芋づる式。

新型コロナ時代に、ジョージ・オーウェルが再び注目される理由 

筆者の川端康夫さんが現代ビジネスに書いた記事を見つけたので記録。

記事にあるように、新型コロナウイルス拡大防止のために、中国や台湾などで採り入れた最新の情報機器を使った国民の健康管理はコロナ禍においては成果もあげたが、一方で監視社会への不安も話題になっていた。まさに「ビッグブラザーがいつも見ている」監視社会の到来だ。

『1984』

そんなわけで『1984』を再読した。

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内容(「BOOK」データベースより)
“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。

小説では家や街角に設置されたテレスクリーンで行われる監視も2020年の今は携帯電話を使った個人の管理へといつの間にか進んでいる。ほとんどの人が既に逃れられないネットワークに捕らえられていることに気がついて、小説を読みながらゾッとした。ふと携帯電話のインカメラを指でふさいで見たけれど、もう引き返すことはできそうにない。

『あなたと原爆~オーウェル評論集~ (光文社古典新訳文庫)』

最後に『あなたと原爆~オーウェル評論集~ (光文社古典新訳文庫)』

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内容(「BOOK」データベースより)
原爆投下のわずかふた月後、その後の核をめぐる米ソの対立を予見し「冷戦」と名付けた表題の「あなたと原爆」、名エッセイ「象を撃つ」「絞首刑」など16篇を収録。ファクトとフェイク、国家と個人、ナショナリズムとパトリオティズムなど、『一九八四年』に繋がる先見性に富む評論集。

このようにオーウェル関連の三冊を読んでみて、作者の先見性には驚くばかりだった。今もなお、その警鐘は耳を傾ける価値がある。

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