光になったインコ


 ここはとある街のペットショップ。その一角にインコが一羽、鳥かごの中に入って売られていました。

インコの色は他のインコのように色鮮やかではなく、地味で人気が無かったため、長い間ペットショップの中で売れ残っていました。インコはコンコン、コツコツと鳥かごをずっとつついています。

 道行くお客さんはインコを見て言いました。「ねぇねぇ、あのインコを見て。必死にかごをつついているよ。外に出たいのかな。出られっこないのにおかしいね。色もなんだか変な色」

ペットショップの店員さんもインコに言いました。「今日もこのインコは鳥かごをつついているよ。馬鹿だなぁ、鳥かごは鉄でできているんだぞ。そこから出られるわけがないだろう」

 インコには夢がありました。その夢は「鳥かごの外の世界を一度でいいから見て見たい」という夢でした。インコは自分の夢を叶えるために、毎日毎日コンコン、コツコツとかごをつつき続けました。くちばしが傷ついたこともありましたが、インコは決してあきらめませんでした。「きっといつかここを出て、外の世界を見に行くんだ」

 お客さんの中には、優しい言葉をくれる人もいました。「このインコさんはきっとお外に出たいのね。お外に出られるといいね、頑張ってね」「そうね、インコさんの夢が叶うといいね。身体の色もとても綺麗ね」小さな女の子がお母さんと一緒にインコを見て会話を交わしている温かな言葉を聞くと、インコはとっても嬉しくなって、自信がわいてきました。

 どれだけの月日が流れたか分かりません。ある日の事、「カランポロンコロン」かごの一部が音を立てて外れました。「やった!ようやく夢が叶った!これで外に出られる!」インコは鳥かごから勢いよく外の世界へ飛び立ち、空に向かって羽ばたきました。高く高く、どこまでも高く…。そして夢にまで見た外の世界をたくさん目に焼き付けました。空の青さ、雲の形、美しい花々、目にするもの全てが驚きの連続で珍しく、鳥かごの外に広がる世界はインコを心から感動させました。でも一つだけ、インコの心を悲しくさせることがありました。

それは戦争です。世界はとても美しさであふれているのに、国と国とが争い、戦争でたくさんの人々が悲しんでいたのです。

 外の世界を見るという夢が叶ったインコには、もう一つ夢ができました。それは「戦争を無くす」という夢です。大空を飛び回りながらインコは神様に祈りました。「神様どうか戦争を無くして下さい。僕は僕に優しい言葉をくれた人たちを笑顔にしたいのです」

ある時ある国の空から、ペットショップで優しい言葉をくれた女の子とお母さんに似た親子に向かって戦車が銃口を向けている光景をインコは目にしました。「危ない!神様、どうか世界がもっと優しくなりますように。どうかあと一つだけ、僕の夢を叶えて下さい」そう祈りながらインコは戦車に向かって猛烈な速さで大空から一直線に飛び降りました。あまりの速さにインコは光の矢にその姿を変えました。そして戦車に体当たりをしたその瞬間、「パーン、ドーン、シュパー」大きな音と光が戦車を包み込み、光が四方八方へと飛び散り、空から光の雨が降ってきました。

インコの姿と戦車はどこにも見当りません。戦車があった場所にはいつの間にかお花が咲いていました。

光の雨は大地に優しく降り注ぎました。光の雨が戦争で使う兵器に当たると、兵器は食べ物や楽器やお花に変わりました。そして、世界から人を殺すための兵器は無くなり、戦争も無くなりました。

人々は兵器から姿を変えた食べ物や楽器やお花で、世界から戦争が無くなったお祝いのパーティーを開き、毎日を楽しく笑顔で過ごしました。

ふと誰かか空を見上げた時、空にはインコの形に似た雲が浮かんでいましたとさ。

おしまい。


 

 

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