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【roots】青年期 《14章》オーウェンと僕

僕の旅に出てくる人もちゃんと自分の人生を生きているのはわかってはいたけど。
それぞれに旅が存在しているとは思っていなかった。
自分がこの旅の王様のような気になっているのをキツネの旅で正したつもりだったのに。どうして自分が主人公だと思ってしまうのだろう。
いてくれる人に感謝しなくてはいけないとまた学んだ。
オーウェンの旅に出てくる僕は役に立っているのだろうか。
せめて僕の旅に出て来る全ての人の命を守る事。
それはしなくちゃいけない。
エイデン…。
ルビーは自分の旅に出て来た人を失くしてしまった。僕のせいで…。
どれだけ辛いだろう。
僕は自分の再会ばかり喜んではしゃいでいた。
自分が恥ずかしい。
カーテンを開けて花屋をながめた。ルビーがにこやかに働いている。
あの人たちは、花園の花や蝶々だったりするのだろうか。これ以上大切な人をなくさないようにしてあげたい。僕に出来る事がわからない。
オーウェンの旅の話を聞いてみよう。そう思い立ちカーテンを閉じた。

オーウェンが間もなく訪ねてくれた。
僕が思いを話すと。
「大人になったな。自分だけで精一杯だった小さな男の子が周りに気がつくなんて、泣けてくるよ」と優しく笑った。
「うーん。どこから話そう」少し考えてから「長いぞ」と髪をかき上げた。

オーウェンと僕はいつの世も一緒に過ごしている。いつも何故か手元に現れるアルバムと日記帳。オーウェンはその度、自分の輪廻転生を自覚する。
アルバムに手紙が挟まれていた。一つはクラシックな飾り枠で囲われた美しい便箋。
ルビーからだ。

『親愛なるオーウェンへ
いつも私たちを守り続けてくれてありがとう。またこの時が来ました。デイブが亡くなる前に戻ります。きっとまたお会いできるわね。
私もデイブを導いてここにきます。
オーウェンもすぐにまたここに来ておいてね。
そして。一緒に。
一回目のライオンと花からデイブの心の中の美しさが変わっていない事を喜びたいと思います。
清い流れと共に。ルビー』

もう一つは「日記を読め」というオーウェンから自分への小さな手紙だ。
「ルビーからの手紙については、後から話す。まずは俺について話すよ」

オーウェンは、僕の旅のために生かされていて.それを幸せに思っている。
いつも結婚もしてリリーという女性だと。ちゃんと自分の毎日も楽しんで生きているけれどデイブを守りルビーを助けて3人一緒に旅をする運命だと。デイブとルビーが何らかの理由で今を終わりにした後、必ず自分にも終わりが来てまた始まる。
またデイブが現れてそれを綴った日記とアルバムが手元に現れる。
「この今を繰り返しているわけじゃないのにまた会えたってわかるんだね」僕が聞くと。
「この写真、そして実は俺はもう忘れていない。
いつからか、ずっと旅を続けているんだ。デイブは素直で子どものままのような男だから、今までこういう事を言い出したりしなかった。俺とルビーはそれで良かったんだ。でも今回、この旅を出版すると言い出してデイブが残すと決めた。何かが変わると思っていたよ」とオーウェンが言った。
「変えちゃって大丈夫かな?」と僕が心配すると
「何が?」と笑って「子どもが急に大人になったんじゃなくて、いよいよちゃんと大人になったと喜べよ」と僕の頭を大きな手でぽんぽん叩いた。
「オーウェンは僕の旅の一員だって事だよね。でもルビーは違うのかな…」
「なぜ?」
「昨日さ、僕が会いに行かなくてエイデンと湖に入った事があるって言い出して」
「は?どういう事だ?」オーウェンも驚いた
「ルビーが泣いてさ、僕と会えない時があって遠く離れた時期があって…僕を迎えに行ってとエイデンに頼んだのに。僕は会いに行かなかったらしいんだ」
「そんなことあるかよ。エイデンが2人を会わせないようにしたとしか考えられない」
「エイデンが?まさか」オーウェンは驚いて。
「竜は本当にいる生き物じゃないだろ?影と一緒さ…」オーウェンの言葉に僕はショックをうけた。
「ドラゴンは良いやつだったのに…」
「流れを変えた?ルビーに会えなかった?」オーウェンも考え込んだ。
「エイデンを探そうと思うんだ。ルビーが自分が巻き込んでしまったとずっと苦しんでいるのはいやだから」と僕が口を開く
「そうか」オーウェンはただ一言言って、まだ考え込んでいた。
「オーウェンがさ、僕の旅を自身の旅と重ねて心から楽しんでくれてる事に感謝だよ。ありがとう」僕の言葉にやっと微笑んで
「こちらこそ、俺は巻き込んでくれて面白く生きてる。」真っ直ぐに見てくれてる瞳から力強い愛情を感じた。
「僕ばかり再会出来て、喜んでいて。ルビーの事に気付いてやれなかったのが悔やまれてさ」
「知らなかったんだから仕方がないさ、気にするなよ」とオーウェンが励ましてくれた。
「知ればいいんだよね。知る事が一番怖くない道だ」と僕が言うと。
「エイデンか…チェイスのような目に合うかもしれない。俺も今まで聞いたこと無い話だからな」
オーウェンは深刻な顔だった。
「1人では無理かな?」
「俺がいるだろ。ルビーが危険だ、連れて行かれたらまた会えなくなるかもしれない。あの書房…影がデイブが訪ねて来る事を知っていたのが気になるんだよ。エイデンと名乗るなんて」
「エイデンって…」僕が言いかけると
「ただいまー!」と元気にルビーが帰ってきた。
僕とオーウェンは「ここまで」と目配せしてにこやかにルビーを迎えた。

to be continue…

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀

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