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【roots】少年期 《七章》澄みきった水・1

キツネたちとの日々は本当に楽しく数日があっと言う間に経っていた。伸び伸びと森を走り回って、笑いあって、心配事が一つもない。
こんな事初めてだった。

すると目の前にドラゴンが現れた。
僕は「久しぶりだね!」と駆け寄った。
ドラゴンが小さく炎を吐いて背中に乗るよう促された。
「そうか。まだ知ることがあるんだね。ちょっと待ってて。皆んなに挨拶してくる」
タイラー、トレバー、ティムの元へ行き別れの挨拶をした。「また会おう!」「これはお別れじゃない!」と言ってくれて、1人1人とハグをした。
他人を守ることで自分が守られる事。
自分を知ってもらう努力で沢山知る事がある。
そして名前を思い出せた。
ここで手にした事の大きさに感謝して飛び立った。
*****
「そろそろ新しい所へ行かなきゃって思ってたんだ。迎えに来てくれてありがとう」と僕が言うとドラゴンは飛びながら嬉しそうに炎を吹いた。
「ドラゴン。僕ね、デイビッドって言うんだ。よろしくね」と言うとドラゴンは大きく旋回して一緒に喜んでくれているようだった。嬉しくて僕も叫び声を上げた。
「そうだ!あの大きな花に名前を報告に行こうかな。花園にお願い出来る?」
ドラゴンはぐんぐん進んで花園の門の前に降りた。
「ドラゴン。ありがとう。行ってくるよ!またね」首に手を回しハグをして別れた。
白い大きな門にライオンが付いていた。
ここも獅子門だ。始まりの門。何かが始まるんだね。
コン!コン!
「僕はデイビッドです。大きな白い花に会いに来ました」背筋を伸ばして言うとゆっくり大きな門が内側に開いて、僕が
入ると、またゆっくりと門が閉まっていった。

ここにいる皆んなの邪魔にならないように進まなきゃ。一番大切なのは僕らしく。たとえ穴に落とされても分かり合えるって知ったから。正直に素直に。
「こんにちは!」「こんにちは。良いお天気ですね」花を見つける度に声を掛けた。
この辺りの花は話せないのかな?
ここじゃ無かったのかな?
大きくて白い美しい花だった。葉っぱがレースみたいでふんわりとして…少し気が強くて元気な子だったんだけどな。
テクテクと歩き続けると小さな東屋が見えてきた。
白いドレスの少女が座っている。
「もしかして?君はあの花⁈」
「デイビッド、まずは挨拶でしょ」とたしなめられた。
「ごめんなさい。こんにちは、デイビッドです」と手を出した。白い彼女は手を取り
「私はルビー。また来たのね」といたずらっぽく笑った。
「君に、ルビーに僕の名前を言わないとって…だから。」
「そう。ちゃんと私に会いに花園へ来たってわけね。デイビッド変わったわね」ルビーに褒められて嬉しくなった。
「ここに座って」お茶を注いでくれた。
「ルビーはずっとこの花園に?」
「そうよ。あなたが来るのを待っていたから」
「前に会った時は花だったよね」素直に聞いてみた。
「デイビッド、あなたが私を…自分を見る気がなかったから。私が木でも草でも何でも良かったってわけ」
そんな…!確かに何も考えていなかったけど。目に入るものに対して敬意も興味も持って無かった。そんなことで…人が花に?
「ルビー、ごめんよ。僕の周りにあるものが全て大切な存在だと、意味があるものだと、あの時は知らなかったんだ」
ルビーは嬉しそうに微笑んで
「素晴らしいわ。だから名前を思い出せたのね。
どんな旅をして来たのか話して聞かせて」
僕は少し恥ずかしく、でも誇らしげに2度目の旅の話をした。

to be continue…


今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀

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