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【roots2】 《9章》負けないために

骨のDNAとミアの残した物から採取したDNAを調べるとあの竜はミアでは無いとわかった。

次には手紙の暗示を解く術を探していた。ディランが森の主に聞いてみようと言ってくれた。

アイツが魔術のようなものまで使えるなんて、どうしたらいいか…。皆、次に襲って来る恐怖に負けないようにする事だけで精一杯になっていた。

数日後には森の主サイラスが会ってくれることになった。サイラスは巨木だった。
心を澄ませて木に触れると話が出来た。
「はじめまして。僕はデイビッドです」
「はじめまして。苦しんでるね」
低く大地から響くような優しい声だ。
「はい。負けたらダメな状況なのに…弱っています」デイブが素直に答えるとサイラスは葉を揺らしながら少し笑って
「暗示はすぐに解ける。目をつむって」と言った。では言われた通りに目をつむる。途端に身体に何かが走ったゆくような感覚があり背中が白く光った。
サイラスはゆっくりと話し出した
「5年前の火傷から続いていたんだよ。治しておいたから、もう心配ない」
デイブはゆっくり目を開けてサイラスを見上げた。
「ほ、本当に?ありがとうございます!」
「信じられないって顔だな。」
「すみません。あまりにも一瞬だから!凄いや!!」デイブが嬉しそうにはしゃぐと
「君が滝の主だろ?君がいてくれるから森が生きてる」とサイラスが落ち着いた声で心を鎮めてくれた。
「何より嬉しい言葉です」
「下に落ちている葉を持っていったら良い。お守りになる。」
幹の下には葉が落ちていた。
「では、数枚頂いても?」とデイブが遠慮がちに言うと
「落ちてるもんだ。好きなだけ持っていきなさい」と優しく答えてくれた。
デイブは幹から手を離しサイラスの落ち葉を大切そうに拾った。人数分はある。
立ち上がりもう一度幹に手を置いて深呼吸した。
「また伺っても良いですか?」
幹の表皮の隙間からふわふわっと柔らかな空気が手のひらを包んで
「あぁ、もっとゆっくり話そう」と言ってくれた。

「おかえり!」ルビーが玄関まで来て迎えてくれた。
「背中、治ったみたい」とデイブがシャツをめくって見せた。肌がツヤツヤで傷一つ無い。
「…どうしちゃったの?」ルビーは触れるのもとがめられてデイブの手からシャツを下げた。
「最初の火傷から計画されていたみたい。番狂わせでチェイスは焦るだろうな」デイブは言いながら閃いた様子で「オーウェンに知らせて来るね」とデイブはかけて行った。

背中をみてオーウェンは心底は喜べなかった。
「あの5年前からの計画がふいになってただじゃすまないだろうな」とため息をついた。
デイブが「もしかしたら、これで力が弱まるって事もある?」と聞くと
「そうだと良いけど…別の手に出るって事もある」と心配そうに言った。
デイブは、なるほど。これで終わるわけないかとうなづいて、もう一つの気掛かりについて聞いた。「オスカーなんだけどさ。何か連絡があった?」
「それが…オースティンと連絡がつかないんだ」
「そうなの?」
オーウェンはデイブを見て、真っ直ぐ向けられている目を少し見ないようにして言った。
「あのオースティン…何か違ったかもしれないな…」デイブは驚いて「偽者ってこと?」と詰めよった。オーウェンは真面目な顔で続けた。
「偽者かはわからないけど…チェイスに何かされてる…」「ルビーには言わないで」
「わかってる。調べてるから心配するな」
今度は真っ直ぐデイブの目をみて肩を叩いた。
「じゃあ行くよ」とデイブが階段を登りかけると「背中、良かったな」と言って小さく二回拍手した。
「ありがとう。おやすみ」
デイブは階段を登りながら、オスカーを思って不安になった。まさかオースティンが…。

*****

オスカーはまだアリソンの所へ辿り着いていなかった。知らない街に一度滞在して、安全だったら移動しようというオースティンの提案だった。
アリソンに迷惑をかけてもいけないと、オスカーは従った。だんだんとオスカーの口数が減っていき、シャーロットの心配は届かず心を閉ざして行った。

to be continue…

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