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【roots2】 《9章》負けないために・2

次の日、朝デイブが目を覚ますとルビーが四階に居なかった。
「ルビー」と声を掛けながら下の階に降りて行くがどこにもいない。
「ルビー!!」大きな声で一階から四階まで響き渡るように叫んだ。
ディランもオーウェンもおらず家にデイブ1人だった。
デイブは頭を抱えて、しばらく中庭の窓に寄りかかっていた。何があった!?
地下からパタパタとスリッパの音がしてルビーが上がって来た。
デイブが血相を変えて立ち上がるとルビーが気付いて「どうしたの?」と驚いて聞いた。デイブは
「1人でどこに行ってたんだ!!」といきなり怒鳴りつけた。「家、家に着替えを…」戸惑うルビーにさらに怒鳴りつける。「どうして1人で外に出たんだ!!」「外には出てない、この道だけよ」
「ずっと一緒にいてって言ったでしょ!!」
デイブは珍しく、物凄く怒っていた。
「よく寝ていたから…ごめんなさい」
ルビーが謝っても収まりきらない。
「1人になったらだめだ!!二度とするなよ!!」
と怒鳴りつけると階段を上りかけた。
ルビーは先に駆け上がってデイブの前に立つと腰に手を当て頭を振って「怒鳴らないで!!」と物凄い勢いで怒鳴り返した。
デイブがのけぞり階段から落ちそうになるとルビーが両手を握って引き寄せた。
その瞬間。
デイブの今までの全てが見えてしまった。サイラスのおかげでデイブが清浄化されルビーの力も使えるようになったのだ。

デイブがどれだけの恐怖を体験し、緊張感に包まれて生活しているのか…これまでの状況が一気にルビーへと押し寄せてガクガクと震え立てなくなった。
今度はデイブがルビーを支えて、抱き抱えるようにして階段を上がった。
ソファーにすわらせると、
「ルビー…僕が声を荒げたりしていけなかったよ。ごめんね」と謝った。
「ちがう…見えた、こんなにも…デイブが。全部見えたの」とやっとの震える声で答えた。
「え?僕の記憶が?」デイブはため息をついてそうか…と、
「恐ろしいものを見せてしまったんだね」と言うと「聞いていたのと違うわ…私に怒ったわけがわかるわ。ごめんなさい」と青ざめた顔でデイブを見た。
「ルビー、何もなくて良かった。とそう言えば良かったのに。僕が悪かったよ」デイブが両手を広げルビーを招き入れて抱きしめた。
ルビーは震えてデイブの背中は触れなかった。だんだん息遣いも荒くなり過呼吸症のようになって来た。
「苦しいね、大丈夫だよ。横になろう」

デイブがルビーを寝室に寝かせて布団を掛けると、ルビーは布団に潜って行った。
デイブも寝転がり、布団ごと抱きしめた。
「あー。どれだけ会いたかったかバレちゃったな」とおどけて「背中痛そうだったでしょ?あんまり泣かないで頑張ってたって本当だったでしょ?」と続けた。
布団の中からポカポカとパンチが飛んで来た。
デイブは少しめくってルビーの顔を見ると
「デイブ…」と小さく心細い声を出した。
「うるさい?」と優しく聞くとルビーはゆっくりブンブンと首を横に振った。
「すぐに会いに来てくれて…ありがとう」
「待った!待った。もう来ないと思ってたー!って言ってたのに」とデイブがまたふざけるとルビーは
「うるさい」と優しく鼻を摘んでそっと離した。デイブは微笑んで
「元気出た?良かった。ホッとした」と布団に仰向けに大の字になった。
ルビーが掛布団から顔を出すとデイブが腕をポンと叩いて「ここに。少し寝て。」と招いた。ルビーは頭を腕に乗せデイブに寄り添うと呼吸もゆっくり落ち着いて来て、スヤスヤと寝息に変わって行った。

数時間2人で寝ていたらしく寝室のノックでデイブが目を覚ました。そっとベッドから降りて部屋を出るとオーウェンが階段に散らばっていた服を拾って持って来てくれていた。
「何かあったのか?」
オーウェンにしたら当然の質問だ。デイブはバツが悪そうにおでこをかきかき答えた。
「ルビーが一人で家に衣類を取りに行って…僕が怒鳴りつけた」
「はぁ?お前が⁉︎」オーウェンがびっくりすると
「反省してる!反省してるよ…それで揉めてたらルビーの力が戻っていて全部を見せてしまったんだ。今は落ち着いたけど…」と事情を話して服を受け取った。オーウェンは
「今は確かに一人は危ないってわかるけど。デイブそういう事出来るんだな」と笑った。
「恥ずかしいよ」とデイブは服に顔を埋めた。
「ルビーも息が詰まったんだろ。外に出たりしなかったかな?」
「多分、大丈夫だよ」
「目を覚ますといけない。戻ってやって」とオーウェンが言ってくれた。
「ありがとう。行くよ」手を振ってデイブは静かに寝室に戻っていった。

次の日の朝、オーウェンが来てくれた。
「ルビー、気になる美容院があってさ。リリーかも知れないんだ。一緒に行ってくれないかな?」
「今日?デイブ…いい?」ルビーが振り向いてデイブに聞いた。
「もちろん!行って来たら良いよ」と答えると
「デイブは一緒に来ないの?」と心配そうにルビーが言った。オーウェンが目配せして
デイブはすぐに「行くよ!みんなで行こう」と明るく言った。ルビーは
「良かった!美容院こっちに来てから初めて!」
と飛び跳ねた。
「オーウェンありがとう」デイブが言うとニッコリ笑って小さく片手を上げた。

それぞれの元の家から別々に街へ出てカフェで待ち合わせた。
「こんなの久しぶりね」とルビーが嬉しそうで男2人はそれだけで心が癒された。
美容院の反対側の道路に立ち。
ウィンドウから見える受付にいる女性がリリーに見える。
信号が変わりルビーがウキウキと横断歩道を渡ってお店のドアを開けた。
「3人いいかしら?」
「いらっしゃいませ。初めてのお客様ですか?…前にいらしてます…よね」とリリーに似た女性がニッコリと微笑んだ。
「あの…お名前はもしかしてリリーさん?」とオーウェンが聞くと「はい!やはりいらして下さっていたんですね」と嬉しそうに答えてくれた。それを聞くオーウェンも嬉しそう。
デイブとルビーはそんな2人を眺めてホッとした。

ルビーの髪は長くて、たっぷりとしている。容姿の美しさを際立たせているようだった。
「短く切ろうかしら」とルビーが言うと「え⁉︎」と隣に座るデイブから思わず声が出た。
「デイブが嫌みたいなんでやめておきます」
と笑われてデイブは巻かれたケープから上手く手を出せず、静かに下を向いた。
「仲が良いんですね」とリリーに言われてデイブはますます赤くなった。

3人並んで髪を整えて貰った。
オーウェンはリリー、デイブは男性のスタイリストさんでルビーはリリーがしてくれた。
ライオンのようなオーウェンがスッキリしている。
「かっこいいな!」とデイブが言うと
「初めてこんな短くしたよ」と小さな声で言った。少しでも長くおしゃべりしたくて「もう少し短くします。」と言ったらしい。

ルビーを整えるリリー。
男2人はソファーで終わるのを待つ事になった。
ルビーとリリーは意気投合。
「良かったら、4人でお食事にいきませんか?」と誘ってみるとすぐにokだった。

ずっと緊張に包まれた生活だったので、久々の休日感に3人は癒されていた。
リリーも早く一員になってくれたら良いのに。そんな思いを抱えて、
幸せな時間を穏やかに過ごした。

to be continue…
***

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