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【roots2】 《3章》新生活


夕陽の美しい小さな木の家はすぐに建った。
オスカーは半ベソだったけれど、シャーロットが窘めてくれて。
今日引越しする事になった。
荷物も大して無いので、布団と衣類を車に積んで一往復で済んでしまう引越しだった。

夜ご飯を新しい家でと、オスカーが腕を奮ってくれて美味しく頂いた。
「いつでも来てね」とルビーが言うと「飛んで行くよ」とオスカーが答えて、2人は帰って行った。

新しい家にデイブとルビーの2人になった。
風呂が沸いた。ルビーが「お先にどうぞ」と片付けをしながら言うと。
デイブが「ルビー、少ししたら入って来てよ」と言った。
突然何を言い出すのかとルビーが笑って「何⁈やだ。行かないわよ」と恥ずかしそうに言った。
「違う!違う!冗談、冗談」とデイブも笑って誤魔化して洗面所へ行き、背中の話をするきっかけは今じゃ無かったかとデイブは頭をかいた。

少ししたら浴室をノックする音が聞こえた。
「デイブ、6歳があんなこと言うなんて。どこか怪我でもしてみてもらいたいの?」とドア越しにルビーが言った。
「…うん、そうなんだ」デイブが答えると
「開けるね」とそーっとドアを開けて顔だけひょこっと出した。
デイブは浴槽に背をつけたまま、ルビーの方を見て「ごめん」と笑った。ルビーは中に入ってきて
「どこ?ぶつけたの?自分では見えない所なの?」とお湯に手を入れた。入浴剤でお湯は白濁だった。デイブはその手をそっと両手で包むと「ちょっとびっくりさせる」と言ってくるりとルビーに背を向けると上半身を浴槽から出した。
湯気の中でも背中を覆う赤い皮膚がよく見えた。
「背中…どうしたの?」ルビーの声が低く響いた。「これで行くのが遅れたんだ」
「5年、これに5年ね…」ルビーは神妙な顔で両手を背中に当ててそっと撫でた。
「デイブ…言いたかった?」ルビーから思ってもいない言葉が出てデイブは驚いた。
「え?」
「言いたく無いのに私が言わせたでしょ?」
背中からルビーが沈んだ声で言った。
「言いたかったよ。秘密は無しだ。でも驚かせるだろ…だから怖くて」と俯くと。
「痛かったでしょう。よく頑張ったわね」と頬を背中につけた。泣いているのが判る。
「ごめんね…」泣かせてしまったか…デイブは胸が痛んだ。
「6歳じゃないなって…この旅のデイブは大人になってるなって思ってた」ルビーは自分に言い聞かせるように言うとデイブの肩をぐっと押し込んで湯に浸からせると頭を撫でた。
「はい!しっかり温まってから出てきてね」
ルビーは涙を溢れさせた瞳で笑顔を見せて浴室から出て行った。

ルビーは洗面台の鏡に向かって大きなため息をついて涙を拭いて部屋を出た。
デイブは浴室なら少しでも傷が見えにくくてショックが小さくて済むと思ったのだが、そうはいかなかった。自分では、はっきりと傷跡が見えない。怖い思いをさせたかもしれない。泣かせてしまった事が気になってすぐに風呂から上がった。

出来る精一杯の普通を装って「ルビーどうぞ」と明るくリビングに入って行った。
ルビーがソファに腕を組みあぐらをかいてすわっていた。ソファをトントンと叩いて向かいの席を指を刺した。
座れと言う事らしい。デイブはタオルで頭を拭きながら言われた通りに座った。
座るや否や「なんでやけどを?」と怒った様にいわれた。「うん、あの…」睨まれてマゴマゴすると「オドオドしない!!」と怒られた。こんなルビー久しぶりだ。デイブが素直に「はい」と笑うと「なんでこんな事になったの?」と優しく言って背中をさすった。
「背中に火をつけられて、後ろから」
「はぁ⁈いきなり?」またルビーに火がついた。
「怒らないでよ。いきなりじゃない」とデイブは穏やかに言うと。和ませようとしてルビーのとんがった口を両方から挟んでますますとんがらせて笑った。
だけど「面白くない!!」とまた怒られた。
デイブは仕方なく「自然発火みたいにボッとさ」と状況を説明し出した。
「背中に?火が?出たの?」「そうなんだよね」
「そうなんだよねじゃないでしょうが!!」
「まぁまぁ、チェイスがさ。目の前にいて点けたんだ。火を」ルビーは驚いた顔をして
「火を…扱えるの?前にいたのに…背中に?」
「ついにね。そうみたい。危ないよね。だからコレ」とデイブは天井を指差した。
スプリンクラーと警報器がリビング、ダイニング、と見える範囲のあちこちに付いていた。
「外にもカメラをつけてあるからね。ルビーは僕が守るよ」とニッコリ言うと
「そう言うこと言ってない!」とピシャリと言われた。状況を知らされないって嫌だよね…デイブはわかってるけど、ルビーを必要以上に怖がらせて生活を制限したくなかった。
「知ってる。もう僕は大丈夫だしさ。」
「痛かったでしょう?」「すごくね」と笑顔で返した。
「1人で頑張ったの?」
「オーウェンが来てくれた。すごく助けてくれたんだ」ルビーの顔が曇って黙ってしまった。
デイブはルビーの近くに座り変えて
「ルビーに会いたいから頑張ったんだ。背中が治ったら全部すっ飛ばしてルビーに会いに行ったんだよ」と言った。
「私を呼んでくれたら良かった」
あんな姿は見せられなかったんだ…
「ごめんね。遅くなって」
「来るのが?」とルビーがなんとも言えない悲しそうな顔で聞いた。
「言うのが」とデイブが言うとルビーは少し微笑んで「大事にしてね」と優しく言った。
デイブはルビーの手を取って「するよ。幸せにする」と真剣に言うと「違う!体よ」と笑った。
良かった。笑ってくれた…
「仲良くやって行こう。もう秘密は無しだ」
「本当ね。」ルビーがデイブの顔を覗き込んで聞いた。
「見えない事を不安に思っているでしょ」
「長い間、何でも見えるって決めつけていたから。見えないってね…」ルビーは天井を見上げた。
「信じて」デイブの声に顔を戻して
「よろしくお願いします。」と頭を下げた。

to be continue…
*******

デイブとルビーの絆や愛情の形が見えるように伝わると良いな😊🍀


毎週水曜日更新📙✨

ワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀
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