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【小説講座】風景描写や地の文の力を付ける方法を解説!一人称視点と三人称視点どっちがいい? 小説講座その5

対話式の小説を書き、キャラ同士を動かすことを中心に解説してきました。

今度は独白式の小説を元に、地の文についてもっと詳しく説明していきます。


小説の殆どを占める地の文

小説には様々な要素がありますが、やはり重大なのが地の文章でしょう。セリフや会話以外の全ての部分を指します。

雪国の冒頭「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった」や吾輩は猫であるの書き出し「吾輩は猫である。名前はまだ無い」など、グッと心を掴む地の文を思い浮かべる人も多い筈です。

また奈須きのこ先生の重厚な文章や西尾維新先生の零れるほどの語彙に憧れる人も多いでしょう。もちろんそれには憧れつつ、まずは短い、なんでもない文章を書くトレーニングから始めます。

独白式小説

独白式小説というのは、地の文だけで書かれた小説。エッセイ風の小説と考えて貰っても大丈夫です。

吾輩は猫である。名はエビマヨ。よく知らないが高尚な意味に違いない。

思うに人間はツンデレ極まりない。
構ってくれないかと思えば、突然だる絡みしてくる。
フトッタといって飯をくれないかと思うと、急にチュールを献上してくる。

振り回される身にもなって欲しい。なんともかわいい奴らよ。

上記は猫の日にTwitter小説として、140文字以内で書いたもの。いつもツンデレで我儘だと言われている猫ですが、猫から見たら人間の方がツンデレでワガママではないかという構成になっています。

このように、今までの会話主体とは違う文章を練習していって貰います。

一人称視点か三人称視点か問題

小説は一人称視点と三人称視点、その両方を切り替えながら使うものがあります。

地の文を書く時、一人称視点がいいのか三人称視点がいいのかというのは、ずっと議論されている命題。初心者の方が書くには一人称視点が楽と言う声も多いですが、絶対的にどっちが書き易いということはありません。

単に使い分けの問題です。その実例として、一人称と三人称で同じシーンを書くと、以下の様に違ってきます。

吾輩は猫である。名はエビマヨ。よく知らないが高尚な意味に違いない。

思うに人間はツンデレ極まりない。
構ってくれないかと思えば、突然だる絡みしてくる。
フトッタといって飯をくれないかと思うと、急にチュールを献上してくる。

振り回される身にもなって欲しい。なんともかわいい奴らよ。

背の高い箪笥の上に、真っ黒な猫が寝転がっている。
彼の名前はエビマヨ。飼い主がこの世で一番好きな食べ物の名前からとっている。

飼い主のリモートワーク中は、エビマヨがしきりに遊んでくれとアピールをし。仕事が終わると、今度は飼い主がエビマヨにダル絡みをする。

飼い主は仕事中に構えなかった分、存分にエビマヨと遊ぶつもり……なのだが。いくら玩具でアピールをしても、エビマヨは尻尾を振るだけで箪笥から降りてこない。リモートワーク中の飼い主が構ってくれなかったので、へそを曲げてしまったのだろう。

どうしても遊びたい飼い主は、最終手段に出ることにした。チュールである。キッチンからエビマヨの好きなささみ味を取り出し、エビマヨをおびき寄せる作戦に出たのだ。

最近太り気味なのでこの手を使うか迷ったが、やっと仕事が終わったのに、エビマヨが遊んでくれないのだから仕方がない。

チュールを見付けたエビマヨは、目を輝かせて箪笥から飛び降りる。高カロリーのチュールを食べると、この後のエビマヨの晩御飯が半分に減るのだが。

嬉しそうに駆け寄ってくるエビマヨを見ると、心の痛みなんてどうでもよくなった飼い主だった。

上が一人称視点で、下が三人称視点。まったく違う文章なのが分かります。

一人称視点の時は、エビマヨが感じたことしか書けません。エビマヨが「人間はツンデレだ」と認識していれば、事実はどうであれ、そうとしか書けないのです。

一方で三人称視点の方は、状況を事細かく書くことができます。しかしエビマヨが、「人間はツンデレだ」と考えていることは伝えられません。

つまりキャラが何を考えているのかを伝えたいのか、それとも状況を正確に説明したいのかで書き分ければいいのです。

場面場面で適する方を選ぶ必要がありますが、最初の内は得意な方を使えれば大丈夫でしょう。

好きな作家を真似して練習

ここまでの説明を読んで、「結局何をすればいいのか?」と思う方も多いでしょう。

やって欲しいレッスンは、「好きな作家の真似をして独白式小説を書く」ことです。真似をすると聞くと、パクリになるのではないかと心配になるかも知れません。

大丈夫です。今から小説を書こうという方が、最初の練習として超人気作家の真似をしても、パクリというレベルにまで到達する事はありません。

もちろん「影響を受ける」程度のことはあるでしょうが、気にしなくて構いません。

それに誰かを真似てみても、全く一緒にはならない筈。絶対に書きやすい表現や自分特有の書き癖が出てきて、練習すればするほど真似ている作家さんから遠ざかっていきます。

オリジナルというのは、学びの極致にしかありません。自分のできる事を理解するまでは、誰かの真似で構わないのです。

一人称や三人称の視点についても、まずは好きな作家さんが多用している方を練習して貰えれば大丈夫。そのうち自分の得意な方が分かってきます。

前振りはここまでで、次の見出しから実際に練習をしていって貰いましょう。

実践・部屋を説明して見る

それでは地の文の実践。まず最初にして貰う事は、自分の部屋の説明です。

今あなたが生活している部屋が舞台の小説を書くとして、読者がその舞台を想像できるように説明してあげて下さい。

一戸建ての一室ですか?マンションのワンルームですか?広さはどれ位ですか?机はどんな感じですか?壁紙を含めた部屋全体の雰囲気はどんな感じですか?綺麗ですか?散らかってますか?

全てを書く必要はありませんが、その部屋の特徴的な部分を切り取り、相手が想像可能な情報を入れるように心がけましょう。たとえば以下のようなもの。

ここは6畳のワンルーム。ボロアパートの角部屋だ。金がないから余分な電気は付けておらず、常に薄暗い。部屋の真ん中には小さなテーブルが置いてあり、ノートPCが鎮座している。他に目につくものと言ったら、敷きっぱなしの布団と小説を詰めたカラーボックス、2着しか掛かっていないハンガーラックくらいだ。人がくることもないので、所々にゴミが転がっている。

初めは必要な情報を羅列していくのでもOKです。必要な情報ができったら、読みやすいように文章を整えてみましょう。

この時情報は「部屋の大きさ→部屋の雰囲気→一番目につく家具→……→主人公の生活的なもの」という風に、大きいものから小さいものへとフォーカスしていくと想像し易い文章になります。

自分の部屋を地の文で説明して見る

PICKUP

相手は自分より情報を知らないことを忘れない

自分の部屋を描写する中で、絶対に意識しなければならないことが1つあります。

それは自分は自身の部屋の事をめちゃくちゃよく知っている一方で、相手はあなたの部屋の事を全く知らないということです。

当たり前のことですが、意外に忘れてしまいがち。そしてこれは部屋の説明は勿論ですが、物語の描写でも同じことが言えます。

自分は物語の全容や設定、キャラの事などよ~く知っています。

一方で読者はあなたが書いた情報と、そこから推測できる情報しか知り得ません。情報をちゃんと説明しないと、読者は置いてけぼりを喰らってしまう訳です。

部屋の説明で足りていない情報がないか、今一度確認する
1日おいてからもう一度その文章を確認する

PICKUP

数字や色などを活用する

自分の部屋の描写をする時、読者との共通認識を利用する事を意識してみてください。

たとえば「広い部屋」と説明した場合、人によって想像する広さはバラバラになります。10畳くらいの豪華な寝室を想像する人もいれば、ホテルの大ホールを思い浮かべる方もいるでしょう。

一方で「15畳の部屋」と具体的な数字で説明すれば、広さは一発で伝わります。更に「15畳の正方形の部屋」「15畳の長方形の部屋」と言えば、より具体的に部屋の大きさや形が伝わるでしょう。

また「白い部屋」「青い部屋」といった色を使ったり、「PCのためにエアコンを効かせており常に寒い」「窓がなく日が差さないので、秋でも暖房を付けないと過ごせない」という温度を使ったりしてもと読む人が想像し易いです。

こういった数字、色、季節の肌感覚というものは、日常会話でも共通項になり、相手に伝わり易い表現。もちろんそれは小説でも同じです。

相手に伝わり易い数字や色などを文章に入れ込む

PICKUP

風景を描写する練習

自分の部屋の描写ができたら、今度は風景などの描写に挑戦してみてください。家の近くの風景でもいいですし、有名観光地の景色を描写してもいいでしょう。

フリー素材を適当に引っ張ってきて、それの描写をしてもOK。学校の小説を書きたいなら学校の風景、異世界転生を描きたいならファンタジーな景色を選ぶと良いでしょう。

また慣れてきたら人が話している画像を探してきて、対話式小説を書き、そこに地の文を足す練習もオススメです。

目についた画像や動画の風景を文章で説明して見る

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