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柊子 第9話

 「結婚か………」
 そもそも、さくらと紫郎が付き合っていた事に全く気が付かなかった。
 ふたりは学生の頃から付き合ったり、別れたりを繰り返していたらしい。
 それで、今回別れている時期だったものの、紫郎が一大決心の帰国後、何故か同窓会へ。
 そこで、男友達に指輪を渡す話をして、いい気分で酔ってその指輪を取られる。
 そして何故か指輪を渡す相手が私だと思った例の怖い女が、箱だけ私へ送りつけて来た。
 しかも、指輪はサイズ直しに出していて、(仮)の自分の指輪を入れてあったらしく、帰り際の誘いは、指輪を返して欲しければと言うものだった。
 特に大事にしていたわけでも無かったから、いらないと誘いを受けず帰って来たらしい。
 その結果、私だけが怖い思いしたと思うと腹が立つ。
 「ごめん、ごめん」
と緩い紫郎に反省はない。

 さくらとは、私の横でしか笑わないのが気になって、自分と付き合えば私がずっと一緒だぞと言ったらしい。
 その頃さくらは、家族と何となくうまくいっていなかった時で、
 「慰めて欲しくも無かったし、わけ知り顔で言葉を発してくる事にも嫌悪感しかない」
 いつもと変わらない私の無関心さに、それと紫郎のいい加減さにも救われていたと言う。

 後、かえでも紫郎か好きだった時期があって、自分の姉が付き合っている事を知って、私に八つ当たりをしていた様だ。
 「何でよ!」
 「ごめん」
 真剣に謝るさくらは許してもいいと思った。

 結婚後もさくらの部屋はそのままで、、紫郎もまた生活を変える事をしないので、明日には何処かに行くらしい。
 私は呆れて結婚しなくても…と思っていた。
 そんな私に
「帰る場所をさくらにしたんだよ」
 とヘラヘラしながら言う紫郎に、気持ち悪さを感じた。
 それでもさくらが時々私の所へ遊びに来て内容の無い話をして、自由で厄介な紫郎との腐れ縁も続いていく事に、ホッとしていた。


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