①やらずの
外は雨が降っている。
「おっかしいなぁ…」
「う…ん 何が?」
呟く声に起こされて、彼のひとり言に聞いてみた。
「……俺、晴れ男のはずなのに、お前といるといつも雨に降られるなぁと思って」
まだダルさの抜けない身体を起こして、小窓から外を眺める。
「いつから降ってるの?」
「ちょっと前?」
雨の音で起きちゃったと、何故か嬉しそうに言う彼。
「昼間暑かったもんね、私のせいじゃないよね」
「いや、いや、お前のせいだって」
はい?少し不機嫌さを出して詰め寄る。
「だって、花見の後帰ろうとしたら雨降ってきたし」
「あのね、花見って…」
散々他の人と花見してほっとかれた。
なのにうちの目の前が桜道だから、最後の花見とか言って急にきた。
もう葉桜だったのに…だから雨降ったんだよって言ってやりたい。
「それに、うっとしい雨が終わって晴れたから遊びに行こうって迎えに来た時も」
「うっとしいって、恵の雨なのに…」
しばらく雨で出掛けられなかったから、とか言って遊び歩いて最後にうちに来て…次の日から戻ってきた梅雨。
ニュース見なよ、まだ梅雨明けしてなかったのにと言ってやりたい。
「今日だって、夕立にあっちゃってさ」
夕立にあって近かったうちに避難しに来たんだよね。
この間買い物途中で見かけたよ、あなたのお気に入り可愛い後輩。
うちのご近所さんだったんだね…と言ってやりたい。
「夕立にあったからうちに避難してきたんでしょ?それってその直前まで会っていた人のせいじゃない」
そう言う私の顔をじっーと見つめて、ニコッと笑った。
「そっか、それはお前のせいじゃ無かったな」
きっと疾しい気持ちなんて微塵もないんだろうな。
そう思うとちょっとくやしい。
だから
「でもこの雨は………私のせいだね」
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