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短編小説✳︎青い朝顔 ❹ 握った手

まだまだ日が落ち切らない夕どき。
小夜のアパートの最寄駅改札で、雄介も甚平姿で待っていた。お互いいつもとは違う雰囲気。
「なんかさ、良いよね、こういうのも」
「そだね」
「浴衣とか持ってんだ」 
「母ちゃ……お母さんが正月に家帰った時に、持っていけば?って言ってくれて」
「ヘェ〜。似合ってるよ。可愛い」 
「あ、ありがと」

花火大会会場には、すでに仲間たちが
ブルーシートを広げて待っていてくれた。
だんだんと空も、濃紺に変わる。
合図が鳴り、次々と打ち上がる光の華たちに、目が釘付けになる。

それでもふと横を見ると、雄介の横顔。
甚平からは、分厚い胸板が少し覗く。
こんなかっこよくて優しい『彼氏』が出来て、東京に出てきた甲斐があったと、小夜は思った。

そして雄介も、自分の周りには居ないタイプの純粋で、可愛い小夜と出会えてよかったと、夜空を見上げる小夜の横顔を愛おしくみつめた。

フィナーレの連発花火が、夜空を焼く。
小夜の手を握る雄介は
「人多いから、はぐれるなよ」 
「わかった」と
小夜もぎゅっと握り返した。


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