見出し画像

小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第16話


結里子ー本当の想い

ケイが、陸くんに付き添うアキコさんを
部屋に呼びに行っている間
わたしは、大地さんに聞いてみた。
「単刀直入にお聞きしちゃいますが
大地さんはアキコさんを、どう思われてますか?」
「え?これはまた、本当に
直球だなぁ。ははは。じゃあ直球で返すよ。……うん。とても好きだ」
「うふふ。いいですね!結婚しませんか?」
「うーん。僕は一度結婚して陸もいる。
まだ、結婚した事ないアキコさんに、僕からプロポーズなんて
出来ないって思っているんだ。
彼女が幸せになってくれる道があるなら
そっと見守りたい」
「でも、アキコさんは
大地さんを好きですよね?間違いなく」
「好意を持ってくれているのは
何となくわかってる。でもね
やっぱり,難しいと思うんだ」
「それは夢さんの事ですか?
陸くんの事ですか?」
「どっちもかな?
さっき陸が、アキコさんにしがみついて
『ママ』って言った時
夢も、陸からママって
言ってもらいたかっただろうなって
思ってしまうんだよね。
それに、他人の子を育てるって
アキコさんには、大変な負担になる。
彼女が普通に結婚して、母親になって
幸せに暮らした方がいいんじゃないかと
思うんだ。やっぱり」

ああ、大地さんも
同じなんだ。
わたしが、紘太とケイとの間を
揺れ動く気持ち。
分かるだけに、気持ちを出せない
私もいた。

大人達がほとんど
食事を平らげた頃
陸くんも目が覚めて
リビングにやってきた。

私の部屋からチョビも連れてきたら
すごく喜んでくれた陸くん。

楽しそうな子供の姿に
そこにいる全員が
笑顔満開だった。
昼間の怪我も、本当に大丈夫そうで
良かった。

食べて,遊んで
夕方にはまた、疲れて眠る陸くんを
抱いて、大地さんが帰った後
部屋の片付けをしながら
アキコさんの横顔を見つめてしまった。
きれいな瞳の横顔に
大地さんの思いを伝えるべきなのか?
その時、視線を感じたのか
アキコさんから話しかけてきた。

「結里子ちゃん、今日は本当にありがとう。楽しかったわ」
「陸くんと仲良くなりましたね。
本当のママみたいでした」
「私も、ママになった気分だったわ」
「アキコさん、本当に陸くんのママになるとか、考えた事ありますか?」
「あら、やだ。急にどうしたの?」
「アキコさんの気持ち、わかりますもん」
「え、え、ヤダ!もう!年上を
からかわないで。」
「アキ姉は、わかりやすいんだよ。
俺も、って言われるけど」
ケイも、食器を運びながら口を挟む。

アキコさんは続けた。
「想いが募るのは、嘘じゃないわ。
会う度,素敵だなって思うし
陸くんも可愛いし。
でも、現実には
簡単じゃないってわかってる。
夢さんの代わりに、なれないだろうし
きっとずっと、大地さんは夢さんを
愛し続けているんだろうなって。
心で生き続ける人には、勝てないもの」

するとケイが
「アキ姉の気持ち、不安なのもわかるよ。
でも、多分大地さんも
同じくらい不安に思っているんじゃ
ないかと思うよ。
漠然と不安でいるよりも
思うこと話し合って
二人で解決していけば
いいんじゃないかな?」

そのケイの言葉にハッとした。
わたしは大地さんと同じだ。
不安に思う気持ちを
素直に話してみる事も大切なのかな?


#創作大賞2023
#恋愛小説
#心で生き続ける
#本当の想い

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?