小説✳︎「月明かりで太陽は輝く」第32話
結里子ーあと一週間
引っ越しまで、あと一週間。
あの後、何も言わず付き合ってくれたケイ。
ちゃんと私の言葉で伝えなきゃ。
最後にわがまま言って、ケイのカルボナーラをリクエスト。私の部屋で作ってもらい、二人で食べる。
美味しくて、嬉しかったけど次にいつ食べる事が出来るのかなと思うと、寂しさが募ってくる。
「ケイ。この3ヶ月。待ってくれて
ありがとう。私の今の気持ち。
伝えようと思うの」
「うん」
「私は、ケイが好き。ううん、大好き。
一緒にいると、太陽のようなケイの温かさに
まどろむ幸せを感じてる。
でも私は、月みたいなもの。紘太がいなくなって生きていくのも辛いし、心壊れて冷え切っていた私に太陽のケイが、光をくれたおかげで何とか前に進めた気がする。
なのに私は、ケイの為に、何もしてあげられない。いつも守ってもらうだけ。
その上
私はキャンサーサバイバー。
いつ再発するか分からない。
転移があるかも分からない。
この先、いつまで長生きできるかな?
とか考えてしまう。
そして、時々紘太の事も思い出す。
こんな私じゃ、ケイを幸せになんて出来ない。
それよりも健康な女性で、ケイが好きで、子供も普通に望める人。
昔の彼を忘れられないなんて無いただ一人
ケイだけを想ってくれるような人。
優しいケイなら、そういう人に
巡り会えるんじゃないかと思うの。
だから……
その後の言葉が出せないまま
私は、俯いた。
黙って聞いていたケイは、透き通る瞳で
じっと私を見つめる。
震える私の肩に手を置いて
微笑みながら私の顔を覗き込む。
「リコの気持ちと言いたいことは分かった。
今度は僕の想いを、聞いてくれるかな?」
穏やかな声でささやく
ケイの声は、心を解いてくれる。
足元では、チョビが二人を見上げていた。
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