【つながる旅行記#193】リタとロイドと天王寺動物園
前回は天王寺動物園で思ってもみないコアラ知識を深めることが出来た。
では引き続き動物園を巡っていこう。
いきなりだが『ドリル』の登場である。
えっ……『マンドリル』じゃなくて、『ドリル』って動物が居るの……?
ドリルはマンドリルと比べると顔の色が黒だけでシンプルな感じ。
しかも日本だと天王寺動物園にしか居ないらしい。
激レアである。
色々なサルを見つつ、大都会大阪とは思えないジャングルを歩く。
こういう非日常感が味わえるのも動物園の良いところだ。
すると……
なんとまたサルが居た。(銅像だけど)
服を着ているし、パンくん的なマスコットだったのだろうか?
しかしなんだか、楽しげな雰囲気ではない。
まるで落ち込んでいる相方を慰めるかのような……?
そう、この銅像には悲しい由来があるのだ。
あっ、辛い話を見たくない人は飛ばしていただいて……
この銅像はチンパンジーのリタとロイドをかたどったものだ。
1932年に大阪市動物園(天王寺動物園)にやってきたリタはとても賢く、数々の芸を覚えてあれよあれよと天王寺動物園の超絶人気チンパンジーとなり、年間入園者250万人という大記録を打ち立てた。
リタは「リタ嬢」と呼ばれるくらいの凄い人気で、日本中の動物園がチンパンジーを手に入れようと動き出すレベルのインパクトがあったのだ。
そんなリタとロイド(花婿)だったが、第二次世界大戦が始まると、軍服を着せたり、防毒マスクを付けたりと、その人気を戦意高揚のために利用されることとなる。
その後の戦局の悪化によって動物たちの餌が足りなくなると、ロイドとの間に出来た子供は死産となり、次の日にはリタも死亡してしまう。
残されたロイドに対しては、「ロイド?外来語は排除だ!!」というお叱りを受け、「勝太」に改名させられるなんてことも。
……。
加えて本土空襲が始まったことで、動物園は空襲で動物の檻が壊されたときのことを考え、動物を処分しなければならなくなった。
有名な『かわいそうなぞう』は上野動物園の話だが、当時は日本中の動物園で同じようなことが行われていたのだ。
(『かわいそうなぞう』にはかなりの創作部分が含まれるのはさておき)
天王寺動物園でも餌の不足や暖房の燃料不足で動物が死亡したり、毒餌などによる処分が行われることとなった。
(今も毎年夏には「戦時中の動物園」という企画展を開催し、戦時中に処分された動物たちの剥製を展示している)
そして天王寺動物園は、リタに芸を仕込んだことで戦争の広告塔に利用されたという経験から、動物に芸を仕込むことは一切行わなくなったのである。
……まさか銅像からこんな重い話につながるとは。
この旅行記ではわりと戦争関連のあれこれに出会いがちではあるが、金属供出といい動物の処分といい、本当に極限状態だったんだなあと再確認した。
そして実は現在起きているウクライナ戦争でも多くの動物園が運営が困難な状況にあり、攻撃や略奪を受けているという情報もある。
まだ救いがあるのは、世界中から支援の手が差し伸べられており、かつての日本のような動物の処分は行われていないことだろうか。
(静岡・伊豆の民間動物園『iZoo』にも、ウクライナからアルマジロトカゲが避難してきたらしい)
なんだか色々と考えさせられてしまった今回の記事。
しかしこういうものも含めて知識を吸収していかねば。
次回へ続く……!
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