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【つながる旅行記#53】石鎚山敗走記

旅行を開始して始めての百名山への挑戦は、失敗に終わった。

さあ、下山を開始しよう。

せっかく来たのにもったいないという気持ちがなかったわけではない。
だが、いざ下山を決めると気が楽になったような気がする。

まるで夏休みの宿題を諦めたときと同じような……。

いやこのたとえはどうだろう……?

そして案の定、気をつけながら下山しているのにめちゃくちゃ滑る!

というか滑るどころか既に2回コケている。

雪のおかげでコケても尻にダメージはあまりないのだが、
やはり下山の際の危なさは想像以上だった。

今回自分はまだ2時間も歩いていないので、足にガタが来ているわけでもない。それなのにこれである。

……もし山頂まで行っていたら、下山時にはどうなっていたことか。

決して崖側に転んではならない

危険な階段ゾーンを終えて、やっと余裕が出てきた。

根じゃな……?
なんかもう苔を撮る余裕がある

歩いた先に、最初にあった鳥居が見えた。

ああ、戻ってきたのだ。

頂上まで行かれない方は、ここでお参りください

看板には「頂上まで行かれない方は、ここでお参りください」とある。
まるで今の自分のためにあるようなシステムだ。

山頂にはいけなかったが、ここでお参りをした。

……少しだけ気が楽になった気がする。


鳥居の地点からカメラでズームしていくと、石鎚山の登山道が見えた。

中央左の鳥居の上に伸びるのが鎖場

いや死ぬだろこれ。


これを登っていく修験者&登山者ヤバすぎない?

山頂の方も見てみよう。

山頂の鎖場

いやもう殺しにかかってるだろ。


冬はもとより、夏でも生きて帰れる気がしない。

もはや90度じゃんこれ……

あんな鎖を登るの……?(中央左)

しかしこんなところに何百万もの人が訪れているとは……。
そりゃ滑落する人も出てくるわけである。

うん、やっぱり来るとしても夏だな。


そして今更な話になるのだが、
実は登山者は自分おじさんの他にもう一人いた

それは元気のある若者で、ヒッチハイクで日本を巡っているとのこと。
石鎚山の存在を知り、せっかくだからと登ってきたという。

装備の詳細はわからないが、履いているのは長靴だった。

ヒッチハイクの旅で長靴を履いてるのもおかしな話だ。

そういえば、山頂駅にレンタル長靴があったような……?

ロープウェイの山頂駅
「長靴レンタル200円」

そう、彼はきっとレンタル長靴を借りて石鎚山を登り始めたのだろう。

そしてそんな彼は、自分が引き返した地点よりも先へと進んでいった。

大丈夫だろうか……?

またポスターが思い出される。

木村さん「長靴は滑ります。アイゼンは必須アイテムです!!」

(その後、若者の滑落者のニュースはなかったので、大丈夫だったのだろうと思いたい)

この階段が見えたら、もうスタート地点だ
神門

戻ってきた。
スタート地点に。

やっと安心感に包まれた。

ちょうど昼時だ。
食堂に入ろう。

山の幸たっぷりのうどんを頼んだ。

へへっ……

心に染みるわ……。


安堵と敗北の味を噛み締めたのだった。


ロープウェイ乗り場を目指して歩いて行く。

見晴らしのいい広場についた。
ああ、やっぱり山は良い。

瀬戸内海もうっすら見える

ロープウェイ乗り場に行くと、まだ出発まで時間があることがわかった。
体力は余っている。暇つぶしに周囲を探索しよう。

近くにスキー場があるらしい。

橋を渡る

うん、スキー場だ。

思えばスキーは子供の頃に2回くらいやっただけ。
想像以上にガッチガチな靴に驚いた記憶がある。
そしてその窮屈さがちょっとアレだった。

今後の人生でスキーをすることはあるんだろうか。


スキー場での暇つぶしを終え、出発の時間が来た。
ロープウェイに乗って下に降りる。

行きでは見ていなかった下の景色を楽しむことにする。

終点

戻ってきた。

時刻は13時。
本来なら、ここには夕方に来ているはずだったのだが……。

ロープウェイ駅の裏にある池を見に行く。

「はは……引き返してきちゃったよ……」

もはや石鎚山に心躍らせていた人間は居なくなり、
コイに話しかける危険な男と化していた。

本当にこれで終わりでいいのだろうか?

このままバスに乗り、ただ西条に帰るだけで、本当に良いのか?

体力は十分余っているのだ。

そうだ、この地を自分の足で歩いてみよう。


バスでさらっと流してしまった石鎚の風景を、
自分の足で歩き、しっかり目に焼き付けよう。

これが自分の、今回の石鎚山の楽しみ方なのだ!


……そういう感じにしよう。



※敗北を拒否する自己防衛かもしれない


☆次回へ続く☆


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