【つながる旅行記#2】初めての稚内。貴重な1日の休日をどう過ごすか part.2
ではさっそくスマホでルートを確認する。
位置関係は以下のような感じだ。
シティ稚内店から開基百年記念塔までは7.3キロ。
しかも地図を見るに、塔は高台にある。山登り感がすごい。
足は5キロ歩いた現時点でダメージが来てる感じだけど、本当に歩くのか……?
いや、すでに「休日」は「運動」に変わっている。
もう明日の仕事なんてどうでもいい。歩こう。
(新入社員のしていい発想ではない気もするが)
せっかくなので古本屋に寄ったり、西條にもちょっと入ったりして塔へ近づいていく。足はそこそこ痛いが、全然歩けそうな感じだ。
人間の足はそういうところがある。
そう、これはかつてニートだった頃の話なのだが――
(今からめちゃくちゃ脱線する)
ニートだった当時、もう本当にどうしようもなく感情が抑えられなくなって、夜に東京から富士山駅までおもむろに電車で出かけたことがあった。
持っていたのはPSVitaとリュックくらいのもので、当時の自分はスマホも持っていなかった。
着いた頃にはもはや真っ暗。街灯もどうにも頼りない。
しかも季節は1月だ。そこそこ着込んでは来たものの、普通に寒い。
もうホントになんでこんな行為に及んだのかもわからない。
電車代も馬鹿にならない金額だ。
自殺願望の発露なのかなんなのか。
(ほんとになんだったんだろう……?)
それはともかく、来てしまったのは仕方ないので、駅から河口湖を目指して歩き始めたのだった。(距離4キロ)
当時スマホのない自分が道案内で頼ったのは、PSVitaの「モンスターレーダー」というゲームだった。
なんとこのゲームには日本地図が入っているのだ。
そして自分のPSVitaは3G-GPSモデルである。(覚えてる人いるのか?)
3Gの電波は全然入らなかったが問題ない。本体のGPSにより、位置は画面上にしっかり示されるのである。
しかし河口湖に無事到着したはいいが、深夜だから暗いわ、当然お店は1店舗も開いてないわでなんにも楽しくなかったので、自分は山中湖へ向かうことにしたのである。
山中湖へは12キロ、約3時間の道のりだ。普通に足が死ぬ。
しかも寒さはどんどん増していく。
当たり前だ。1月の深夜なんだから。
その後ひたすら歩いて山中湖へ着く。もう足もガタガタである。
そうまでした山中湖で出迎えてくれたのは、丸っこい白い物体たちだった。
(後にそれが白鳥と知る)
その後、タクシー会社が動き出す朝になるまで歩き続けることにした。
止まると凍えそうになったから。
近くのコンビニで本でも読んでればいいだろうに、「コンビニに長居するのも申し訳ない」とかいう意味不明な理由で当時の自分は外をうろついたのだ。
そして朝になり、
タクシーに乗り、
富士山駅に戻り、
東京へ帰った。
……なんなんだこの無駄遣い。
で、問題はその後の足だ。
恐らくあの日は合計で30km以上は歩いたことだろう。
日頃ろくに運動してないのに。
案の定、その後一ヶ月以上続く足の痛みに悩まされることになる。
完全にオーバーワークで筋肉がボロボロになったのだろう……。
この経験で、ろくに運動してない人間でも無理やり長距離を歩けることが体でわかった。
しかし同時に、そういうことをすると数ヶ月に及ぶ痛みに苦しめられることもよーくわかった。
もう二度とあんな無理はしないぞ!!
……というわけで人間は頑張れば長距離も歩けるし、その後は苦しむことになるのである。
果たして今日が終わり、明日になった時、自分の足はどうなってしまうのだろうか。
まあでも合計20kmくらいならまだ問題ないかなとも思う。
役所の裏手の坂を登っていく。
この先に行けば塔が見えてくるはずだ。
坂をどうにか登っていくと階段が見えた。
この先に行けばきっと塔が見えるはずだ。
いい加減しんどいが足を動かす。
登りきった先には……?
階段を上がると、お墓だった。
塔も見えたけどまだ距離がある。
あとなんだか日も落ちて暗くなってきた。
やめてくれ。いま自分は墓地に居るんだ。
とはいえ計画をふいにするわけにもいかないので塔を目指すことにする。
なんだか道路端の芝生に目をやると、やけに動物のフンがある。
丸っぽいものはシカだろうが、しっかりとした形のものも混じっている……犬だろうか?
いやしかし散歩で来たにしても落ちている量が多いような……?
まさかヒグマ……なわけないか(笑)
(※この辺りはヒグマが出てもおかしくはない)
そんなことを考えながら坂を登っていくと、唐突に短歌ゾーンに突入した。
文芸を楽しんでいたら頂上へ到着。
近づいてみるとなかなかの迫力だ。
ちなみに中身は博物館的な施設になっている。
ただ、もう時間的に閉まってるはずなので今回は入らないことにした。
また今度来た時に見学しよう。
周りを歩いてみると色々他にもあるようだ。
展望エリアから稚内市を望む。
今日歩いてきた道がどれなんだか正直よくわからないが、稚内市について少しは詳しくなれた気がする。
買い物する場所には困らないことも分かったし、外食する場所もいくつか目星はついた。
実際の所、自分は都会よりもこれくらいの雰囲気の方が好きかもしれない。
まあ冬の稚内を経験したらこの意見がどうなるかはわからないけど、少なくともこの落ち着いた感じは田舎育ちの自分にマッチする。
そして海をこんなに広く感じるのも始めてだ。
東京湾くらいなら見たことはあるけれど、比較にならない何かを感じる。
広大な海が近くにある暮らしも良いものだなぁ。
植物もなんだか様相が違うし、改めて本当に遠くに来たなと思う。
こんな人生になるとは思わなかった。
……さて、このあとはどうしようか。足はまだまだ行けそうな感がある。
まだ多少は明るさもあるし、帰る道すがら少しだけ寄り道をするのも良いかもしれない。
そういえばここに来るまでの坂を登る前に曲がり角があった。
たしか看板に書いてあったのは「氷雪の門」だったか。
どんなもんなのか見に行こう。
どんな門なのか。
……そんな感じで。
part.3へ続く!!
サポートには感謝のコメントをお返しします!