【つながる旅行記#9】in函館 よーし!いまから恵山に登ろう!!(脳死)
8月。
自分はまた函館にやってきていた。
北海道で働くことになるなんて思っていなかったニートのころ、東京の安マンションで暑さに耐えながら、北海道を旅する人の動画を見て、「北海道は夏は涼しいから良いよな~」なんて考えていたのを覚えている。
実際に北海道に来て思ったことは、夏は普通に暑いということだ。
いやもちろん場所によるのだが、函館は普通に暑い。
それが始めての函館の夏に自分が抱いた感想だ。
そんな函館で今日何をするのかといえば、登山である。
そう、函館といえば函館山。
多くの観光客が頂きを目指し、ロープウェイもあるし、車でも徒歩でも行ける。市民に親しまれている山だ。
だがそこには行かない。
今回行くのは恵山(えさん)。
恵みの山と書いて恵山だ。
場所はというと、函館の東の果てにある。
函館駅から恵山の麓の登山口に行くまでは、距離にして約50km。
バスで2時間である。
そう、以前北海道駒ヶ岳に登頂(頂上じゃないが)したことによって、自分の中での登山熱は完全に息を吹き返したのだ。
紋別では紋別山に登ったが、あれはもう舗装された道路を歩いていただけなので山感は薄かった。
実はもうすでに函館山にも登頂済みだが、紋別山と同じくらいの標高の函館山は、しっかりと登山してる感がある山だ。
しかしいずれも300m級。そろそろもう少し高めの山へ行きたい。
そう思ってしまったのである。
どうやらまた休日は体を休める日ではなく、疲れる日になりそうだ。
というわけで函館駅からバスで恵山登山口に到着した。
今回は山登りをして、その後バスでまた函館に戻ってくる日帰り登山。
バスは片道2時間かかるのだ。
当然、出発は早い時間でなければならないのは言うまでもない。
真っ当な頭をしている人間ならそうする。
しかし自分は足りていない人間だった。
現在の時刻は15時20分。
これから山を登り、降りて、バスに乗って帰る工程があるのに、15時20分。
残念ながらバスの本数について気にする知能もありはしなかった。
そもそも田舎の実家に居る頃はバスに乗らなかったのだ。
電車すら乗らなかった環境なのだから当然だ。
唯一知っているのは、一人暮らしを始めてからの東京のバス事情のみ。
「バスなんて1時間に1本はあるでしょ!」
この函館から遠く離れた東の果てで、そう思っている自分が居た。
さて、さっそく歩き始める。
なにせもう15時半。
時間に余裕などないのだ。
(やけに写真撮りまくりだけど)
目の前にはもう恵山が見えている。
恵みの山と書くが、茶色い山だった。
っていうか今から歩いてあの頂上に行って、ここへ帰ってこれるのか?
いや、登山をする前にはみんなそう思うものなのだ。
しかし歩いていればたどり着く。
そういうふうに出来ているのだ。
(低山しか踏破していない人間の意見)
さて、なんで今回こんなに舐め腐った登山を決行しているのかというと、実は恵山は標高でいうと600mくらいなのだ。
つまり、函館山や紋別山の2倍くらいの負荷だと考えた。
さっと行って戻ってくればどうにかなるだろうと。
普通に考えるとそれら300mの山の上り下りでも2時間かかっている。
「それを2倍にしたら4時間以上かかるのでは?」なんてことは小学生でもわかりそうなもんだが、自分は脳が停止していたのだろう。
出発も昼。登山口でもう15時半。
これから登ったらどんなことになるか、想像がついていなかったのだ……。
ダイナミックな光景が広がっている。
夏の緑の鮮やかさと、恵山の土の色のコントラストが相まって素晴らしい。
同時に今からあの頂上行けるのか…?とやっぱり思ってしまう。
前半で紋別山の舗装された道路が云々と言っていたが、なんだか恵山もずっと舗装されている。
これはまさか、北海道駒ケ岳と同じく、車で来るべき山なのか……?
出発して30分。
思えば海と同じ高さから登ってきたわけで、かなり位置エネルギーを稼いだものである。
眼下には小さくなった建物が見える。
そして目指すべき恵山の茶色い頂も。
と、ここで1本目の水が終了した。
夏の坂は尋常じゃなく汗をかく。
行きの道路を歩いてるだけで飲み干してしまうとは。
果たして持ってきた飲み物だけで足りるのだろうか?
この先自販機はあるだろうか?(無い)
展望台に寄り道する。
現在時刻は16時なのだが、なぜか余裕である。
そういえば恵山は青森の恐山と対になっている霊場らしい。
そう、シャーマンキングで多くの人が履修済みであろうあの恐山だ。
聖地巡礼も兼ねて、いつか行く日もあるのだろうか。
うっすらとした青森も見たところで恵山に向かう。
そう、自分は登山をしに来たのだ。
歩いていくと、今までの緑の景色から一転して、白い山肌が姿を表した。
近くには駐車場があった。
うん、まあそうだよなと思う。
大半の人はここまで車で来て、それから登山をはじめるんだろう。
わざわざ歩いてくる物好きは自分くらいしかいない。
しかしこうやって歩いてみると、恵山側は荒々しい岩肌と噴気が上がる怖い雰囲気だが、逆側は一面の緑に包まれた山で、牧歌的な雰囲気すら感じる。
職場の人の話では、恵山は時期によってはツツジが素晴らしいとのこと。
なるほど、恵山は荒々しさと素朴な優しさを同時に味わえる山なのだ―――
登山の総まとめみたいなことを言ってしまったが、登山はここからが本番。
今までは遊歩道を歩いていたに過ぎない。
ここからいよいよ山頂を目指すことになる。
果たして登頂出来るのか、そして無事に帰れるのか。
次回へ続く……!
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