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柊葛帯刀

 師匠の下での修行を初めて一月経って、俺は生まれて初めて生き地獄という言葉の意味を知った。なんで弟子入りなんぞしたのかと毎日後悔せずにはいられなかったが、雑念を持って修行に当たれるほどの余裕はなく、注意一瞬怪我一生という言葉なんて生温い、一瞬の油断が命を刈り取るような修行に明け暮れていた。

 今日もまた御山から命からがら帰ってきて、広大な庭の一角で力尽きて倒れ伏した。全身はズタボロ、半世紀一度も洗わずにいた雑巾のような有様で、もう指一本動かない。亡くした右腕の感覚を研ぎ澄ます修行とのことだが、長時間、右腕を使うと精魂共に尽き果ててしまう。右眼も熱を帯びたようにずっと痛んでいた。

 師匠の御山には人の霊ばかりでなく、精霊というか、妖怪というか、神様というか、そういう得体の知れないもので溢れかえっていた。もちろん、その中には邪悪なものも入り混じっていて、俺はそんなのからとにかく一日中逃げ回るのだが、どうにもこうにもならない時には恐ろしい姉弟子が助けに入る。いや、その姉弟子の方がある意味では危険なのだが。

「どうしました? 千早。そこはお布団ではありませんよ?」

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