明太子パスタ 嗣人レシピ
私は九州は火の国、熊本県に生まれ、炭鉱の町荒尾市で育ち、いずれは故郷に錦を飾ろうと決意して大学進学を機に地元を離れたが、大分県は別府市のお湯に浸かる内に、固い決意はお湯に溶けきり、ひと目惚れした彼女(現在の妻)と一緒になりたいが為に福岡県で就職し、そのまま福岡県民として生きていくことになった男だ。
地元の友人たちはライバルである福岡県へ越していった私を「裏切り者」「非県民」と飲み会の度に罵るが、これについては釈明のしようがない。しようがないので開き直って福岡の良いところを私はさんざんアピールする。やれ利便性が良いだの、都会は最高だの、空港へのアクセスが良いだのと話しては、また後ろ指を指されるのだ。
そんな福岡県で暮らし始めて今年で十五年、冷蔵庫の中にはほぼ常に辛子明太子が我が物顔で居座り、どこを探しても馬刺や辛子蓮根は見当たらない。元来、明太子の大好きな私は二十以上のメーカーや個人店の中から気に入った店を見つけ、ヘビロテしている。切り子という皮が破れてしまったお徳品などは安価で求めやすく、県民の大きな味方になっていた。
そんな私が愛してやまない明太子を使った料理がある。明太フランスパンや鰯明太など、明太子を使った料理は数あれど、自宅で簡単に作れ、かつ間違いなく美味い麺料理がある。そう、明太子パスタだ。
私の描く夜行堂奇譚の大野木や、神様シリーズの菅原道真様も愛してやまないレシピだ。八百万の神々も食べれば絶賛なさるだろう。機会があれば是非作って食べてもらいたい。神棚に上げることも考えたが、妻に叱られるのでやったことはない。妻は不敬だというが、どうだろうか。
作るタイミングはいつでも良いと思われるだろうが、できれば休日の昼間に試してみて欲しい。別に夕食に作ってもいいのだが、私の明太子パスタは休日に一息つくためのものだ。おしゃれなパスタ屋に行かずとも、十分に美味しいパスタを家で食べたぞ、という満足感も味わってもらいたい。お気に入りの音楽を流しながら台所へ立つと尚良い。お酒が強い方は飲みながら作ってもいいだろう。私のようにアルコールを摂取すると、たちまちリトマス試験紙のように赤く顔色が変わるようならやめた方がいい。
①まずはお湯を沸かす。お湯の量はたっぷり。
塩は塩分過多になるのでいらない。腎臓に自信がある人は自己責任で。
②スパゲティ以外の材料をパスタ用の皿に開けて、混ぜ合わせる。
洗い物が気にならない方は、オシャレなボウルで混ぜて。
スプーンで切るように混ぜる。バターは溶けなくていいので、顆粒だしが目立たなくなるように。
③パスタは表示時間だけ茹でて水気を切り、オリーブオイルをひと回し。
ソースの上に熱々のパスタを乗せて、混ぜ合わせる。
十分にソースが混ざったら、好きなだけ焼き海苔をちぎって乗せる。
切り方は好みでどうぞ。
④明太子の神に祈りを捧げたら、完成。
このレシピの肝は明太子ではない。もうある程度美味しいならなんでもいい。大事なのはバターやレモン汁、顆粒だしだ。これらが用意できなければ作ってはいけない。
味に関しては、自分の舌で確認して欲しい。
私は今までの人生で間違いなく百人以上の人にこのパスタを食べて貰ったが、美味しくないと言ったのは約1名だけ。明太子が嫌いな、たらこ唇の友人だけだ。
ぜひ試して欲しい。
明太子の量もそれほど必要ない。
その辺のパスタソースよりも遥かに美味い筈だ。
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