フォローしませんか?
シェア
嗣人
2020年5月17日 13:58
亡くなった祖父は戦後の動乱期に財産を成した人で、田舎とはいえ屋敷もかなり大きく、私が幼い頃には住み込みのお手伝いさんが何人もいたりした。当然、遺産も多いので、父たちは相当に揉めるものだと考えていたが、祖父はきちんと遺産を均等に息子たちに分配し、膨大な量の蒐集品も亡くなる前に売却してしまっていたという。抜け目がないというか、流石の采配に親族一同驚いたものだ。 その為、通夜も穏やかに進み、久しぶり
2020年5月19日 13:58
急に降り出した天気雨から逃れるように、私はとにかく軒先へと飛び込んだ。 路地裏へ入り込んだのが間違いだったのか、古い武家屋敷が建ち並ぶこの町は、裏路地があちこちで入り組んでいて思った方向へ進むことが中々できない。こんなことなら近道など無理にしようとせずに、大通りを歩いていくべきだった。 若い頃ならいざ知らず、還暦を翌年に迎えた今の齢となっては自らの体力に過信すると痛い目に合う。「しか