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ポケモン第五世代の想い出 スカイアローブリッジの向こうに

#心に残ったゲーム

 ポケモンは第五世代……ブラック・ホワイトとそれに連なるブラック・ホワイト2が一番好きだ。発売当初は中高生で自由時間が沢山あったというのもあるが、良くも悪くも中二な独特な世界観、殿堂入りまで新ポケモンのみ、シリーズ初の続編、カミツレ・フウロ・メイの黄金女性キャラクター、夢特性の段階的な解禁、雨砂天候に受けループに対面構築に積みサイクルにレパルガッサTODに……カオスすぎる対戦環境、などなど、その魅力には枚挙にいとまがない。ポケモン対戦にガチで嵌ったのは、この環境が最初で最後だった。色々な意味で、僕にとっては特別な一作だ。

 だが、第五世代で一番心……もとい「耳」に残っているのは、ヤグルマの森を抜けてヒウンシティに向かう間に掛かる大橋梁、スカイアローブリッジのBGMである。次点で育て屋のある3番道路。

 何故? と問うのは世界で最も愚かな質問の一つだろう。ポケモンと言えば孵化厳選、孵化厳選と言えばポケモンである。理想個体を夢見て、廃人は今日も走り続ける、卵を割り続ける。ジャッジをし続ける。孵化厳選とは果てなき夢であり、ある種の快楽を伴う拷問だった。スカイアローブリッジを往復し続けたあの日々は、人生で最も無益であるがゆえに、折角入った進学校で無気力化していた学生に「何かに熱中した記憶」を与えてくれた。

 やがて乱数調整を覚え、6Vメタモンを入手してからも橋を往復する日々は変わらなかった。寧ろ理想の個体を狙える分、更に確度が求められた。何十年何日何時何分何秒起動、などと、「地球が何回回った時」にも負けらず劣らずの精度でDSを起動し続ける姿は、周囲の人間にはさぞかし奇異に映ったことだろう。色違いや性別、夢特性……。拘りの幅は更に広がっていった。思えば何と戦っていたのだろう。

 スカイアローブリッジの風を切っていく音、ライモンシティへ行くためのウルガモスの空を飛ぶの鳴き声、メニュー画面を開く操作音……全てが耳朶に沁みついて離れない。あのゲームに熱中していた日々は、透明な澱が降り積もるのをただ傍観しているかのような無気力な毎日に、細やかではあったけれど、彩を添えてくれた。恐らくゲームにあそこまで嵌まることは、後にも先にもないだろう。

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