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maki
2022年1月29日 23:28
1.コーヒーカップについて僕の横で、藤井がまた唐突に話し始めた。「奇妙な話だと思うだろうけど、うちの図書館には本というものをろくに読んだことのない連中しかいないみたいなんだ。」僕は一瞬藤井の方を見て、適当に頷いてまたパソコンに視線を戻した。「先月の小説はかなりできがよかったと自分でも思う。しかし連中俺の小説なんて読んじゃいないんだ。副部長の書いた気味の悪い恋愛小説に夢中なんだよ。」僕が
2022年1月16日 00:41
0.プロローグキッチンでは、嫌なことばかり考えて、嫌なことばかりを思い出した。ちょうどニ年前、つまり一昨年の夏に彼女と別れた。無論彼女のことは愛していたし、彼女も僕のことを愛した。それでも別れてしまったのは、それこそどうしようもない話だった。単純さが故に言葉にできない複雑な事情なんて、辺りを見回せば案外そこかしこに散在しているのだ。彼女と別れたその日に、深夜のキッチンにやけに白い照明を灯