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小豆島で本屋さんを始めます②

念願の小豆島暮らし。
地域おこし協力隊として様々な人と知り合いつつ、小豆島での暮らしを満喫しています。

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小豆島は晴天が多く、海も山も近いため、マリンアクティビティや山登りなどを思い立ったらすぐに楽しむことができますし、神戸・姫路・岡山・高松へと向かうフェリーがあるので、買い物に行こうと思えば行ける(船で街に向かうという非日常感を味わえます)ので、そこまで不便を感じません。

フェリー

何より、小豆島に来てあらゆる年代の人と仲良くなりました。
友達の年齢は2歳~80歳代と、ほぼ全年代の人と遊ぶ機会があります。

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こうした交友関係の幅広さも都会では絶対に味わえない事だよなぁ…と日々感じています。


本と出会える場所が欲しい

そんな中、少し不満を感じている事が…。
それは本を味わえる場所が島内にほとんどないという事。

もちろん本屋さんは島内に数軒ありますし、図書館もあります。

ただ、本屋さんに置いてある書籍は基本的にコミック・文庫・一般書に雑誌がほとんどで、僕の好きな自然科学・人文書といった専門書や海外文学、児童書はほぼありません。

品揃えに関しても取次の配本にお任せしてるかな…?といった物が多く、基本的には今月の新刊や最新刊のコミックが置いてあることが多いので、あまり話題になっていない漫画や専門書を好む自分としては欲しいものが島内で手に入らない…。

図書館は約15万冊の蔵書数を誇り、香川県内では県立図書館を除くと丸亀市立中央図書館、観音寺市立中央図書館に次いで3番目の蔵書数なので、町立の規模としてはかなり大きく立派な図書館です。
ただ、新刊の入荷は文芸書がメインであり、中々専門書の新刊は入っていない印象です。
(町史など資料調査でめちゃめちゃお世話になっていますが!いつもありがとうございます!)

こんな感じで、島内では自分の欲しい本が中々手に入らないのはもちろんのこと、本屋さん巡りの醍醐味である未知の本との出会いが少ない、という現状があります。


”本を読む時間”を作りたい

また、島に移住してきた本好きな人と話していると必ず出てくるのが「本を読む時間が減った」問題。
移住するまでは通勤退勤などの移動時間に本を読んでいた人が多かったのですが、小豆島に来ると通勤が車になり、結果本を読む時間がなくなる人が続出。
これはどうしようもないのですが、都会にいた時は仕事終わりにカフェなどで本を読んでいた人も、島内で遅くまでやっているカフェがない(大体18時くらいには閉まります)ために本を読む機会がなくなっている、とのこと。

ここに関しては現在島内の様々な場所で本を貸して読んでもらうイベントを開催し、読書時間を楽しんでもらえるように頑張っている所です!(※1)

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本と出会える場所、本を味わえる場所を作る

というわけで、都会と同じように本を味わえる環境が小豆島の中にはないのでした。
本が好きで好きでたまらなくて、常に身の回りに本がないと不安になるくらい好きで、本屋さんに就職してしまうくらいに本が好きな自分(もはや依存症)としては、この本を巡る環境が小豆島生活を送る上での唯一の弱点というか残念な点でした。

そして、こう考えてしまったのです。

本と出会える場所、本を味わえる場所がなければ作れば良いじゃないか!と。



本屋が増えると良いことあるよ

もちろん、これまで小豆島にあった本屋さんを否定するわけではありません。
むしろ、そうした本屋さんで扱っていないような本を僕の作るお店に取り揃えることで、相乗効果が期待できるかな…と考えています。

新刊やコミックの最新刊は町の本屋さんで買う。
何か欲しいものがあるわけではないけど、本のある空間に身を置きたいから僕のお店に行ってみる…みたいな。(そしてそこで予期せぬ本との出会いをしてもらう)

何より、書籍だけで年間約7万3000点、一日に200点もの新刊書籍が出ている出版業界。
とてもじゃないですが一つの店だけでそれらを賄う事は到底できません。
(前に働いていたジュンク堂書店池袋本店は蔵書数約150万冊と全国屈指の巨大店舗ですが、それでも全書籍を網羅するなんてとてもじゃないですができませんでした…)

そんな状況なので、お店が増えることによって島内で見ることのできる本にもバリエーションが生まれます。

あと、僕自身の経験から言えることなんですが、本好きな人って本屋さんハシゴしますよね?(高松に行くと本屋ルヌガンガ→ジュンク堂書店高松店→宮脇書店はマストの巡回ルートです。古本を見たい時はこのルートにYomsも追加します)
小豆島に本屋さんが増えることで、そうした本屋さんハシゴの楽しみも島内で味わえるようになります。

というわけで、島に新しい本屋さんを作ることは、同業他社のライバルが増えるのではないと考えています。

むしろ、本屋さんが増える→島内で出会える本のバリエーションが増える→様々な本と出会える→本って楽しい→本好きな人が増えるというような好循環を生み出す土壌となるのではないでしょうか。

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町の本屋の役割について

自分のこれまでの本との関わりを考え直してみても、図書館や都市部の大型書店だけでなく、近所の小さな本屋さんの存在こそが本が好きになる経験で大きな位置を占めていたように感じます。

気になる本を図書館で借り、欲しい本は大型書店に買いに行く。
これだけでも充分かと思われますが、僕にとってはこの上記の場所以上に大事だったのが近所の本屋さんでした。

暇さえあれば近所の本屋さんを訪れて店内を散策。
決して大きなお店ではありませんでしたが、だからこそ日々少しずつ変わる書棚の本を把握する事が出来ますし、店内の色んなジャンルの本を満遍なく眺めることができます。

店内をうろついて、気になる本や目についた本があれば手に取って眺めてみる。こんなふうに偶然手に取った本との出会いが、僕の人生においてどれだけ大きな財産となったか。
恩田陸さん・森見登美彦さん・ミヒャエル=エンデ・アラン=ポーなどなど、今も大好きな作家のほとんどがこうした偶然の出会いから読むようになりました。(※2)


本屋の持つ力を信じている

本屋さんの良さは偶然の出会いを生み出せることにあると思います。
インターネットでは自分の欲しい本を瞬時に探して注文・購入し、家から一歩も出ることなく本を手にすることができます。
ただ、そこで出会えるのは既知の情報や自分の知りたい興味・関心であり、自分がまだ気付いていない興味や潜在的な関心(つまり、自分が知りたいと思っている事も分からないような事、あるいは、本を読んで初めて”自分はこんなことを知りたかったんだ!”と気付かせてくれるもの)を掘り起こしてくれることはありません。
そうした自分の潜在的な興味、まだ自分では分かっていないけど、実は興味のある事柄、あるいは自分の中でも言語化できていない関心や欲望。
そうした自身の内面を本を通じて知ることができるのが、本屋さんという場所の魅力であり醍醐味です。

こればかりは、どれだけデジタル技術が発達してもリアルな場所には敵わない部分だと思います。

そんな偶然の出会い、思いもよらない出会いをもたらしてくれる場所を小豆島に作りたい。
そして、その場所では本を選んで買うだけでなく、本を読みながらゆったりと時間を過ごせる場所も併設したい。

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そんな思いを胸に小豆島で「TUG BOOKS」という本屋さんの開店準備中です!

次回は僕の本屋さん「TUG BOOKS」の屋号に込めた思いについてお話しようと思います。



※1:これまでに「Today is the day」という海辺のカフェで行った「BOOK PICNIC」、「小部キャンプ場」で焚き火に当たりながら読書を楽しんでもらう「焚き火と本と珈琲と」、山の中にある雑貨屋「うすけはれ」での「読書時間」など、島内の様々な場所で読書時間を味わってもらっています。

※2:ふと疑問に思ったんですが、日本の作家には敬称をつけるけど、海外の作家には敬称ってつけづらいですよね…。ミヒャエル=エンデさん…。エドガー=アラン=ポーさん…。なんか変だ!笑

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