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TABU tabloid

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共同主宰・たかやまのアート・レポートなど *tabloidはメンバー個人が作成するマガジンです。 *マガジントップ画像:齊藤智史氏の“イシキ”より
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#個展

夢と交差する視線。

真鍋由伽子さん 個展『Observe every water droplet』 新宿に用があったので、その足で西荻窪で開催されている真鍋由伽子さんの個展にお邪魔した。ここまで来ると、私の中ではるばる感が満ちてくる。 会場は「ヨロコビtoギャラリー」。はじめて伺う。飲み屋街とは反対方向にのんびり歩く。西荻窪は豊かな街だなぁと思う。生活との距離感がとても良いように思う。暮らしたことはないので、本当のところはよくわからないが。 郵便ポストを目印に右折。ギャラリーがすぐに目に入る

時空冷凍庫から取り出された、解凍できないメッセージ。

キンマキさんの画をはじめて拝見したのは、五美大展だった。 「木を見て森を見ず」という作品である。渓谷の河原に、豆粒のような人物たちが描かれている。自然の大きさを感じさせる画だ。もう一枚のキャンバスには、その人物たちがバーベキューをしているシーンが描かれている。背後に川が流れている。そしてもう一枚。今度はバーベキューの網の上がクローズアップされている。バーベキューをやっている人物のスニーカーがわずかに描かれている。 あたかもドローンで空に舞い上がったごとく、あるいは河川敷数十セ

分け入っても分け入ってもたどり着けない。

山本亜由夢さん個展「我々の休暇」 アーツ千代田3331から上北沢の一軒家に移転した Open Letter。 オーナーの自宅兼ギャラリーとなった。 ギャラリー部分は、DIYで仕上げられ、 漆喰の壁塗りワークショップに私も参加した。 いやぁ、楽しかった。 上北沢に来ても、土曜日・日曜日のみ開廊のスタイルは変わらない。 これがなかなかにハードルが高い。 そしてパンデミック。 そんなさなか、オーナー家は三人家族となった。 壁塗り以来お邪魔できずにいるうちに いろいろなものが動

そこにあるのは過ぎ去った風景と人々。

川窪花野さん個展「ところにより 通り雨」 川窪さんは、五美大展ではじめて拝見した。 「コーヒーと1パイント」という作品だった。 とても印象に残っていて、いつか個展を拝見したいと思っていた。 その後、川窪さんは女子美術大学洋画専攻を卒業し、 東京藝術大学大学院美術研究科に所属している。 そして今回の個展。池之端にある花園アレイの五階 「THE 5TH FLOOR」がその会場だ。 元社員寮だった建物らしい。 5階の501、502、503号室の三つの部屋がその会場。 この三

リズムがドットになり、旋律が線になる。

久保晶さん個展「Fanfare」 東京藝術大学大学院美術研究科油画技法材料研究室に在籍していた 久保晶さん。 今は離れてしまったスタジオモカ〜の初期メンバーでもあり、 そのオープンアトリエにお邪魔して拝見したのが最初だ。 その後、修了展で実に多くの作品を拝見した。彼女は多作な作家なのだ。 その数の多さに、修了展のときは(鑑賞者としての私の)焦点が定まらないような感覚を覚えた。 ・ 今回は、中目黒の薬膳カレー&&薬膳料理「香食楽」の二階を会場とした小品を中心とした展示である。

物質に閉じ込められた自我が放つもの。

川田龍「Self-portrait」@Bambinart Gallery 何も知らず、事前予約制のある展示を見るために ちょうど上手く時間を使えるだろうと思われた アーツ千代田3331に出向き、偶然拝見することとなった。 しかも、初日だった。 川田さんは 1988年、新潟県生まれ。2015年に東京造形大学美術科絵画専攻を卒業し、東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻(壁画第二研究室)に進学。 2018年に修士課程を修了している。 その東京藝術大学大学院在籍中に展示を何度

確固たるしなやかな存在。

波能かなみさん個展【Girls in the Paper.】(〜9月30日まで) @ギャラリーそうめい堂 波能さんは武蔵野美術大学油絵学科版画専攻を卒業したあと 2018年に、東京藝術大学大学院美術研究科版画研究室修士課程を修了した 作家さんだ。 初めて作品を拝見したのは 【第66回 東京藝術大学卒業・修了作品展】‬‬の 「ひとであること」と題された展示だった。 階は忘れたが、絵画棟の端の部屋で 波能さんの描くふくよかな女性たちは、 和紙で囲われた空間に身を委ね、 鑑賞者