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若手高校教員と考えた!「1人1台」で教育はどう変わる?


群馬県でも「1人1台」が実現。Chromebook、使っていますか?

群馬県でも2021年春までに県立高校の生徒1人に1台、ノートパソコン「Chromebook」が配備されました。全国的な端末配備と高速大容量通信ネットワークの整備も進み、GIGAスクール構想の目標達成に近づく高校がある一方で、使いあぐねている現場も多いのでは。大学で商学や情報教育を学び、群馬県立下仁田高校で教鞭をとる夏目智明先生にデジタル時代の教育について伺いました。


使い倒した教員が語る
「1人1台」3つのメリット


Merit 01

本来は研究を伴う商業科の「課題研究」。しかし、全校で一斉に行うためコンピュータ室はつねに混雑し、生徒自身で調べ、考えを深めていくことは難しく、多くの授業回はパソコンなしで行わざるを得ませんでした。ところが、Chromebookが1人に1台いきわたり、いつでも「調べ学習」のできる環境が整ったことで、知らない用語、物事の理屈や背景などについて検索を活用しながら自ら考えさせる、生徒の主体性を引き出す形式に変更することができました。いまでは、「気になったら、まず検索」が当たり前に。現代社会に不可欠な、膨大な情報の中から必要なものを探し出す力と、正確かを判断するリテラシーも高校の授業を通して磨けるようになってきています。


Merit 02

「課題研究」では毎年、自校のPR新聞をパソコンで作成、印刷し、周辺地域に配布してきました。これまでは、記事についてのアイデアを出す際、生徒は自身の考えを書き込んだ付箋を模造紙に貼っていましたが、Chromebookの配備後に「Google Jamboard*2」を活用して作業を進めたところ、たくさんの付箋が貼られるようになりました。パソコン上なら、貼る作業を他の生徒に見られないし、とるに足らないアイデアに思えても紙の無駄を気にしないでいいから気軽に貼れる。また、順番を待たなくても、思いついたときにいつでも貼れ、消去や差し替えも簡単というパソコンならではのメリットが積極的な参加を促しました。

*1文書、写真、動画などあらゆるファイルをクラウド上に保存でき、個人の保存場所に割り当てることや複数で共有することも可能。
*2ホワイトボードのように手書きで文字や絵を描いたり、付箋を貼り付けることができ、リアルタイム同時編集も行える。


Merit 03

Chromebookがいきわったことを機に、Google Classroom*3を利用して授業中に提示した資料や課題を生徒と共有したり、取り組んだ課題を提出させたりしています。従来であれば、提出された作文やレポートを全員で見る場合は事前に人数分を印刷したり、ポスター発表であれば黒板に貼ったものを順番に見たりと、準備や時間が必要でした。
しかし、アプリ上なら「共有」設定にするだけで、指定した制作物をクラス全員で見ながら発表を聞くことも可能です。アプリ活用で事前準備などの負担が減った結果、通常授業内で頻繁に発表の機会を設けられるようになりました。「1人1台」体制は、新学習指導要領がめざす生徒の発信力の強化にも確実に繋がっています。

*3 LMS(Leaning Management System:学習管理システム)の一つで、課題、資料、小テスト等の配布、採点、成績管理などが行える。


「1人1台」をもっと生かすために
考えたい2つのポイント

Point 1「パソコンがあって当たり前」が高校現場にもたらす課題

手書きや暗算などの行為は人が長年築き上げてきた文化であり、言語能力や計算能力の発達、教養や知性の形成にも影響を与えています。また、デジタル機器が読み書きそろばんといったアナログな土台の上に成り立っている以上、それらが抜け落ちたまま技術の「上澄み」だけを享受しても深い思考力やイノベーティブな発想は育めません。デジタルネイティブ世代に、それを使う前提となるアナログな能力をどう身に着けさせるか、デジタル教育との バランスをどう取るか、それぞれの使いどころの判断などが、今後の学校現場には求められていると思います。


Point 2 「好き」を引き出し、生かすためにデジタル機器に何ができるか?

「1人1台」に象徴されるように、デジタル機器が当たり前の時代に突入した今、ただ単に作業効率を上げるための道具として使い方を教えるのではなく、生徒一人ひとりの人生を豊かにするためにそれらを活用すべきだと考えています。教師の役割は、「生徒が本当に好きなものを引き出して、それを追い求められる環境に背中を押してあげる」こと。私自身も高校と大学時代の恩師に導いていただき、今の自分が形作られたと実感しています。教育の現場においてどう生かしていくべきか、すべての教員が可能性を探るべき時に来ていると感じています。



今回インタビューした教授


夏目 智明さん
群馬県下仁田高等学校|地公臨教諭(商業・情報)

高崎商科大学商学部卒業。パソコンゲームオタクだった高校時代、先生に頼まれてパソコン部に入部し後輩を指導したのを機に、情報の教員をめざす。
教員歴5年目、生徒と近しい視点で指導に当たる。

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