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ブルガリア発・忘れたくない瞬間でいっぱい、少女の成長物語

」 ブルガリア🇧🇬

この度のEUフィルムデーズ2018で、「マジで、すっごく良かった!あ〜、多くの人に見てほしい!」と心から思ったのが、このブルガリア映画でした。

17歳のイヴァと12歳のマヤは異母姉妹。大好きな父親がこん睡状態に陥ってしまうと、イヴァは心を閉ざし、病院を避けるように。マヤは毎日父に会いに行き、あの手この手で目を覚まさせようとする。そのころ、姉妹のとある行動が問題となり、2人は退学させられそうになっていた。周囲から、そしてお互いにますます孤立する姉妹。ついにマヤは大胆な計画を思いつく……。(イベント公式サイトより転記)

レビュー書くのがめちゃくちゃ遅くなるだろうからと必死で、この映画の「忘れたくない瞬間」を以下のとおり、箇条書きメモしました。

サンタクロースがマヤの見守り役

でも何で? クリスマスのシーズンでもなかったのだけど、ずっとサンタさんが彼女を見守ってた。

校長がやたら国家計画にこだわるところ。

ブルガリア映画にありがち。社会主義国家を程よくおちょくってる。

マヤのママがアイロンをかけるシーン。何故だかすごく多かったんだよね、マヤママがアイロンがけするシーン。何かの暗喩なのかな。

イヴァのママがやたら宇宙人やUFOを恐れてるとこ。イヴァの双子の弟のキテレツさ。

ペトフ先生が素足で靴を履いてること。それが生徒の嘲笑の対象らしい。(いわゆる"女っぽい、男らしくない"ということが含まれている模様)

猿のニルソンの悲しげな瞳。

なんじゃ、これ。感想になってないやないの。何のことやらさっぱり、ですよね。見ていない人からしたら。

でもこれ以外にもほーんとに忘れたくない瞬間だらけで。ちょっとシリアスな現実とファンタジックなシーンとのミスマッチが、作品を軽やかに、さわやかにしているんです。

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ところで、この姉妹の問題の行動ってのが、マヤの担任ペトフ先生が女装趣味があることを知り、それを教室の黒板に書いたことから、教師を侮辱したってことで退学させられそうになるんです。それぞれのママの懸命な懇願で何とか処分は免れるんだけど。でも2人からすると、真の証拠を突きつければ自分たちは正しいと証明できるはず!

それで、イヴァと彼氏が、女装して出ていったペトフの部屋に忍び込んで、盗撮カメラを仕掛けるんです(←これはどうかと思う)。

2人の跡を追って潜入したマヤが、ペトフのお母さんの手紙を見つけて読んでいるうちに、先生が帰宅して見つかってしまう。でも先生は怒らず、女装するのは趣味ではなく、病気だった母に頼まれて安楽死をさせてしまったことへの後悔と母親への募る想いから、母の衣装をまとって外出していたことがわかり…。

先生のその時の哀しげな目。マヤは、多分生まれて初めて、人を傷つけてしまった悼みを思い知るんです。

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この映画の何がいいかって、出てくる人たちが、誰一人として意地が悪くないこと。

フツー、異母姉妹というと、当人たち、または、それぞれの母親同士がいがみ合ってたりするでしょう? そういうのが一切なくて。(多少の競争心は見え隠れしていたけども)

若干イヴァのママは脳内サイケで、大丈夫?って感じなんだけど、それも含めて、なんか「いい人」なんだよね。とにかく全ての人が愛おしくなる。

そして、パパとマヤのラストのやりとり。マヤを和ませようとパパが頰に手を当てたり、耳を引っ張ったりしておどけるところ。

…パパはもう戻ってこない。けれど、マヤはパパのお見舞いに毎日通いながら、大きく成長するんだよね。知らず知らずのうちに。

単なる少女の成長物語と言ってしまえばそれまでだけど、マヤの目を通して見る世界は、思った以上に「ポップ」で、瑞々しくて、ウジウジすることなんて一切なくて、大股で、リズミカルにステップを踏みながら突き進んでいく彼女の姿が想像できて、私自身も嬉しくなった。

ただ、タイトルが「猿」ってのは、シンプルすぎやろ。英題も「Monkey」だし、ここは邦題お得意のごちゃごちゃ感丸出し副題を付けて、世に出してほしいんですが…。ブルガリア映画、結構いいよ。

私にとっては、どの瞬間も大切で、愛おしい作品となりました。自分が少女時代に感じた何かを、突き刺すように感じられて。

こんな風に、忘れたくない瞬間がいくつもある作品に出合っていますか? どんな些細なことでもいい。それは自身の現実世界にも彩りを添えることになるんだなって思いました。

2018年58本目。EUフィルムデーズ3本目。京都文化博物館にて。

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