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キングオブコント2020感想①(1stステージ前半)


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キングオブコント2020がこのコロナ禍の中、無事に開催された。ベテラン勢から勢いのある若手までがファイナリストに名を連ねた本大会の感想を備忘録的に。

ちなみに僕は、けっこうお笑いは好きでよく見る方だが、劇場に通ったりするほどのお笑いフリークではないかな、という程度。毎年単独ライブに行くのは東京03だけで、さらば青春の光やシソンヌ、ラバーガールあたりはそのうち単独に行ってみたいなと思っている(DVDは見ている)。

ナイツの塙ほどではないが、一応僕もネタ(特にコント)を見る際はなんとなく自分の評価基準を持っている(そうでないと、面白いネタの評価を言語化できない)

それは「ネタの設定、着眼点の斬新さ/独自さ」「ネタの展開の広さ/深さ」「ワードセンス」「ネタの世界観に合った演技力」「ネタ全体のハマり感、空気感」だ。

この評価基準は演繹的に導出したわけではなく、僕が愛してやまない東京03のネタの面白さから帰納的に導いている。特に「ネタの設定・着眼点」を最重要視しているので、設定バラシが抜群なさらば青春の光は僕に思いっきり刺さる。(キングオブコントを取れなかったのは本当に残念だった)

それでは、まず1stステージの前半5組を審査員5名の採点結果も踏まえて振り返っていく。

滝音(ネタ:フードファイト)

合計得点:445点(設楽:90、日村:90、三村:90、大竹:89、松本:86)

1stステージ順位:8位(GAGと同点)

私的評価:設定B、展開B、ワードA、演技B、ハマり感C

7月のABCグランプリで初めてネタ(漫才)を見たが、その時はあまりハマらず記憶にも残らなかった。コントは初見。

「フードファイト×おせっかいな店員」という設定で、そこまで奇をてらった内容ではなかったので、トップバッターとしては最適だったのでは。

実は大食い選手権の最中、という設定はバラシの前からなんとなく察したのだが、そうするとバラシの前の店員のセリフ(店の場所が分かりにくいとかなんとか)に違和感があるので、終始もやっとしてしまった。ただ、そのあとも展開(器を下げるくだりや餃子のくだり)があったので、それは良かった。

ただ、狙いすぎたワードが多く(足軽フードファイターはまだしも、それ以降の私立〇〇学園とか)、ワード単体では面白いものの、ネタの空気感と合っていなかったのでセリフが浮いてちぐはぐな印象。

また、大食い選手権という設定ながら、ほかの競技者が周りにいる感じを全く感じず、世界観のフレーム外への広がりが見えてこなかったのも残念だった。

結果として全体的に小さくまとまった出来となったので、「もう少し展開を期待した」(設楽)「最初が沸点のピークだった」(松本)という寸評には納得。

GAG(ネタ:河川敷)

合計得点:445点(設楽:88、日村:90、三村:91、大竹:91、松本:85)

1stステージ順位:8位(滝音と同点)

私的評価:設定B、展開A、ワードC、演技D、ハマり感B

GAGは4度目のファイナリスト。個人的にはGAGにはずっとはまっていない。コテコテすぎて逆に誰もやってないだろ、というレベルの大袈裟演技・メイク、まあまあ人間の機微な部分に焦点をあてる設定、特に福井のうつむきながら小刻みなステップを踏んで繰り出すワードセンスなツッコミ、それぞれ全部がミスマッチに見えてあまり笑えない。

ただ、去年の決勝で披露した「芸人の彼女」というネタは、その大袈裟な部分が、「登場人物が駆け出しの若手芸人」という設定と、コント内漫才というメタ構造と奇跡的にマッチしていたので物凄く面白かったし福井のツッコミもハマっていた。(僅かな差でFinalラウンドに進めなかったのは残念だった)

その流れがあるので、今回のGAGの仕上がりには期待していたのだが。。

ネタの内容は、河川敷でフルートを練習する女・中島美嘉・草野球のおっさんがぶつかっては入れ替わり、を繰り返すというネタ(なんだそりゃ笑)

宮戸の過去1でケバい女装メイクとパンチラ、草野球おっさんの青ひげメイクにも違和感はあるのだが、これまでの人間ドラマ設定から比べるとかなりバカバカしくなったネタの設定と妙に合っているような気もするので、まあいい。

松本の「中島美嘉がピークだった」というのが、まさにその通りで、わざわざ中島美嘉をネタ内に登場させる必要があったのか?というところに尽きる。単純に女装宮戸が憧れている架空のミュージシャンでよかったのでは?

確かに坂本扮する中島美嘉は面白かったが、それが変な爆発を生んでしまい、そのあとのバカバカしい笑いに繋がっていないように感じた。

入れ替わりが3人の持ち物にまで拡張していく展開はかなり狂ってて面白かったし、真面目なネタでもないので別にテグスを使ってもいいんじゃない?とは思ったが、ハマらないとそういう部分に目が行くのかも(松本は以前ジャンポケの「エレベーター」についても小道具に苦言を呈したことがあったが、いかにもコント風な小道具の使い方が嫌いなのかも)

また、このネタも滝音のネタと同様フレーム外が想定されているのに、その世界観が見えてこないのも残念だった(何事もなかったかのように外野フライを打ち続ける草野球ナインへの言及があってもよかったのでは)


ロングコートダディ(ネタ:ピッキングバイト)

合計得点:446点(設楽:90、日村:88、三村:90、大竹:90、松本:88)

1stステージ順位:7位

私的評価:設定B、展開C、ワードC、演技A、ハマり感A

なんとなく漫才の印象を持っていたコンビ。コンビ名がかっこいいなあと思っている(略すとロコディになるのもイイ)

頭の悪い力持ちの先輩が、新人バイトにピッキングバイトの仕事を教えるが、その内容がものすごく非効率、という内容。

そこまで展開があるわけでもボケ数が多いわけでもなく、ただ箱をABCDの順に並べたがる、だけのネタなのだが、二人の飄々とした雰囲気に無理がなく、ネタの世界観にもマッチしていたので、自然に笑えた。

演技があれだけ飄々としているのに、筋肉の衣装だけポパイみたいに漫画チックなのも逆に面白い。

ただ、やはり展開が弱いのと、オチが容易に読めたこともあって、点数は伸び悩み、印象が薄かった。

あと、「普通の人が20分かかるところ、俺は22分かかる」の部分がちょっとわかりにくく感じた。オチの伏線にもなってるんだろうけど。

空気階段(ネタ:霊媒師)

合計得点:458点(設楽:94、日村:93、三村:89、大竹:92、松本:90)

1stステージ順位:3位(Finalステージ進出)

私的評価:設定A、展開A+、ワードB、演技A、ハマり感A

こちらもコンビ名が格好いいコンビ。鈴木もぐらの方がやばそうなのに、本当にクレイジーでネタを作っているのも水川かたまり、というあたり大好き(キングオブ〇メディみたいなことにはならないでね。。お願いだから。。)

おそらく今回披露されたネタの中では最も構成が練られたコントではないか。霊媒師(「クローゼット」に出てくるおっさんとほぼ同じ笑)が死んだ祖母を降霊しようとするが、近所のコミュニティFMが混線する、という狂った設定。もぐらは本当にこういう胡散臭いキャラクターがあっている笑

ラジオが降霊の邪魔をする、という設定だけでめちゃくちゃ面白いのだが、そのあとも「ラジオが実際に放送されている」「霊媒師の電波受信の方が正規ルートよりちょっと早い」「ラジオの内容が意味不明」「霊媒師がそのラジオのヘビーリスナー」など怒涛の展開。

しかもその間にベタな笑い(シソンヌ「ババアの罠」の「あ、開いた」を想起した)や伏線の小道具回収なども挟まれており、よく5分の尺にこの内容を収めたな、と感動した。

三村の謎採点もあって、点数が思ったより伸びなかった。松本の寸評を聞いてみたかった。オチが弱かったかも。

ジャルジャル(ネタ:野次ワクチン)

合計得点:477点(設楽:95、日村:97、三村:96、大竹:94、松本:95)

1stステージ順位:1位(Finalステージ進出)

私的評価:設定A、展開A、ワードB、演技A、ハマり感A+

無冠の帝王、コント狂いのジャルジャルがついに、キングオブコントに完璧にハマるネタを披露した。ジャルジャルは好きなネタと嫌いなネタの振れ幅が大きく、これまでキングオブコントで披露してきたネタは後者が多い印象(おばはん、理解不能者など)だったのだが、今回は文句のつけようがなくジャルジャルワールドだった。

競艇場でのイベント出番前、野次にひるまずに歌いきるために楽屋で野次に耐える練習(「野次ワクチン」)をする、というネタ。

基本はジャルジャルらしい、歌っては野次を飛ばしてを延々に繰り返すしつこいネタなのだが、しつこいだけじゃないジャルジャルの良さが遺憾なく発揮されている。

例えば、「ちょうど何も感じない歌詞」「なんかそれっぽい後藤の歌い方」「福徳の野次の癖になるリズム感」「ヤジとマジが分からなくなる狂気」など。これらがその場限りのボケではなく、繰り返しの妙で次第に積み重なっていくので、繰り返す度にじわじわと確実に面白くなっていく。ジャルジャルにしかできない、ずっと見ていられるコントだった。

もともとロッチの「試着室」以来、天丼に高得点が出やすい傾向があるキングオブコントの審査員審査だが、今回は最高得点も納得の内容(審査委員全員が今回最高得点)


以上、1stステージ前半5組のネタ感想でした。

今回は最初の笑いまで溜めるタイプのネタが多かったかも。



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