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キングオブコント2020感想③(Finalステージ)

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これまでの感想①、②で、キングオブコント2020の1stステージネタ10本についての感想をつらつらと書いてきたので、Finalステージの3組についての感想を。正直、1stステージの点差(2位ニューヨークと16点)を考えると、よっぽどのことがない限り、コンテスト自体はジャルジャルの逃げ切りかな、と思っていたので、純粋にネタを楽しんでみることができた。

ぶっちゃけこのあたりのキングオブコントの設計の甘さについてはずっと改善してほしいと思ってはいる(審査員5人、Finalステージ3組のみ、1stステージの得点持越し制など、どうにかならんかな)

ちなみに、これまでの感想はこちら。

空気階段(ネタ:定時制高校)

合計得点:463点(設楽:92、日村:93、三村:90、大竹:95、松本:93)

Finalステージ順位:2位

最終順位:3位(921点)

私的評価:設定B、展開B、ワードD、演技A+、ハマり感A+

今回のキングオブコントで、笑いの量が抜群というわけではないが、一番「いいもの見たな」という余韻に浸れたコント。1stステージの霊媒師が「動」のコントだとすれば、こちらは「静」のコント。セリフも動きもほとんどなく、間も長いネタだが、その静かさに深みを感じるネタ。このブンガク感は、キングオブコント2018チャンピオンのハナコがFinalステージで披露した「捕まえて」や、去年のかが屋「プロポーズ」も彷彿とさせる。かたまりの女性役と、もぐらの変だけど憎めないおじさんのキャラクター(有吉の壁とかでもよく見る)がバシッとはまっている。

舞台は定時制高校の授業中。かたまり演じる女性は後ろの席に座る変な子(もぐら)に思いを寄せている。もぐらは話し言葉も書き言葉も意味不明(オェオェオェ~と嘔吐する直前のような声しか発さない。もぐらが自作していると思しき音楽の歌詞も同様)だが、かたまりにだけはその内容が理解できる。ノートにメッセージを書いては交換する、というやり取りを繰り返すうちに、二人の思いが一つになっていく。

もぐらがほとんど意味のある言葉を発さない(終盤になると、うっすらと聞き取れるようになるが)ため、セリフのやり取りによる笑いは皆無。巧みなワードセンスもなく、定時制高校で変わり者同士の恋愛、という設定もそこまで奇抜なわけではない。たっぷりと取られる間の演技を、勿体ないと思う人も多いだろう。

ただ、コント(conte)というのは元来フランス語で「短い物語」という意味であり、ゲラゲラ笑える寸劇だけがコントではない。定時制高校の生徒、という何等かの事情を抱えているであろう二人が不器用に「青春あるある」を楽しむ。その様のほほえましさ、ハートフルさは、見事に「コント」の多様な世界を体現していたし、僕は大好きだ。思ったより点数は伸びなかったし(特にバナナマン)、「優勝するネタではない」と評されていたが。

ただ、最後の最後にかかる音楽について。ちょっと音量が大きすぎた気がする。。

KOC直後の「空気階段の踊り場」で、めちゃくちゃ力の入ったかたまりの女装メイクについて、レインボー池田のYouTubeチャンネルの企画の影響、と言っていたのはめちゃくちゃ面白かった。

ニューヨーク(ネタ:帽子)

合計得点:463点(設楽:95、日村:95、三村:90、大竹:91、松本:92)

Finalステージ順位:2位

最終順位:2位(924点)

私的評価:設定B、展開C、ワードB、演技A、ハマり感A

1stステージの「余興」は明るいバカバカしさで笑わせるネタだったが、Finalステージの「帽子(コントタイトルは「ヤクザ」らしい)」は、帽子を取る取らないという些細な事柄に命を張るやくざをネタにしたコント。

ニューヨークのニューラジオで話していた、小道具さんのこだわりの話がめちゃくちゃ面白い。今までほとんど考えたこともなかったが、小道具に命をかけている裏方さんがいるということに改めて気づかされた。

「余興」で目立たないもののちょくちょく顔を出していたコントキャラ「屋敷」の悪いツッコミは完全に封印され、ニューヨークのコントでは珍しく屋敷が「屋敷」以外を演じている。

『アウトレイジ』とかやくざ映画に出てくる、しょうもないことで無駄に張り合う様子をパロディしたようなネタだが、「帽子を取る/取らない」という一点だけで最後まで押し切るというのは芸人にとって理想的な構成なのかもしれず、芸人ウケが極めて高いというのも理解できる(さらば青春の光がM-1で披露した「能」も、大吉先生が同じような評価をしていた記憶。今回も現役でネタをやるバナナマンの点数が高かった)

ただ、本人も自覚していた通り、あまりにもウケていなかった。。おそらく「リアルの範疇を出ないヤクザネタ」は特に決勝の女性客にはハマらないし、展開はほぼないので、そのままずるずるいってしまったか。

ただ、ラストの拳銃のシーン、火薬仕込んでいたのにはびっくりしたし、裏方事情を知ったうえで見ると、ネタ終わりの屋敷のセリフ「この拳銃のシーンをどうしてもやりたくて・・・よかった・・・」が裏方さんの強い思いを代弁しているようでグッとくる。

ジャルジャル(ネタ:空き巣)

合計得点:464点(設楽:93、日村:94、三村:90、大竹:92、松本:95)

Finalステージ順位:1位

最終順位:1位(941点)

私的評価:設定A+、展開C、ワードC、演技A、ハマり感B

公式YouTubeチャンネルに「ネタのタネ」としてアップされていたネタのリバイス版。ネタのタネでは、空き巣に入った家の入り口に置いてあったタンバリンを福徳が最初に取ってしまい、最終的に福徳がタンバリンで溺れるという展開だったが、KOC版は、福徳が家からタンバリンを持参。空き巣先の金庫内にもタンバリン、鈴が入っていて、あまりのうるささに周りの人も集まってくる、という展開になっていた。

空き巣×タンバリンという設定はピカイチだが、ぶっちゃけあまり面白くなかったし、「理解不能者」と同類の、僕の嫌いなジャルジャルが出ていた。会場もあまりウケていなかったし、審査員でFinalステージ最高点を付けたのは松本人志だけだった(勝たせにいった感がある)

1stステージの「野次ワクチン」と違って、無理に展開を付け加えているので、ストーリーがちぐはぐだし(タンバリンは福徳の自前なのに、金庫にタンバリンと鈴が入っている意味が分からない)、後藤が一人で逃げる逃げないの茶番とか、パーティーのフリして出ていくなど、一つ一つの展開がことごとく寒い。ぶっちゃけネタのタネの方向性でブラッシュアップした方がよかったのではないか。

「野次ワクチン」の点数があそこまで伸びていなければ、2位以下にまくられる可能性も十分にあった内容だったと思うが、「野次ワクチン」の貯金で逃げ切り、悲願の優勝を果たした。

さいごに

三村仕事しろ。

ついにジャルジャルがタイトルホルダーになったので、来年以降はKOCに出場しない。ジャングルポケットも今回の出来を見ると来年以降は厳しいのではないか(今回のネタも以前準決勝で披露したネタのようだし)。GAGは4年連続決勝進出を果たしているが、宮戸女装ネタで一度も結果を残せていない(もう一本は「席替え部」だったらしいのでだいぶ古いネタだ)ので、このままだと来年は厳しいか。

そう考えると、来年はまた決勝初出場組、返り咲き組の躍進に期待がかかる。今回準決勝敗退芸人の中だと、

ファイヤーサンダー、ビスケットブラザーズ、蛙亭、コント村勢(ゾフィー、ザ・マミィ)あたりにはぜひ頑張ってほしい。

年内は12月に向けて、M-1予選が本格化してくる。こちらも今から楽しみで仕方がない(GYAO!配信が今年もあれば、3回戦以降全ネタ観れる!)

あ、THE・Wは、どうしようかな・・・(Aマッソ、ヒコロヒーあたりが決勝行ったら観ます。。)

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