見出し画像

尊敬する人の話。

あなたにとって尊敬する人は誰だろうか。

いわゆる有名人、社会的に成功している人を挙げる人も多いと思う。
ビジネスだったら常に新しい分野を開拓している人や、インフルエンサーなどあることを突き詰めて有名になった人たち。

もちろんその人たちは努力を重ね自分の魅力を磨き続けている素晴らしい人達であることは間違いない。

でも、人はそれぞれ身近な存在も尊敬の対象としているし、意外とそれを口にすることは少ないような気がする。

自分にとってはピアノの先生が、そんな人だった。
素敵な女の先生で、自分は中高6年間通っていた。
先生とレッスンした日々は、今も強く印象に残っている。

ハリスツイードが好きで、冬場は自宅にレッスンに伺うとその鮮やかな赤の帽子がシンプルな玄関を暖かく華やかに彩っていた。
クレヨンを使った繊細な絵を描いていて、作曲もする。発表会の最後はいつも先生の曲で締めくくられた。
発表会のパンフレットに先生が書く文はいつも、優しさとどこか儚さも感じる素敵な文章だった。

自分はその教室では一番年上の方ではあったから、教え方も違ったのかもしれない。レッスンではよく曲の解釈や背景を二人で一緒に話し合い、決して押し付けることはなく生徒の想像力を尊重しようとしてくれる姿はとても信頼できた。
最後の発表会の練習、一番最後に通して弾いた時は思わず涙ぐんでくれたり。

ちょっと不器用なところはあったのかもしれない。
たまに心身の体調が悪いとかでレッスンがなかった。
でも、いつも話すたび周りの人を幸せにする、そんな風を自分の心に吹かせてくれていた。

音楽、美術、文学、ファッション…など全てが繋がっていて、その立ち振る舞いや感性、人間味のある生き方は多感な時期に大きく影響されたように思う。

今、先生は教室をやっていない。
プライベートや環境に変化があったようで、自分が卒業した1,2年後に教室はなくなってしまった。

今先生が何をしているのか自分は知らないけども、先生の教えや尊敬の気持ちは今もそっと自分の背中を押してくれている。

皆がその心のうちに感謝や尊敬の念を抱いていても実際にその気持ちがお互いに伝わることは少ないと思うけど、大小関わらずその感情はとても大切にするべきものであるし、機会があればより多くの人がその人それぞれの大切な存在のことを伝え合ってくれればいいな。


書いている今は夏の終わりの夜。
重苦しい夏の空気が軽くなって、虫の音の響きが少し哀しく響いています。
明日も涼しいといいですね。

もしサポートしていただけたら本当に嬉しいです。