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限界社畜のデザイン業界転職日記

目次

プロローグ
なぜデザインだったのか
就活で必要なマインド
自分の「得意」で出来ることを探す
自分が「選ぶ側」の認識を持つ
エピローグ


貴方のそれは逃げじゃない。

去年の今頃、何していたかというと、5畳半の部屋で深夜2時、店長の話を電話越しに聞きながら泣いていた。
いわゆる社畜を極めていた2022年の春の話だ。
私は大学生活をほぼ全てアルバイトに捧げ、飲食業の沼にどっぷりハマった人間だった。
東京の端っこの店舗に新卒で配属され、すぐにまた東京の端っこの店舗に異動になった2年目の4月。私は、途方もなく、死にたかった。
そう、死ぬか、辞めるかの2択を迫られていたのだ。
今思えば馬鹿馬鹿しい2択だが、味方もいない、頼れる人もいない、見ず知らずのアルバイトが70名近くいる店舗で、上司に辞めたいと言ったその日の夜の電話だった。

「今辞めたらお前は、この会社で40になっても50になっても、現場で働かされるクズになる。俺が言ってるうちに、成長して変わった方がいい」

私の上司は、18のころからゴリゴリの飲食店経験者で、それこそ月250時間働いて血尿が出ただとか、店のバイト全員辞めさせて店長と自分、2人だけで店を作り直したことがある、だとか、おどろおどろしいエピソードを持つ敏腕店長だった。とにかく仕事が出来て、早くて、恐ろしいほど合理的。アルバイトには嫌われるか慕われるかの両極端で、とにかくすごい人だった。
そんな人の下で働くことに、正直社畜が性に合っている私は胸を躍らせていたし、慣れない大量の仕事も、新しい環境も、平気だと思っていた。
しかし、ある時、ある時というか単に朝まで仕事終わらなくて14時間くらい店にいた時だが、私はこの人に、なれないと悟った。
飲食沼にハマって5年経ち、やっとその時気付いたことだが、この業界は心が壊れている人か心が狂っている人しか続けていけない。

あの頃の私は、本気で、この上司に認められない自分に価値がないと思い込んでいた。朝起きて、出勤までの数時間を、海まで行って飛び降りることが出来ないか、内科に行って睡眠薬を貰い一気に飲めば死ねないか、出勤の時のチャリが轢かれないか、いっそ包丁で大動脈を切ってしまおうか、それくらい死を夢想し死に憧れていた。心が狂う寸前だった。

私は店長のようにはなれなかった。
では何になるべきか?
どうやって私は私たる人間なのか、考え続け、実務未経験からWebディレクターとして内定を頂くまで、その1年の話をまとめたものがこのnoteである。

なぜデザインだったのか

辞め方は至って簡単だった。心も身体も割と限界だったためだ。
実家に舞い戻った私は、とりあえず今後の人生を、10年20年単位で考えなくてはと思い至った。
そもそも辞めようと思った理由はなんだったのか、それは3月の初めにさかのぼる。

ある春の日の深夜2時。
「クソみたいな人生だな」
と上司に言われて、ヘラヘラ笑ってしまった。好きでこんな人生選んだんじゃないよ、と。
私はメニューの差し替えで、回しても回してもとれやしないメニューブックのネジを、回しながら思っていた。
手伝えよ。先帰ってんじゃないよ。
でもお疲れ様ですと言った。そこから動く方が辛かったのだ。笑って済むなら笑っておけばいい。
社会に出て一年目で学んだことは、余計なことは言わないことだ。聞かれたら、「分かります。そう思います」って言うことで、大体そんな感じだ。
何も言い返せなかったのは、私だってクソみたいな人生だと思っているからだった。
本当はこんなじゃない、とは思ってないけど、頑張っても人並みにしか出来ないことばかりだということは、最近知った。
私の夢ってなんだったんだろう?とおもうことが増えた。
何かになりたいとか、何かをなし得たいとか、そういう感情でもなく、ただ幸せになりたいと願って生きてきたはずなのに、幸せってやつがなんなのか分からない。十分恵まれた環境で、それ以上望むことなんてないと思うのに、異動して言われたのは、あなたは何をしたいのか?だった。
あれ?っとなる。思いつかなかった。
それは、辞める理由に十分だった。

私はもはや、興味がなかったのだ。

これは後から知った話だが、仕事を続けるためには「仕事の内容」と「人間関係」どちらかが良くないと、人は仕事を辞めるんだそうだ。
私はどちらにも興味がなかった。後々納得した。

飲食沼から這い出して、私は約1ヶ月を丸々使い自己分析をした。
私の夢ってなんだったっけ?
私の夢は、実はずっと、絵を描いて生きることだった。ただ自分の大人ぶった部分が、そういう地に足が付かないことを怖がってそれ以外で生きていこう、と勝手に結論付けていただけだった。
私は結果的に、半年かけてスクールに通い、Webデザインを勉強し、ポートフォリオを制作し、3ヶ月弱就職活動をした。

絵を描くことならイラストレーターを目指すべきでは?と思う人も多いだろうが、なぜデザインを選んだのか。
まず、デザイナーと芸術家の違いについて、私なりの解釈を述べよう。

・芸術家は自分の思想や世界観を他者に分からせる、共感させる仕事
・自分自身のブランディングが直接不特定多数の評価に繋がる、批判や批評を受けても、自分自身のためにものづくりができる人

・デザイナーは社会や物事を必要としている人に分からせる、共感させる仕事
・自分自身のブランディングは方向性やアプローチとして機能し、必要としている人のためにものづくりができる人

簡単に言えば、自分自身のために作るか、誰かのために作るかの違いだと考えている。
飲食業の社員というものは、どちらかというと前者じゃないとすぐに私のように、自己を搾取され過ぎて壊れてしまう。
あくまで自分自身はツール、他者に提供するのは作品でないと、おそらく同じ轍を踏むと悟った故の選択だというのが、一つの理由だ。
もう一つの理由は、デザイナーはサービス業だからでもある。
飲食沼から抜け出せなかった最大の理由は、常に誰かに必要とされる快感だ。
ぶっちゃけこれを満たしたかった。以上である。
もちろん、面接ではもっと説得力のあるキラキラしたことを話してはいるが、特にデザイン業界に行きたい!と強く決意したきっかけや、人生が変わった瞬間などはなかった。
1番やりたいことに近しく、私の中の学習コストが低く、手に届く可能性が高かったから目指した。
それくらいの低〜い志望理由でも、自分の中で納得がいけば万事OKなので、これを読んでいるおそらく限界であろう貴方は、何一つ難しく考えずに、気楽に構えていてほしい。
詳しくは後ほど話そう。

スクールに通ったとは言え、実務経験0でどうやってWeb制作会社に内定をもらうことができたのか。
次からはその就活におけるマインドを話していこうと思う。

就活におけるマインド

私はコロナ禍真っ只中の21卒で、ぶっちゃけ就活弱者である。ロックダウン待ったなしの状況下、就活を続ける勇気がなく、とりあえず1番頑張ったことバイトだったしそれ生かしてみるか!と飲食業に入った、愚か者である。
デザイン業界の転職は、普通の就活とはかけ離れている。
もし貴方が、新卒や一般企業の転職者ならば、この項は飛ばして大丈夫だ。

転職までの準備は5つやった。

①ポートフォリオ制作
②書類制作
③エージェントや求人サイト登録
④企業研究
⑤面接対策


①ポートフォリオ制作
デザイン業界転職には、ポートフォリオが必須!これは貴方もウンザリするほど聞いていると思うので、今回はどういった狙いでどんなポートフォリオを制作したかについて話そうと思う。
ポートフォリオとは何か?直訳すれば作品集なので、主役は今まで制作した作品だと思う。しかしそれは実務経験がある人に当てはまる話で、実務経験がない我々では効果が薄いのではないかと私は考えた。
ポートフォリオとは、自分のデザイン観そのものだ。
そこに表現するべきは、作品の見やすさや情報のわかりやすさ以上に、貴方らしいとは何か?である。
自分らしさって……と私は1ヶ月悩んだので、貴方も悩んでいいと思う。
悩む方向性は以下の通りだ。
・自分にとってデザインとは何か
・なぜデザインをするのか
・何を1番大切にしてデザインするのか
・自分らしい色や形、もしくは象徴する物は何か
こんなもんだ。紙に書き出したり、人と話したり、とにかく思考を止めないことが解決の糸口である。
一つの作品として、細部に理由を付けて制作されたものは、目立つ。見る人に、なぜこうしたのか、この下はどうなるのかと考えさせるからだ。
サクッと作る方がいいという人もいるし、シンプルがベストだという人もいる、あくまで私個人の意見なので参考程度に見てくれれば幸いだ。

②書類制作
言わずもがな、履歴書と職務経歴書だ。
これに関しては、テンプレートを使用して制作するのをおすすめする。私はマイナビかリクルートを使った。
問題は自己PRだが、これは貴方の面接におけるベースになるものだ。面接の中で、いかに書類と本人が矛盾してないか確かめる、重要なツールになる。
何を聞かれても、最終的に自己PRに持ち込めるよう、自身の嘘偽りない1番の強みを書くことが大切だと私は感じた。今まで生きてきて、何で色んなことを切り抜けてきたか、よく思い出してみるといいだろう。ちなみに私は、口八丁である。ご参考までに。

③ エージェントや求人サイト登録
多ければ多いほどいい!
未経験転職なんて、弾幕作戦、脳筋、物欲センサーは叩いて壊せである。
これは、ガチだ。80社以上応募した私が言うんだから間違いない。間違ってたらごめん。
私が使ったサイト一覧はこちら。ご参考までに。

・マイナビクリエイター
・doda
・リクルートエージェント
・Green
・find job
・MOREWORKS
・美術手帳by job
・デザインのお仕事

特によかった、未経験求人数が多かったのはdoda、Green、MOREWORKS、の3つなので是非覗いてみてほしい。

④企業研究
企業研究とはなんぞや?
この方法は、スクールにいた伝説の就活エキスパートのN先生に教えてもらった方法だ。
Web・IT業界の人手不足は30万人と言われているが、そもそも、人が余ってしょうがない、なんて業界の方が少なく大体どの業界も人手不足は深刻である。
特に第二新卒や、20代での転職なら、おそらく貴方が健康で働く意思さえあれば、雇ってくれる企業は必ずある。これを前提とした方法が以下の通りだ。

①デザインが好きなサイトや印刷物を集める
②そのデザインのどこが良かったか、どこが惹かれたか書き出す
③デザインを制作している会社を調べ、求人があれば応募する

集める量は30〜50ほどでいい。私は主に、SANKOU!、MOREWORKSのポートフォリオページ、パイインターナショナルの書籍などを読み漁りリストを制作した。
楽しみながら集める気持ちでやっていけば、自分が好きなデザインの系統や、やってみたいデザイン、最近勢いのあるデザイン会社や、業界に関わることを含め様々な情報を得ることができる。

デザイン業界は実績が全てだ。
働く人や環境ももちろん大切だが、自分がやりたくないデザインや、イケてないと思うものを作る方が苦痛である。入れば100%嫌っと言うほど作るのだから、好きなもん作った方がいい。
貴方の審美眼やセンスを信じて、働く場所ややりたいことを選んでいいのだ。

⑤面接対策
これは、私がもっと早くにしておくべきだったと後悔していることだ。
私はこれを、第二新卒以降、転職する人に向けて書いているが、新卒の面接と、転職の面接は全く違う。
新卒で聞くのがやる気や本人の人間性なら、転職者に聞くのはストレス耐性とどれだけ会社や業務に理解があるか、である。
そして面接で1番大切なのは、言ってることは初志貫徹しているかだ。
必ず決めておく質問と、よく聞かれた質問がこちらだ。

必ず結論を出しておくべき質問

①なんでデザイナーなのか?(なぜその職業なのか)
②なぜその会社なのか?(志望理由)

①はデザインを志したきっかけ、いうなれば人生に強く圧力がかかったことを、盛らずに、素直に書けばいい。
逃げてきた、なんとなく、そういう理由の方が大きくても、一旦は胸にしまい自分の希望を書くことが吉だ。その希望こそが、やりたいことであり、面接の軸になってくれる。

②志望理由は、人や環境を理由にしてはいけない。企業理念に共感したとかもってのほかで、それは前提の理由だからだ。
書くべきは、御社のこういう仕事、この制作物に興味があるから、だ。
N先生に、あんま興味がない会社の方が多いんです…と相談したことがあるが、「興味ないとこは受けなくていいよ」と一蹴されたことがある。
つまりはそういうことだし、デザインやWeb制作会社は、東京なら1000社以上はおそらくあるので、多分心配しなくて大丈夫だと思う。

よく聞かれた質問一覧
・自己紹介をお願いします
・あなたが転職において最も重視することは何ですか
・前職での失敗とそれに対して取り組んだこと
・1番ストレスがかかることとその解消法
・やりたくない仕事やストレスになる環境
・自分の長所と短所

自分が就活している時に、考えておけば良かった!と面接中に焦ることが多かった質問なので、備えておくと憂いがない。
特に自己紹介は、言いやすくかつわかりやすく、なぜデザイン業界に転職したかまで伝えられるといいと思う。

今まで話してきた5つの準備が、正しい方法かは分からない。これは出来そうと思える項目があれば試してみる、それくらいのマインドで自分のできる範囲で使えるものはなんでも使ってほしい。

自分の「得意」でできることを探す

就活におけるマインドの事前準備として、「自分のやりたいことって何か」を決めていく必要がある。
なぜデザインだったのか、で前述したことをさらに詳しく掘り下げ、貴方のやりたいことの見つけ方の、参考になればと思う。

新卒の時の私は、とにかく働きたくて就職した。今思えばそれは間違いで、働くというのは人生の過程でしかない。働いた先に何を得るかを目標にしないと、過程だけでは人は前に進めないのだ。
さて、やりたいこととは何か。
まるで怪物みたいなそいつを、飼い慣らせるか否かで精神衛生の質が変わってくる。
しかし世の中、はっきりとやりたいことが決まっている人間の方が少なく、むしろない人もたくさんいる。何故やりたいことは怪物なのか。それは単に、貴方がそいつの実態をよく知らないから、それだけだ。
貴方は、何の取り柄が無いわけでも、やりたいことが何も無いわけでも、得意なことが思いつかないわけでもないのだ。
「これはやりたいこととは違うからカウントしてはいけない」と思い込んでるだけである。
やりたいこととは、貴方の内側から発生する自発的な努力や頑張りとは違い、外側から分析して絞り込んでいくものである。
私はこの考え方を以下の書籍から学んだ。

世界一優しいやりたいことの見つけ方




この本では、やりたいこととは、「好きなこと」「得意なこと」「大事なこと」の三つから構成されている、と述べている。
例えば私なら、

「好きなこと」=絵や文章を書く、旅程をたてる、読書、わからないことを調べる

「得意なこと」=新しい知識を理解する、考える、人に興味を持つ

「大事なこと」=自由、好奇心、平等

となる。
「好きなこと」×「得意なこと」から、私ができることは、新しいことに挑戦し、知識を得て、形にすることである。具体的に言えば、作るために調査と挑戦をする、だろうか。
そして私の大事なことは、縛られない環境や方法であること、常に好奇心を満たせること、平等に扱われることだ。
これらの要素をさらに「何故これが好きか」「何故これが得意か」と動機で考えていく、するとこういう理由でこうなりたい、が自ずと見えてくる。

納得出来るまで書き殴る派



やりたいことは自分が出来ることではない。
今後一生働くなら「大変だけど出来ること」より「やってて楽な得意なこと」をした方が、絶対に楽しい。
やりたいことが見つからない、何の仕事がしたいか分からないなら、まず一度この本を読んでみてほしい。

自分が「選ぶ側」の認識を持つ

さあこれで就活の準備は整った。
さっそく応募…の前にこれだけは言いたい。
貴方は、「選ばれる側」じゃない。
「選ぶ側」だ。
80社近く落ちてて何言ってんだ、と思うかもしれないが、これは本当だ。
自分なんかが、と思ってはいけない。働く意思があるだけで貴方は素晴らしい人財だ。
必ず自分の理想とマッチする会社は見つかる。貴方が本気で働きたいと思っているなら尚更だ。
一度、仕事を辞めてきているなら、わかると思うが小さな違和感はやがて大きくなる。
最初我慢すればいいだとか、住めば都だとか、そんなのはいずれ苦しくなる。
10年後を見通して今頑張れるような人間は、ほんの一握りしかいない。
今の自分の意思を尊重していい。妥協してまたすぐ辞めるより、10年続けられる場所を探す3ヶ月程度に、お金を払った方がいい。
就活は自分を信じたもの勝ちだ。

エピローグ

ここまで読んでくれてありがとう。
肩の力は少し抜けただろうか。
今まで私はずっと自分本位で話をしてきた。
自分のことを一番に考えて、私はやっとやりたいことを手に入れた。
世の中、自責思考が強く他人のために行動できて、感情が一定の人がうまくいく。
これは私の理想で、私もこうなりたくて生きることを選んでいる。
でも別に、なれなくてもいいとも思う。いつも、心が、体が、その理想の方向へ向いているだけで十分だと思う。
一歩踏み出す、だとか、前に進む、だとか、そんなのはただの偏見で、人生は一本道ではなく貴方が望む理想が山の頂にあるとも限らない。
どこに向かうのも貴方の選択なら、それが正しい人生だ。
自分を信じていい。
目の前がいつも暗闇なのは、皆同じだから。
わざわざ苦しまなくてもいいから、気楽に楽しく、無理ない程度に、笑い飛ばしてやればいいから。

このnoteは、一年前の私の救いに。
そして、貴方の救いに少しでもなりますように。

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