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【短編小説】水たまり

「お、めっちゃデカい水たまりある」

先日の雨の影響か、僕の目の前には大きな水たま

りがあった。でも、別に飛び越えられないという

わけでもなく、「水たまり」という括りの中では

かなり大きい方だ。僕が棲んでいた地域は、乾燥

帯で、雨は滅多に降らなかった。だから、水たま

りすら、見たことが無かった。それでも、この温

帯の国に来てからは、よく見かけるようになった

のだ。僕は、この大きな水たまりを跨いだ。跨い

だというよりかは、ジャンプした。飛び越えた。

なんだか、そんなどうでも良いような行動が、僕

の少年期を思い出させた。初めて水たまりを越え

たのに、当たり前かのように飛び越えるのが楽し

かった。これが、この世界に生まれた者のサガな

のか。何度か飛び越えていると、さすがに疲れて

来た。ふと左に目をやると、ちょうどいい高さの

椅子があった。

「ちょっと休憩するか……」

そうして休んでいると、この国の料理が食べたく

なった。わざわざ来ているのだ。どうせなら、こ

の国の代表的な物が食べたい。熟考したすえ……

「うどんにするか」

僕は、どうせ食べるなら、うどんの有名なところ

に行こうと思った。僕は、四国地方の、香川県へ

と歩みを進めた。

一方この頃、ニュースではこう流れていた。

『日本に上陸した巨大生物は、琵琶湖を飛び越

えた後、富士山に腰掛け、現在は四国方面へ向か

っていると思われます。只今、自衛隊は巨大生物

への対策として、街中に狙撃隊を配置するなど、

警察庁と連携しているとの事です。市民の皆様は

急いで北陸地方への避難をお願いいたします。』

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