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微生物が支えるリサイクルを目指して~こだわりと縁を大切にして進む~

今回は工学部化学物理工学科の寺田昭彦先生にインタビューしました。微生物の持つ力が環境問題にどのように貢献していくのか、研究内容からその魅力、将来像に悩みがあるときに取るとよい行動まで幅広く語っていただきました。ぜひご覧ください!

<プロフィール>
お名前:寺田昭彦先生
所属学科:工学部化学物理工学科
研究室:寺田・利谷研究室

微生物が築く無限な循環とつながりの研究


─先生はどのような研究をやっておられるのですか。

まず私の研究分野は、環境バイオエンジニアリング(注1)という学問領域です。生物の能力を理解して環境分野に応用する学問で、私たちは微生物に焦点を置き、微生物が持つ機能を引き出し、環境浄化や温暖化抑制を目指した研究をしています。

―先生はどのような微生物を重点的に研究しておられるのですか。

今は窒素循環(注2)に関わる微生物を研究しています。特にバクテリアなどが窒素にまつわる物質循環に携っているので、まずバクテリアの機能や、系統によってどのような種類がいるのかを、深く理解しようと検討しています。

微生物の種類を色で分けて観察したときの写真

―なるほど。私は窒素循環と聞くと大気中の窒素をアンモニウムイオンに変換する根粒菌のことを思い浮かべますが、根粒菌などの微生物を研究しているということでしょうか。

根粒菌に関しては行っておらず、水中の窒素化合物の変換に関わる微生物をターゲットにしています。例えば、日常生活で私たちが廃棄する排水には大量の窒素が含まれているので、それが原因で赤潮や富栄養化といった環境問題が生まれます。また、微生物による窒素化合物の変換により温室効果ガスが排出されることがあります。このような環境問題を防ぐために微生物の活性が高くなる環境を整えて、省エネ、低コストでかつ温室効果ガスが出ないように窒素を無害化して除去するという研究をしています。

―先生の研究は、社会にどのように還元されていくのでしょうか。

まずは環境浄化と温室効果ガスという観点で窒素化合物が大きな環境問題となっています。そういった問題の解決となるような技術や学術的な発見ができたらいいなと思っています。

もう一つ、最近始めたことで廃棄物から価値の高いものを作り出すアップサイクリング(注3)技術の開発をしています。今までは廃棄物の削減やリサイクルをするにしてもお金がかかりすぎていたんですよね。なので、廃棄物から新たな価値があるものを創出することで、廃棄物管理の新しい社会像が見出せるのではないかと思っています。     
例えば、廃棄物からメタンを創出する微生物とメタンを使って価値のある物質を創出する微生物がいるんですよね。微生物を使って廃棄物からバイオガスを回収して発電する、そして余ったバイオガスに関しては価値の高い物質を作るための原料として使う。そういった形で、持続可能な社会に新たな価値の創出を加えていくことを目指しています。

国際的かつ協力的な研究室


―先生の研究室の魅力はどのようなところでしょうか。

異なる年齢層および異なる専門分野の人たちが国籍に関わらず集まる、多国籍な環境であることですね。例えば、アジア諸国から7名の留学生が所属しています。短期派遣の形でヨーロッパからの留学生を受け入れています。多様性に富んだメンバーが集まって、お互いを切磋琢磨している点は大きな特徴かと思います。


寺田先生が所属する研究室メンバーとの集合写真

―また、他研究室との共同研究が多いそうですが、他の分野と連携することでどのようなメリットがあるのでしょうか。

私達が携わっている環境バイオエンジニアリングは非常に学際的な学問で、生物の研究でも物理や化学の視点を取り組むことで革新的な技術開発や新規知見の発見に繋がることが多いと考えています。なので、様々な方々のお力添えをいただいて環境を良くすることを目標に研究をしています。今後も、国内外の学術機関や産業界の方々と共同研究をしていくことを推進していきますし、そういったところで学生が成長できるような土壌も築いていきたいなと思っています。

自分のこだわりと人との縁を大切に


―では先生が、研究者として大切にしていることは何でしょうか?

こだわりを持つということですかね。それと人の縁を大切にしたいなと思っています。

まず、色々な研究分野で激しい競争があったり多くの評価軸もあったりする中で、自分がどんな使命を持ってどんなことを達成するかに関しては、きちっとしたこだわりを持つというのが重要だと思っています。その信念が、粘り強く取り組むという実際の行動に繋がっていくと思っています。例えば、研究室でやっている微生物の実験は数ヶ月~1年以上かかるってざらなんですよね。そういった長いスパンをかけてやる研究のためには、何らかのこだわりとか信念を持って取り組まなければいけないと思っています。

もう一つ、利害関係のないところでの人との関係っていうのはとても重要かと思っています。人の出会いによって、その人の人生が大きく変わることがあると思っていて。今こうやって研究をやらせていただいているのもいろんな縁があったからだと思っているんですよね。そういった縁を大切に積み上げていくことによって色々な研究のチャンスが広がると思っています。ですので、前向きに信念を持って取り組むということと、巡り合った縁を大切にしていくことが私は重要かなと考えています。

どんな自分になりたくないかをイメージする


─高校生の方々にメッセージをお願いします。

高校生はたぶん、溢れるほどの情報を持っているところから悩みや不安を抱えていると思うんですよね。まずは5年後10年後にどんな自分になっていたいかをイメージすることを考えて頂きたいと思っています。一方、イメージすることは少し難しい場合は、逆にどんな自分になっていたくないかを考えてもいいと思います。そうすることで、自分が何を大切に生きていきたいかを見定めることが、重要だと思っています。

少なくとも高校時代の私は何を身につけたらいいか、何を勉強したらいいかが明確に分かりませんでした。でも今思い返してみると、将来を考えたときに、どんな自分にはなっていたくないかは漠然とイメージできていたように思います。こんな形でも、自分の将来を考えることで自ずと道が絞れていくと思います。

自分の進む道や自分の生きていく軸が見えてくると自分自身を客観的に評価できるようになると思います。そうすると、他の評価軸でどう言われようが構わない、と考えられるようになり、不安は少し解消されるかもしれません。


(注1)環境バイオエンジニアリング…微生物を深く理解して、環境浄化、廃棄物削減、もしくは廃棄物から価値の高いものを作り出す微生物の機能を引き出す学問。
(注2)窒素循環…大気中の窒素からアンモニアなどの有機化合物に変換されて、再び大気中の窒素に戻っていく循環。
(注3)アップサイクリング…廃棄物に新たな付加価値を持たせて、価値があるものに生まれ変わらせること。

文章:たかしん
インタビュー日時: 2023年 11月 16日
インタビュアー:たかしん

※インタビューは感染症に配慮して行っております。


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