見出し画像

理想は19世紀の実験家?!不思議なことを確かめる物理の研究

今回は生体医用システム工学科の生嶋健司先生にインタビューしました。生嶋先生の高校時代の話から今の研究や電磁気学の授業まで内容が盛りだくさんです。ぜひご覧ください!


<プロフィール>
お名前:生嶋健司先生
所属学科:生体医用システム工学科
研究室:生嶋研究室
趣味:リクガメなどの動物を飼っています。

生嶋先生の研究


―先生の研究について教えてください!

私の専門は物理学で、その中で思いついたこと、面白いと思うことをやっているので、時々何が専門か分からないと言われます(笑)

ただ、私の中ではあまり離れていません。物理学は普遍性を見つけるのが重要で、「数式的に同じだったら一緒でしょ」、という考えなんですね。例えば、宇宙と大気の間の、オーロラが起きる電離層というところがあります。そこでできているモデルは、普通の金属の中の自由電子のモデルと数式的にはほとんど一緒なわけです。だから、オーロラの研究と金属の研究はよく似たものなんですよ。

何を研究するかを考えるときに大切にしているのは、物理をベースとしてそれをどう生かすか、分からない現象を解明するかということですね。

(先生の研究の一例:超音波を使って、骨や臓器の形だけでなくて、体の中の電気信号まで調べられるように?!)

先生の進路選択


―どうして物理学の道に進まれたのですか?

実は高校物理は暗記教科だと思ってなんの面白さも感じていなかったんですよ。でも高2高3くらいの頃に、ランダウというノーベル物理学賞をとった先生の本を手にとったり、予備校のテキストを読んだりしたときに物理の見え方が変わりました。物理学は法則から派生していて、色々なことを普遍的に見ていくような学問だと。それで物理の分野に行こうかなと思いました。

―大学や大学院では、どんなことをされていたのですか?

学部は早稲田大学の応用物理学科で、研究室は物理学なら何やってもいいところでした。私は宇宙、核融合、生物物理などの物理学のあらゆる分野をサーチして、自分がどんなことを計算できるかなと考えていました。そのとき、あまりにも分野が広くて4年の間は卒論のテーマを決めることにほとんどつぎ込んだ気がします。

その後、東大の大学院に移り、NMR(磁場を用いて物質の性質を調べる測定方法)の研究室に入りました。学部生の頃は研究する分野にこだわっていたのですが、何の分野が面白いのかを決めることは難しいということに気が付きました。だから、どんな技術、知識を吸収するかを重視する方向に変えたんですね。NMRというのはノーベル賞だと物理だけで3つ4つ、化学や医療も取っていて、奥が深くマスターするのはありだと思って選びました。
その研究室ではNMRの実験をして物質の性質を調べるということをしていました。いい経験にはなったのですが、NMRはある程度確立している技術なのでメソッド(研究の手法)にはオリジナリティがないわけです。
そのことに疑問を感じて、一つ一つ自分ができるメソッドを増やし、アイデアが出たときにそれらを組み合わせて研究できるんじゃないかと思い始めました。

「こういうことしたらこんな面白いことがあるんじゃないか」というところからスタートしたい。それが研究の存在意義というかオリジナリティになると思っています。 

電磁気学の授業とは


―また、先生が担当されている電磁気学応用とは、どんな授業ですか? 

電磁気学というのは物理の科目のひとつです。直に関わる産業も非常に広いので、工学系の学生さんには最低限知っておいてほしいという科目です。

―授業に関してこだわりはありますか?
  
電磁気学には各論や細かい現象がたくさんあるのですが、電磁気学という学問体系の全体像を把握してもらうようにしています。そして学生が専門に進んでいったときに、自分の専門分野に近い各論を自分で勉強できるようにする、ということを目指しています。

―そうなのですね!全体像を把握してもらうために工夫されていることはありますか?

電磁気学が分かりにくい理由の1つは、電磁気学は各論や現象が豊富にあるため、心の支えが何かわからなくなることだと思います。けれど、実は電磁気学はたった5つの式から成り立っていて、そこから派生しています。物理学の理論体系のなかで最も美しいといわれているんです。

伝統的な電磁気学の教え方というのは、各論から入って、最後にそれらは5つの基本法則で成り立っていると種明かしをするのです。しかし、私の授業では、一番基本となる法則(電磁気学という理論の枠組みの中では証明できないという前提)からスタートして、その派生で生まれる現象を説明するというスタイルで教えました。つまり、この授業では、土台を一番重視したので、困ったときに何を心の支えにするかというのを意識したつもりです。

(オンライン授業の様子)

―土台が大事なのですね!

教科書を見ても答えがない話を考えるときに基本的な土台がスタートラインとなります。特に、生体医用システム工学科は、医と工の連携をするなど、特殊な状況にあるため、そのような土台の方を優先しました。

―学生に授業を通して身につけてほしい力はありますか?

生体医用システム工学科には、物理からバイオや医療に近い科目もあり、異分野を融合しなくてはなりません。そのときに重要なのは、自分の知らない分野をある程度自分で勉強していく「自習する力」だと思います。そのため、授業では予習をすごく強調しながらやってきました。高校までは復習でいいけど、大学からは予習を優先してほしいということは学生にも伝えています。

高校生へのメッセージ


自分の可能性は無限にあると思って、何を一生懸命できるかを探していくと良いと思います。そのときに、インターネット上で何が面白いか選ぶことは、あんまりうまくいかないんじゃないかと思います。今流行っている技術は、場合によっては7、8割位まで研究されていて、自分がそれを5年10年かけてマスターした頃には、その技術に限界が見えているか、既に広まっていることが多いです。
そのときに、「自分が面白いことを作り出す」という考えもあると知って欲しいです。そのためには絶対これをやるとかでなくまずある程度興味があるところに入り、そこで少しずつ深く学んでみます。すると見える景色も変わるので、今まで興味なかったことが面白く見えたらそっちに行ったらいいと思います。そういう風に探していって、夢中になって、できれば自分で面白いと思うことをつくりだせるといいんじゃないかな。


文章:あお
インタビュー日時:2020年12月4日
インタビュアー:あだち
記事再編集日時:2023年7月6日

※授業の形式はインタビュー当時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。
※インタビューは感染症に配慮して行っております。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?