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研究の実用化を通じて、社会に希望を!

今回はグローバルイノベーション研究院の松村圭祐先生にインタビューしました。
先生の、「研究を通して社会を明るくしたい!」という思いが伝わってきました。

<プロフィール>
お名前:松村圭祐先生
所属:グローバルイノベーション研究院
所属学科:応用化学科(注1)
研究室:直井・岩間研究室

蓄電池と植物電池の開発


―松村先生は普段どのような研究をしているんですか?

 蓄電池、電池って言っても充電して使うようなバッテリーの研究をしています。
 
充電式のリチウムイオン電池、これがまずひとつのメインなんですけれども。
これを、ものすごく早く充電して、一気に吐き出せるようにすることを目指しています。従来の電池だと、電気抵抗とかがあるので難しいんです。そういう充電も放電も早く行えるデバイスをキャパシタって言います。
キャパシタを電池みたいに大きなエネルギーを貯められるものに改良することで、大きなエネルギーを短時間に取り出せる技術を開発しています。

「次世代キャパシタ研究センター」
松村先生の普段の研究場所

電池は基本的に電解液と正極と負極でできているんです。正負極の材料の原子結晶の並びがちょっと変わると、電子が100倍ぐらい速く動くこともあるんですよ。
僕の専門は化学なので、電極材料を新しく合成して、なんで速くなったのかを解明する研究をやっています。

他にも、微生物を使った発電っていうのを農学部と共同で研究しています。
植物電池とか微生物燃料電池って呼んでいるんですけど、土の中に住んでいる発電菌って言われるような発電能力を持った菌の電力を使ってLEDのイルミネーションライトを光らせたり、農業用のIoTセンサー(注2)を動かしたりしています。

研究で社会の変化を生み出したい


―松村先生は農工大のご出身ということで、研究者になろうと思ったきっかけはありましたか?
 
そうですね、僕も最初からずっと研究者になろうと考えていたわけではないんですね。なんなら学部で1回就職しようかと思っていたぐらいだったんです。
けれども、4年生のときに研究を1年間やって楽しかったっていうのがあって、修士(注3)には行こうって。

僕の指導をしてくれた岩間先生や直井先生(注4)は、僕の実験データを面白がって見てくれて。4年生の素人の自分だと、何が面白いかはわからないんですよ。
そのデータを見て、こうなったら良いなっていうのは何となくあるけど、その途中のデータをどう見て良いのかわからない。
面白いかもよって言われると、あれ、これ面白いんだ……、みたいな(笑)。
 
大学の先生にまでなっていくって考えたのには、もう一段階あって。
コロナになる前から、ベンチャー企業のインターンに参加していて、いろんな起業家に直に触れる機会がたくさんあったんです。そこですごく情熱的な、「本気で世界変えるぞ!」みたいなプレゼンをいっぱい聞いて、こんな世界があるんだってちょっと思ったんです。
 
ビジネスで社会を変えようっていうのはすごく魅力的だなと思った反面、やっぱり新しい技術を使って、新しい社会の変化を生み出したときのインパクトはすごく大きいなというふうに感じて。

それを経て、逆に1回全力で研究しようと思って、博士課程に進んだっていう感じですかね。

研究センターの中の様子
企業との共同研究も行われています

社会実装を意識して


―松村先生はクラフトビールの活動もやってらっしゃるんですよね。
 
そうですね。農工大クラフトビールプロジェクト(詳しくはこちら)っていうのを博士2年のときに立ち上げてからですね。
 
農工大の卓越大学院(詳しくはこちら)の授業の一環で、農工大の魅力を世に発信するようなオリジナルクラフトビールを作りたいって提案したんです。
農工大の魅力って、僕は農学部と工学部の2つがあることだと思っているんです。
農学で自然環境や食料生産、環境資源とかのいろいろな課題を抽出して、工学はその課題を新しい方法で解決する。まさにこれは今の世の中に必要な連携だと。そんな名前を冠してる農工大、素晴らしいじゃないかと。

そうして作ったビールを、大手のスーパーに営業しに行って、販売するところまで、全部やったプロジェクトです。

初代農工大クラフトビールの瓶
デザインは少しずつ変わっているそうです

これは、まさにすごくスモールスケールな研究の社会実装っていうのを意識してやっているところでして。
 
バッテリーとか、材料とか、基礎研究って実用化までにすごく時間がかかるんですよ
その代わり本当に世界を変えちゃうぐらいのインパクトはあるけど、研究の規模も影響も大きすぎてどんなふうに実用化されていくのか、もうちょっとよくわからないじゃないですか。
でも、クラフトビールなら1年間で研究成果をまとめて製品として販売できたので、すごく良いケーススタディになったと思っています。
 
―現在の研究でも研究の社会実装を意識されている部分はありますか?

そうですね、実際の商品化を目指すっていうところまで地続きにやっているのがうちの研究室の一つの特徴です。
今までのものが良くなるだけじゃなくて、新しいものができたら、どんなふうに社会で使えるんだろうって。
それを全部一緒にやってあげることで、基礎研究が何の役に立つのかを示すことがすごく重要というか。
新しいものの使い方、わからないんですよね(笑)。

まずは人に言ってみる


―学生時代にプロジェクトを立ち上げていて、先生はとても行動力にあふれていると思ったのですが、心がけていることはありますか?
 
思いついたら人に言うことですかね。
何かやりたいって思った時に、誰に相談するかが重要だと思うんです。友達よりちょっと上の人に相談して、その人は相談に乗ってくれなくても、実現できる人を紹介してもらえるかもしれない。
 
そのときに本当にやりたいって思っているかどうかはどちらでも良いと思います。覚悟を決めてからやらないといけないってなると、何もできないじゃないですか。
やめても良い、途中で逃げ出しても良い。覚悟を決めずにやるのが大事です(笑)。

積極的に行動するのって面倒くさいのも事実なんですけど、その面倒くさいよりも何かやってみたい
何か新しいことをやりたいなと思っている人がいっぱいいて、何か課題が見つかったときに動いちゃうような人が増え続けていくと、とってもポジティブな社会になる気がするんです。

(注1)松村先生が直接所属しているわけではありませんが、便宜的に研究室の直井先生・岩間先生の所属から所属学科とさせていただきました。
(注2)IoTとはInterner of Tingsの略称。物のインターネットとも。インターネットを通じてあらゆる物をつなげる技術や、それによって可能となるサービスなどのこと。IoTセンサーはインターネットに接続し、情報の収集・解析を行うセンサー。
(注3)大学を卒業後、大学院に進学して修士の学位を取るための過程。また、修士課程の先に博士課程がある。
(注4)2人とも農工大工学部の応用化学科の先生。研究分野には電子デバイスや、ナノ材料科学などがある。


文章:たいやき
インタビュー日時: 2023年 11月 24日

※インタビューは感染症に配慮して行っております。

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