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紙から考える物質循環

 今回は環境資源科学科の小瀬先生にインタビューしました!
先生が研究者を志すきっかけから現在の研究内容まで、とても興味深い内容になっています。ぜひご覧ください!

<プロフィール>
お名前:小瀬先生
所属学科:環境資源科学科
研究室:再生資源科学研究室
趣味:奥さんと高尾山に上ること

内発的な動機が人生の道標に


―先生が研究者になられた経緯についてお聞きしてもよろしいですか?

高校生の時は野球ばかりやっていて、視野を広げるために、大学は総合科学科(静岡大教育学部)というところを選んだんですけど、自分の内発的な動機は何だろう、自分はいったい何をやりたいんだろうという思いばかりで、研究者になるとかならないとか考えたこともなかったです笑

でも、大学生時代、他大の先生が非常勤で静大に来られて、超楽しそうに自分の研究を話していたんです。その時「これこそまさに、内発的な動機だ!」と思って、大学院ではその研究室に進みました。

「自分はいったい何をやりたいんだろう?」

―そうだったんですね。今の高校生も、何をやりたいか分からない方は多いと思います。ぜひ何かアドバイスを頂けないでしょうか。

大人になるにつれて、いろんな理由から自分がやりたいことの優先順位が下がっていっちゃう。こんなことやってて受験勉強しなくていいのかとかね笑

でも大学に入ってからの勉強で求められるのは、やっぱり内発的な動機なんですね。だから、その芽を潰さないようにしてほしいし、学生と関わるときはそこに気を付けていますね。

矛盾点から循環型社会を考える


―先生が講義をされている「資源リサイクル学」の内容について、詳しく教えていただいてもいいですか?

講義では、まず「健全な環境ってどんな環境だと思いますか?環境問題の解決は人間と生き物、どちらのためのものですか?」と聞くんです。やっぱりこの問いは、一つの答えが出ないんですね。この導入で、環境問題を解決するための循環型社会の形成にかかわる問題の性質自体が、いろんな答えのあるものなんだと理解してもらうんです。中心的な問い(人と自然が共生するとはどのような形か)は変わらないけど、それを問い続ける中で様々な矛盾点が存在しています。

例えば、アメリカで消費されているエネルギーをすべて太陽光発電で賄おうとすると、そのための太陽光パネルはスペイン一国分の面積になってしまうという話があります。
そしたら、スペイン一国分の敷地には植物が生えませんよね。だから、化石資源を使うってことは、地球表面上の生き物たちを生かしてるっていうようにも見える。
こうやって考えてもらうきっかけを授業に組み入れていくようにしています。

「環境問題の本質ってなんだろう?」

講義をリアリティと結び付ける


―授業後半では、実際にリサイクル物質を一つずつ取り上げているとのことでしたが、具体的にはどのようなことなのでしょうか?

例えば、授業では実際に紙をその場で破いてもらうんですけど…
(紙を破く)
この先端をよーく見ると、ちっちゃい繊維がいっぱいありますよね?この繊維がバラバラになりやすいほど紙はリサイクルされやすいんです。なので、紙が水に弱いということは、使う上ではデメリットだけれども、リサイクルをする上ではメリットになるんです。

そうすると、人間が使うときのメリットだけではなくて、それを廃棄したり、リサイクルしたりするときのメリットまで考慮して、物質循環が見えてくるんです。

「紙が水に弱いのはメリットでもあるんです。」

こうして、机上で学んでいることとリアリティを出来るだけ結び付けて、学んでいることが実際の自然の中のものだというリアリティを持ってもらう。そのリアリティが強ければ強いほど、学ぶことに対する好奇心が強くなるはずなので。

多面的機能を持つ紙資源の生成


―話は変わりますが、先生は現在どんな研究をなされているのでしょうか?

僕の研究の対象は、プラスチックの代替としての紙の利用ということです。しかも環境的な側面だけではなくて、これからの情報化社会と環境調和型社会という時代にも必要とされる形で紙を使ってほしいんです。例えば、紙のロボットとかね。

―え?紙のロボットってどういうことですか?

例えばこれ触ってみて?紙を厚くするとこれくらいの強度は普通に出るわけ。

―おぉー!

「紙を厚くするとこれくらいの強度は出るんです。」

これはただ植物の繊維を集めただけ。これがロボットとかでいうボディとかになるんです。
だけど、それをするために普通は型を作らないといけない。これが一番コストを必要とするんです。そして、この型を作ると、この型の紙しかできない。

そこで僕の研究では、そこに科学技術を使って、すいた時は平らなんだけど、乾燥していくと自然と形になるような紙製材料を作っているんです。

例えば、ティッシュを間違って洗濯するとカチカチになることがあるけど、あれは繊維が乾燥の過程で強く凝集するから起こるんだよね。それで、繊維の大きさが違うと凝集する力も違う。

そこで、この平面の中で違う大きさの繊維を配置して、凝集力の違いを利用すれば、すいた時は平面だけど、乾燥中に目的の形ができるようにならないか研究しています。

―ありがとうございます。最後に高校生の皆さんへメッセージをお願いします!

高校の勉強で自分がやりたいことと違うことをやっているような気がしている方がいれば、その気持ち、そのちっちゃな興味を否定せずに温めてほしいと思います。きっと、その興味は大学ではとても大事な資質になります。

―ありがとうございました!

文章:こぶじめ
インタビュー日時:2020年11月12日(木)
記事再編集:たに
記事再編集日時:2023年7月1日

※授業の形式はインタビュー当時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。
※インタビューは感染症に配慮して行っております。


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