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低炭素社会の実現を目指して、バイオマスをどのように利用する?

今回は化学物理工学科の伏見先生にインタビューしました。
ぜひご覧ください!

<プロフィール>
お名前:伏見千尋先生
所属学科:化学物理工学科
好きな本:D・カーネギー著「人を動かす」、「道は開ける」、
トーマス・ヘイガー著「大気を変える錬金術」、
ウルリケ・ヘルマン著「資本の世界史」などなど!

低炭素社会実現を目指して、バイオマスをどのように利用する?


―先生はどんな研究をされていますか?

炭素系の資源を熱化学的に変換して化学品、燃料や発電として有効利用できないか、という研究をしています。炭素系資源には、石炭やバイオマス(木材など生物由来の資源)、廃棄物がありますが、今はバイオマスに関するプロセス開発と実験を行っています。 

バイオマスを使って発電や燃料、化学品などを作るときに、元のバイオマスから物理的・化学的に変換して、最後に製品ができるところまでの一連のシステムがあります。その一連のシステムの経済性や環境性、エネルギー投入、CO2排出量を評価するのがプロセス開発です。

例えば、発電するときと燃料を作るときは、エネルギーの生産性が求められます。だからバイオマスから得られるエネルギーがプロセスに投入するエネルギーよりも多くないと意味がありません。また、お金がかかりすぎても成り立ちません。

そのような制約がかなりきついんだけども、それらを成り立たせるにはどうしたらよいか、ということを研究しています。当研究室ではそのような技術やプロセスを社会で取り入れて役立てること(社会実装)を強く意識して、可能な限り温和な条件で、環境負荷の小さい薬品を用いて、廃棄物が少なくなるような実験条件やプロセスの検討を行っています。 

C. Fushimi, Energy & Fuels 35, 3715-3730, 2021より (図を著者が和訳)

実験では、様々な条件下におけるバイオマスの反応性を見る実験や装置を作る研究などを行っています。
これらバイオマスの熱化学変換反応器の一つとして、流動層というものを結構使っています。
 
―流動層、ですか…?

左 流動化前の粒子の様子(固定層)
右 流動化後の粒子の様子(流動層)

流動層とは、粒子を詰めた層に下から流体(気体と液体のこと)を吹き込んで、粒子を液体のように流動化させる技術です。
層内が均一に近くなり、伝熱速度が比較的大きくなるため工業的にも使われることが多い技術です。2年前からこの流動層などを用いて、火力発電、バイオマス発電などの価値を高める研究も始めました。
 
 
―どのようなことを目指していますか。
 
今までなかったものを創り出したいということと、低炭素社会、できれば化石燃料の使用を10分の1くらいまで抑えることを狙っていきたいと思うので、そういうことに研究で貢献したいです。
 
また、それに貢献できる人材を育てたいということは常々思っています。そういう人たちに活躍してもらうことや、学生が日々の活動で楽しみや充実感を得るようなことが大切じゃないかなというふうに思いますね。

研究者として大切にしていることは、継続性とプロ意識をもつこと


―研究者として大切にされていることはありますか?
 
膨大な量の勉強とか実験、計算をやり切ることです。学生にも言っているんだけど、マラソン的に研究ができることです。
継続性が非常に重要なので、調子悪い日は休んで構わないのだけど、投げ出さずに、ずっとやることを大事にしています。
100m10秒で走る必要は全くなくて、ただマラソンのように歩いてもいいからリタイヤせずに前に進み続けることが必要だと思いますね。
 
あとは、いい意味でプロ意識を持つことですね。学生にも、やっぱり「社会人=プロ」であって、研究室はそのための準備期間だ、という意識は常にもっているように、とは言いますね。
お金をもらうことはプロフェッショナルだから、何かのプロでないといけません。要するに、プロは素人ができない何かがないといけません。あくまで俺はプロであり、何ができるプロなのか、というところは考えていますね。
時間の都合で、教えることだけ、研究だけに100%の労力は割けないんだけど、研究にしても自分の分野のプロじゃないといけなくて、プロの世界である程度負けないレベルまで持っていかないといけないし、教えるのもプロである必要があると考えています。

進路に悩める高校生へ


―最後に、高校生に向けてメッセージをお願いします!
 
自分でしなければいけない課題とかがあると思うので、それをその都度、着実にこなして、身に付けることが重要だと思います。
また、高校生だとどのような大学でどういう分野を選ぶかと言う話が出てくると思いますが、周りの人と相談しながら自分で決断することが大事だと思います。あの人がこう言っていたから私はこうしました、というのは人生の選択としてあまり良くないかもしれません。なんだかんだ言っても自分の人生なんだから、「自分で決めました」というところがあると良いのかなと思いますね。
 
―伏見先生、ありがとうございました!



文章:だっち
インタビュー日時:2020年10月30日
インタビュアー:だっち
記事再編集日時:2023年7月11日

※インタビューは感染症に配慮して行っております。


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