見出し画像

捨てられる遺骨をアートに変える

──「白の橋」プロジェクトとは。

愛護センターで生を終えた動物たちの遺骨は、どうなるか知っているだろうか。愛護センターで殺処分または施設内死亡となってしまった犬や猫の遺骨は、一般廃棄物つまり”ゴミ”として処分されてしまう。そんな中、「人間と共生してきた犬猫をゴミにしたくない」という思いから、東北芸術工科大学 美術科 日本画コースと有志の学生が集い、動物の遺骨を「骨絵の具」として利用し、絵画作品の展示と販売を行う「白の橋」プロジェクトを立ち上げた。

── 樋渡さんの作品「荒崎」

今回、「白の橋」プロジェクトに参加した総合美術コース3年生の樋渡響輝さんを取材した。

日本画コースの知り合いに誘われ、「骨絵の具」に興味を持ってプロジェクトへの参加を決めた樋渡さん。これまでアクリル絵の具を使った風景画を得意として、たくさんの作品を生み出してきた。このプロジェクトでも「荒崎」というタイトルで風景画を描いた。この作品を描いたきっかけは、鶴岡に観光に行った際に海を見て、海の広さ、岩の荒々しさ、海面のテカテカした黒さが印象的だったことがきっかけだったと語る。骨の白い粉を活かしたいと考え、波しぶきを遺骨の白さを活かしたのでそこを見て欲しいと語った。この作品は絵の具を薄く塗り乾かしを繰り返し制作に1週間かけたそうだ。

── 「骨絵の具」の”おもさ”

樋渡さんに「骨絵の具」を使った感想を伺った。「骨絵の具」を扱った際に、色を重ねて扱えることがアクリル絵の具と似ていてとても扱いやすかったと。その反面で、「骨絵の具」はもともと生きていた動物の骨で作ったものだから、いろんな人の目に見えない物が詰まっていて”おもさ”を感じ、それに触れることに緊張し姿勢が正されたという。

── 樋渡さんの「白の橋」への思い

プロジェクトに参加して樋渡さんは何を感じたのだろう。

樋渡さんは、企画を立てた日本画コースの代表の学生を見て、外部・参加者の考えが交錯し批判もありそうな企画の中、自分のやりたいことを明確に行動に移しているところがすごいと評価し、見習い自分の個展を開く際の参考にしたいと語った。

また、このプロジェクトで日本の法律について勉強になったとともに、自分の気持ちを深く考えたきっかけになったと樋渡さんは話した。プロジェクトに参加した際に知った、愛護センターで亡くなった犬猫の遺骨が一般廃棄物として処分されてしまうことと、同じプロジェクト参加者の体験談で、迷子になったペットの小動物は警察に届けられると「落し物」扱いになり、飼い主が見つからない場合他の人の「物」になってしまう。という話を聞いて法律について学んだきっかけだったと話した。このことを知った樋渡さんは、人間が作った、動物に対する法律がよくない物なのではないかと複雑な気持ちになったと語った。

「白の橋」プロジェクトについて樋渡さんにインタビューしたきっかけは、プロジェクトの紹介文を拝見して亡くなってしまった命が多くの人に届くと良いという考えに共感したからだった。しかし、樋渡さんにインタビューをし,生き物の法律について話す中、人間の作った法律は動物たちにとってよくないものもあるのではないかと考えさせられた。このプロジェクトが少しでも法律を見直すきっかけになれることを願う。

─────────────────────────────────

内海 茉優
東北芸術工科大学 総合美術コース


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?