見出し画像

子育てしやすい国で子供は産まれているのか? 出生率を調査してみた

ハンガリーに兵庫県明石市と子育て支援に力を入れる国や自治体が近頃相次いで絶賛されている。少子化が進む現状において、「子育て支援を充実させて安心して子育てできるようにすること」が解決につながるというのが根強い支持を集めているからであろう。

では、実際に子育て支援に力を入れる国で子供は産まれているのだろうか?きちんとデータを比較して確かめてみよう。


https://ampmedia.jp/2020/09/03/parenting/

旅行・家族ジャーナリズムを専門とするアメリカの企業Asher & Lyricはこのほど、OECD35カ国を対象にした「子育てしやすい国ランキング2020 (The Best Countries For Raising A Family In 2020) 」を発表した。

全世界対象ではないが、おおむね確度の高い指標としてこちらの調査結果を参考にしていきたい。当調査における子育てしやすい国ランキングは以下の通りだ。

ランキングは30種の国際データをもとに、安全性、幸福度、コスト、健康、教育、子どもと過ごす時間の6つのカテゴリー(詳細は後述)により、OECD加盟国35カ国の子育て環境を評価し、合計ポイントにより総合ランキングを出している。

1. アイスランド
2. ノルウェー
3. スウェーデン
4. フィンランド
5. ルクセンブルク
6. デンマーク
7. ドイツ
8. オーストリア
9. ベルギー
10. チェコ

11. オランダ
12. ポルトガル
13. フランス
14. オーストラリア
15. スロベニア
16. アイルランド
17. スペイン
18. ニュージーランド
19. カナダ
20. ポーランド

21. ハンガリー
22. スイス
23. イギリス
24. イタリア
25. 日本
26. イスラエル
27. スロバキア共和国
28. 韓国
29. ギリシャ
30. ルーマニア

31. ブルガリア
32. トルコ
33. チリ
34. アメリカ
35. メキシコ

やはりというべきか、北欧が上位を占めている。教育や福祉への投資、人権意識の高さなどが要因であると上記記事では紹介されている。


・子育てしやすい国の現実


ではそれを踏まえて、近年の世界各国の出生率を見てみよう。
太字で示した国が人口置換率である出生率2.1以上の国だ。

(カッコつき以外は2021年の出生率)

1. アイスランド → 1.82
2. ノルウェー → 1.56
3. スウェーデン → 1.67
4. フィンランド → 1.46
5. ルクセンブルク → 1.4(2020年)
6. デンマーク → 1.72
7. ドイツ → 1.57
8. オーストリア → 1.47
9. ベルギー → 1.6
10. チェコ → 1.67(2020年)

11. オランダ → 1.62
12. ポルトガル → 1.34
13. フランス → 1.83
14. オーストラリア → 1.64
15. スロベニア → 1.63
16. アイルランド → 1.72
17. スペイン → 1.2
18. ニュージーランド → 1.62
19. カナダ → 1.64
20. ポーランド → 1.45

21. ハンガリー → 1.59
22. スイス → 1.51
23. イギリス → 1.59
24. イタリア → 1.25
25. 日本 → 1.3
26. イスラエル → 2.99
27. スロバキア共和国 → 1.62
28. 韓国 → 0.81
29. ギリシャ → 1.42
30. ルーマニア → 1.67

31. ブルガリア → 1.58
32. トルコ → 2.0(2020年)
33. チリ → 1.22
34. アメリカ → 1.66
35. メキシコ → 2.1(2020年)



見ての通り、子育て支援が充実している国のいずれもが人口置換率には遠く及ばない出生率しか出していない。国によっては日本と同じかそれ以下の出生率となっている。

そして、人口置換率をクリアしているイスラエルとメキシコは日本よりも子育てに関する支援は少ない。特にメキシコは最下位であるにもかかわらず人口置換率をクリアしている。

このデータだけを見ても、子育て支援の充実は少子化対策として有効、というのが嘘だと分かる。


子育て支援が充実している国はいずれも人権先進国であるが、人権が重視される国では個人の権利も当然重視される。故に結婚以外の生き方が尊重されるし、子供の安全や幸せに対する要求も高まって子育てのハードルは高まる。また、男女平等も重要視されるので、女性の上昇婚志向も相まって結婚対象とみなされる男性は減る。

どれだけ子育て支援を充実させても同時に人権も高まるのであれば、少子化対策として大した効果は得られない。


ちなみに昨年の出生率トップ10か国は以下の通り。

1.ニジェール → 6.8
2.ソマリア → 6.0
3.コンゴ共和国 → 5.8
4.マリ → 5.8
5.チャド → 5.6
6.アンゴラ → 5.4
7.ブルンジ → 5.3
8.ナイジェリア → 5.3
9.ガンビア → 5.2
10.ブルキナファソ → 5.1

全てアフリカの国である。子供が産まれる環境は、支援によって成り立つわけではないというのが良く分かる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?