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『サイバーパンク・ブーム』の前触れ? ~第33回ファンタジア大賞を追う

つい先日、『サイバーパンク・ブーム』が来る事を語ったのだが、第33回ファンタジア大賞受賞作から「ファンタジー×サイバーパンク」をテーマとした作品が大賞を取ったことに私自身少し驚いてしまった。

さて、今回は受賞作をまだ読めないまでもあらすじ、選考評から今後来るであろう、『サイバーパンク・ブーム』と絡めて見ていきたいと思う。

■大賞『剣と魔王のサイバーパンク』

富士見書房ファンタジア大賞WEBサイト 第33回ファンタジア大賞
受賞作発表!!

第33回ファンタジア大賞、1,056本の中から見事に大賞となったのが、『剣と魔王のサイバーパンク』である。タイトルはド直球だ。

公募作品の場合、長文タイトルでの説明よりもテーマが分かるタイトルが有利なのか、ここ数回の受賞作タイトルを確認しても傾向的に見て取れる。長文タイトルにしても、なろう系らしいモノとはやはり違う。

少し逸れたが、この作品のあらすじからサイバーパンク感を読み取っていこう。

「ファンタジー×サイバーパンク」とはいっても、あらすじだけでは異世界転生系にある転生後の未来は衰退して、相対的に主人公がチートとなる展開とは逆で、ファンタジーからサイバーパンクと進化した世界での前世代の魔王が文字通り時代遅れとなった中で復活して、どう立ち回ると言った感じだ。
若干、あらすじだけだと『ジャヒー様はくじけない!』に近いモノを感じてしまうが。

ただ、「ファンタジー×サイバーパンク」というと昨今のライトノベルでは珍しいが、海外のTRPGでは「シャドウラン」という作品がある。
近年でもTRPG以外にもFPS、CRPGとテレビゲーム化されている。日本ではあまり知られたタイトルではなく、CRPGである『Shadowrun Returns』は日本語版は出てない。ただ、有志による日本語パッチは出ている。そのため、一定の層に知られた作品である。

ただ、「シャドウラン」はハードな「ファンタジー×サイバーパンク」である。こういったハードさを求めている人にはこの「剣と魔王のサイバーパンク」は物足りない感じではないかと思う。当然、あらすじだけでの判断だが。

しかし、今までが異世界が流行りきった中では、入門的なサイバーパンクはかえって斬新で入りやすさがあると思う。大賞になる作品だけに実力もさることながら、恐らく、そこが売りになったのではないだろうか。

実際、選考評でもこのように語っている。

● ファンタジア文庫編集長
(中略)「SF=読む人を選ぶ」という先入観を打ち破る間口の広い作品で、新時代へと突入するファンタジア文庫を代表するにふさわしい《大賞》作品となりました。

ラノベの多様性を広げるにも、この「ファンタジー×サイバーパンク」は求めていたことが感じ取れる。

■本当に来るのか『サイバーパンク・ブーム』?

ブームが来る詳細に関しては以前でも語っていることなので割愛するが、このタイミングで私はラノベ作品からサイバーパンクは出てくることは無いと思っていた。
それは受賞コメントや選考評でもあるように主流ジャンルではないからだ。

ただでさえ、昔のラノベなら数巻で様子見るところから、今は1巻だけで判断される。売れないジャンルで商品展開することはリスキーである。

それは公募作であっても、私は同じと考えていた。そもそも、マイナーなサイバーパンクを書けるのは、よほどの変わりモノだ。だが、そんな変わりモノの実力者がまだ世に出ず、眠っていたのだ。

恐らく、『剣と魔王のサイバーパンク』が本として出てくる頃には、『サイバーパンク 2077』、「アナログハック・オープンリソース小説コンテスト」、そして、『三体』といったモノの人気も相まって後押しする感じになると思う。

これらに押されて『剣と魔王のサイバーパンク』がヒットすれば、ラノベ業界にも『サイバーパンク・ブーム』が起こるのは間違いない。

前回では『サイバーパンク 2077』等のゲームから『サイバーパンク・ブーム』が起こり、ブーム一色となった頃にラノベ業界にも広がると思っていた。

むしろ、日本の『サイバーパンク・ブーム』はこの『剣と魔王のサイバーパンク』が牽引することになるかも知れない。

■『このライトノベルがすごい!2021』でも注視せよ、『スパイ教室』

私自身、読んではいないのだが注目している作品が『スパイ教室』である。
よく宣伝から、このタイトルを見かけるからだ。多分、『このライトノベルがすごい!2021』でもいい線にくると睨んでいる。

この作品、ご存じの方もいるように第32回ファンタジア大賞の大賞作である。それもあって押しが強い。人気声優によるボイスドラマやコミカライズと展開がされている。

つまり、同じ大賞作である『剣と魔王のサイバーパンク』も同様なプッシュがあれば、日本での『サイバーパンク・ブーム』の牽引もかなり濃厚ではないだろうか。

■銀賞も気になる『母親がエロラノベ大賞受賞して人生詰んだ』

ちょっと、タイトルに圧倒的に引きつかれる銀賞の『母親がエロラノベ大賞受賞して人生詰んだ』。まあ、タイトル時点でもお察しだが、あらすじでも『エロマンガ先生』を彷彿とさせる内容ではある。

また、入選での『デスゲ脳なヒロインにラブコメは無理ゲーですか?』。こちらも同様な感じではある。

ただ、どちらも変わり種ラブコメながら、昨今のラノベ、ラブコメ人気の需要を感じ取れる作品だと思った。

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