見出し画像

海外勢VTuberのゲーム配信懇願は日本とは意味が違う

VTuberの発言がゲーム関連を専門とするネットニュースで扱っていた。

さて、この「『ペルソナ3』を配信させてほしい」の本質は幾つかの要素が重なり合っている。だから、単純な問題ではない。
それもあって、VTuberの発言ながらゲーム関連のネットニュースでも取り扱っている。

当然、後日談を含めた点もVTuber関連を扱うサイトでも取り上げている。それ以外であっても、まとめサイト等でもこの話題を扱っている。

今回は、なぜゲーム関連のネットニュースがこの件を取り扱ったのかという軸を主に語っていきたい。

■ペルソナシリーズとゲーム配信について

そもそも、VTuber森美声(もり かりおぺ)が「『ペルソナ3』を配信させてほしい」という嘆願に対して、何が大きな話題性となったのか?

先にも語った通り、複数の要素が合わさって大きな意味を持ってしまったからだ。これら、一つ一つの要素だけならさほど大きく取り上げられことはなかっただろう。だから、まずはそれを整理したい。

一つ目は、近年のペルソナシリーズはゲーム配信に対して規制がかかっている点。
次に森美声はホロライブENに所属しているVTuber、英語圏で活躍している点である。
他にも細かい点はあるにせよ、この二つだけでもゲーム関連のネットニュースが取り扱うには意味があった。

まず、ペルソナシリーズはアトラスより発売されているゲームタイトルである。元は『女神転生』シリーズの派生した作品であるが、3以降では単体作品でもメディアミックスが強くなっている。

そして、『ペルソナ4』では事件を推理することに物語の軸が置かれているため、発売段階からネタバレに対しての発言は禁止事項とされていた。
発売から時間が経って、アニメ化などで多くの人がその結末を知っているであろう今でも、緩和こそされてはいるが大きくは撤回していない。
そして、今年はSteam版が発売されたことで、その声明が英語でも合わせて改めて出されている。

そして、シリーズとしての次回作の『ペルソナ5』ではゲーム配信の禁止こそされていないが、ネタバレとなる配信禁止区間が設けられている。

この事から「『ペルソナ3』を配信させてほしい」と無理に嘆願しなくとも本来は、ネタバレに配慮できていればゲーム配信は問題ないとするのが、アトラス側が発信している情報でも確認できる。

ただ、このネタバレ禁止が拡大解釈的にゲーム配信も禁止と捉えられている点もあるのだろう。

実際、『ペルソナ5』単体で国内向けではオープニング以外のすべての映像の配信等が禁止されていおり、その方針は変わっていない。
しかし、この措置は海外では強く反発され、緩和に次ぐ緩和がされている。

ただ、追加要素が加わった『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』では配信禁止区間が伸びて、ほぼエンディング直前までは可能となっている。
当然、『ペルソナ5』から追加となる部分は配信禁止ではあるが。

恐らく、森美声は『ペルソナ5』の措置と『ペルソナ3』ではこういったガイドラインが明示されていないから混合して、禁止されていると思っている節があったのかもしれない。

そして、次に森美声は英語圏で活躍している点が出てくる。
先に述べた通り、『ペルソナ5』は海外ではゲーム配信の緩和を強く求め、それが達成された経緯がある。

その結果として再度、彼女の配信によって緩和を求める声を誘発させたのである。実際、同様な不満は彼女だけでは無かったからこそ、彼女以外の人間を巻き込んで大きな流れとなった。

だからこそ、ゲーム関連のネットニュースが取り扱った。ゲーム配信文化としての側面で。

■別に禁止はされていない、ゲーム配信

ただ、メーカーから出された情報を見て分かる通り、ペルソナシリーズはあくまでネタバレに配慮して欲しいだけで、ゲーム配信等ではガイドラインも提示されており、配信禁止区間はあれど禁止自体されていない。

それにこの騒動の少し前には、カバーはセガのタイトルを実況できるよう包括的使用許諾契約を締結している。

ペルソナシリーズを販売しているアトラスは紆余曲折あったにせよ、今は株式会社セガの100%子会社である。正確なところは分からないが、この包括的使用許諾契約にアトラスの作品も含まれている可能性は高い。
例えダメだとしても、ファンに対してゲーム配信緩和を嘆願する以前に、事務所に確認すれば正式な答えが出る話であった。

この騒動をVTuber側で見ていくと、この点に行き着く。
過去からの無許諾によるゲーム配信問題の流れだ。現在であっても、メーカーごとに包括的使用許諾契約を結んでいても、過去の一件やなど解消されているわけではない。

そもそも、嘆願配信自体、今は非公開になっている。非公開である以上、確認は取りづらいが、BGM無断使用していたのではないかという声もある。BGM無断使用が確かであれば、如何に正当性をもった発言であっても無意味となってしまう。
これでは毎度おなじみな、お粗末なホロライブ対応と言わざる負えない。

ただ、この側面はゲーム関連のネットニュースが専門とする部分でもない為か、ここまで語られていることは無かったのだが。

■インターネット時代の『ダブル』

このVTuber森美声の配信に関しては、ゲーム配信界隈に置いて一石を投じた意味は大きいと思う。ただし、多くのチャンネル登録者数を持ち、ホロライブENに所属する総合的な組織力を背景にした発言としては、コンプライアンスなどを含めて褒められたモノでは無い。

そして、森美声がある種、ファンを焚きつけ、配信後の非公開にしたことなども見れば、やや行き過ぎている感が強い。
いくら正当な意見であっても、半ばクレームに近い問い合わせが殺到して、メーカーはいささか困っていた様子である。

この事がメーカーにとっては、ある種の不信感を生んだのであれば、今後行き過ぎな行動に対しては、強固な対応を取ることもおかしくはないだろう。
つまり、森美声の嘆願は逆効果であった面もある。

再度言うのだが、セガと包括的使用許諾契約を締結した中では、ファンへの配信ではなく会社を通せば確認できた話である。

ただ、この点は擁護ではないが、日本と海外という伝達経路の齟齬などから、この包括的使用許諾契約を知らなかった可能性も見る事ができる。
それ以外でも日本と海外という伝達経路の齟齬は考えられる要素である。

それもあって、真にこの配信の件で注目しなくてはいけないのは、日本の企業に所属する海外勢VTuberが日本のメーカーに対して発信した点である。

このホロライブENは英語圏のシェア、日本発のイラストと運営であることから、双方の文化、特性を持って生まれたVTuberといえる。それは今風にいえば、両方の血を持つ『ダブル』といえる。
この問題もその双方の文化が持つことでの弊害となっている気がする。当然、英語圏での強みとなる部分でもある。

日本のVTuberが同様な発言をしていたら、コンプライアンスを知らないのかと大炎上しただろう。しかし、海外ではゲーム配信文化の違いから、否定的に捉えていても、この声も幾らか緩和されていた印象もある。
現に森美声はその後、この件には触れていないモノの何事も無く活動を続けている。
また、英語である以上日本から見れば、この追いにくい部分もある。そして、現状では森美声にしろアトラスにしろ大きな反応はない。

ただ恐らく、カバーにしろホロライブにしろ、この件は重く受け取っているはすだ。

何しろ、ゲームに詳しい人間から見れば、この件は特別ゲーム配信の禁止されてないタイトルに、ファンを暴走させるほどに嘆願するのは異質でしかないからだ。それもVTuberとは少し縁の遠いゲーム関連のネットニュースが、ゲームの話題として大々的に取り扱っている。

しかし、これは海外であり、日本の企業に所属するVTuberから話題になったのは良くも悪くモノ話でもある。その点をどう見るかは難しい話である。

読んで頂き、もし気に入って、サポートを頂ければ大変励みになります。 サポートして頂けると、晩ご飯に一品増えます。そして、私の血と肉となって記事に反映される。結果、新たなサポートを得る。そんな還元を目指しております。